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三十四話

 子供達は蒼白な顔で私を見た。

 アレスがどうにか口を開いて言葉を搾り出す。 


 「……そんな酷い死に方をしたのか?」

 「そうだよ。私は一緒に隠れてようって言ったんだよ。でも、アルスは出て行った。あいつが一番勇者に近い存在だったからね。自分の死体を見つけるまで魔族は去らないだろうって言ってたよ。そして戦って死んだ。私が外へ出てアルスを見つけた時は無残な姿だったよ」


 アリスが顔を手で覆って泣いている。酷すぎると言いながら。


 「別に酷くなんかないよ。相容れない者同士の戦いなんて、そういうもんだよ。やらなきゃ自分達が殲滅されてしまうんだからね。神と魔、光と闇、そんなもんでしょ。でもねぇ、私はもう、それに付き合うのも疲れたんだよ。神の手駒でいるのもウンザリだね」


 だから、勇者の証明なんてもんに頼らずに、魔物を滅ぼしてやるよ。

 徹底的にね。

 私は剣を魔族へ向けた。

 

 「アレス、アリス、父さんの最後を知っても、それでもまだ勇者の証が出るまで待つとか悠長な事を言うのかい? 目の前に仇がいても戦わないのか? エドリアル大陸では父さんのような哀れな最後を迎えた人が今も大勢いるだろうにね」


 私は魔族へ向かって歩を進める。


 「父親だと? 貴様達は勇者の血族の生き残りか!?」


 口が滑った。つーか耳聡いよ、このトカゲ魔族。なんて言って誤魔化そう。


 「そうだっ! 貴様が殺したアルスの息子だ! 母さん、俺も証はどうでも良くなった。一緒に戦う」


 あ、こら認めるんじゃない!


 「私もやるよ、お母さん!」


 ようやく自ら戦う気になったね。

 私の計算通りだよ!

 じゃあこのトカゲ魔族を倒そうか。

 口封じの為と正義の為に。


 「面白い! 勇者の生き残りを再び殺せる機会が来ようとはな!」


 魔族は声にならない声をあげた、ように見えた。

 

 「母さん、このクソッタレのトカゲ野郎ってば、仲間を呼んだんじゃないの?」

 「下品な事を言うんじゃないのよ。父さんは言葉使いには厳しかったんだからね」

 「え~、今それを言うかなぁ」

 

 アリスが不満そうな顔をしているけど、とりあえず放置。

 やがて周囲から、異形の存在が群れを成してやってくる。

 勇者の血を受け継ぐ者を倒す。

 それを最優先してる為か、王都の住人には目もくれない。

 数は、およそ50くらいかな?

 これだけの魔物が王都に潜伏してたとはね。

 もし、敵が王都に攻めて来た時に、こいつらが内側から暴れたら大変だったよね。

 うん、口が滑ったんじゃなくて、計算してたんだよ。 


 「我らも戦いますぞ!」


 ランスローやガレスを始めとする大会参加者、私の弟子達も参戦も表明した。

 客席にいた腕に覚えのある者達も剣を抜いて私達の元へ集結している。

 その代表格のアーサーは王様を後方に下がらせて、その前に立った。

 

 「ここにいる魔族と戦う参加者達、ちょっと聞いて」


 全員が私に注目する。

 トカゲ野郎は仲間が来るまでは手出しをする気はないらしい。


 「このまま魔族と戦うのも大変だろうから、気休めかもしんないけど良い事を教えてあげる。あんた達は戦う時に闘気を発してるけど、それを体内に循環させてみなさい。身体の能力が上がるからね」

 

 それこそが、私が元の世界で勇者として活躍できた理由なんだ。

 こっちの世界に来て女の子の体になってから、上手くできなくて修行すんのが大変だったけどね。


 「そんな便利な技があるなら、もっと早く教えてくれたら良かったものを……」


 ガレスが恨み言を言う。そうは言うけどさ、この技は誰でも修練すれば身につくんだよ。

 悪い奴が覚えちゃったら大変だもの。

 ここにいる連中は私も認める達人だから、口伝すればすぐマスターすんでしょ。


 「これはね、完全にマスターすると防御力は上がるし、治癒能力は上がるし、解毒能力も上がるし、体内を循環させて増幅した気を攻撃に転用すればベラボーな破壊力を生むからね」

 

 大会上位に入りそうな連中は、もう理解したみたいだね。

 苦戦してる連中もいるっぽいけどさ。


 「全身にあるツボに気を通すんだよ。そうするとツボとツボの間に経脈って言う気の流れる道が出来るんだよ。普通の人も道はあるんだけど、例えると獣道みたいなもんで、意識して通すと街道のような道ができるってワケ。そうすんと発揮できる力が段違いになるんだよ」


 こんな説明してたら魔族も揃ったみたいだね。

 

 「経脈を通して内力……気を循環させて、増幅させたら、それを外へ出すんだよ。私の場合はこんな風に使うんだ」


 気を増幅して体内に充填させる。すると溢れた気が黄金のオーラとなって体から放出され始める。


 「こうなるとね、能力が上がるってワケ。そんじゃ、お先に戦ってるね!」


 背後で、もっと早く教えてくれりゃあいいのに、もう! なんて愚痴が、また聞こえてくる。

 しょーがないじゃんか。悪用されたら大変なんだからさ。

 私は目の前のトカゲ魔族に斬りかかる。

 この世界の勇者の理に従うつもりだったから、元の世界の勇者の技は、あんまり使わないようにしてきたけど解禁ね。もう遠慮なくビシバシ使うんだ。

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