三十三話
シーラとニコが私と共にクロヴィア王国へ行く事になった。個人の力なんて知れたもんだけど、やってやるんだ。
ランスロー、ガレス、シーザーは、騎士なので、騎士団の命令に従うんだってさ。
騎士達も民衆も勇者さえ現れたら、反撃開始だと鼻息が荒い。勇者の村が滅亡したのを知らないってのは幸せだよね。
その時、2回戦を勝ち抜いた騎士の一人が、その姿を変え始めた。見ている間に人とは思えない程に巨大になった。
肌の色も青く、それは、極めて冷たい氷を感じさせた。
変異を終えた姿は、まさしく異形と呼ぶに相応しい爬虫類のような外見の魔族だった。
民衆は王都にいるはずのない、その存在を目の当たりにしてパニックを起こして逃げ始める。
私達の半分は王を護り、もう半分は剣を抜いて魔族へと向ける。
「貴様は、いつエクターと入れ替わったのだ!!」
ガレスの怒号が響き渡る。
普段は口うるさいオッサンだけど、こういう時は頼もしいなぁ。なんてゆーか安心感があるよね。
逃げ惑っていた観客達も落ち着いてきたよ。
「素直に教えると思うのか?」
魔族はガレスを相手にしない。まぁ内部事情をペラペラと喋る奴なんかいないよね。
でもさ、こいつらバカっぽいし、何か工夫すりゃ喋るかも?
「どうせ、魔王に命令されたんでしょう? この王国を護る騎士から魔族に変異する奴が多勢でたら面白い、なんて理由でさ」
「貴様は何故、魔王様のお心が分かったのだ? 貴様も魔族なのか?」
ちげえよ、このトカゲ野郎。
弟子ども、笑ってんじゃねーよ。
「せっかく魔王が、そんな楽しいサプライズを企画したのに変身を解いて、どうするのさ? 魔王の計画は失敗じゃんよ」
「仕方がなかったのだ。人間が、あまりにも笑える事を言うものだから、つい変身が解けた」
「ふ〜ん、魔族を笑わせる事が出来る愉快な事って何なのよ? それくらい教えなさいよ」
魔族は思い出し笑いでもしてるのか、心底愉快で堪らないって感じで言った。
「いいだろう、教えてやろう。勇者の一族は我々が滅ぼしたのだ! 有力な勇者の候補は首を切り取って、魔王様の城に飾ってある。それも知らずに勇者の登場を待ち望むなど、人間は笑わせてくれる」
アルスの首が無かったのは、そういう理由だったのか。魔王をぶち殺す理由が増えたね。
「人間は繁殖力が強いから、首を切り落としておかないと、すぐに増えてしまうのだ」
この野郎、私達をゴキブリ扱いかよ。
「それで、このサプライズ企画は続けるの?」
「いや、引き上げよう。手品のタネが知られたら面白くないだろうからな」
「最後に一つ、教えてくれない?」
「なんだ?」
「その勇者候補は首だけじゃなくて、腕も食い千切られてたのよね。誰が食べたの?」
魔族の表情は、よく分からないけど、意外そうな顔をしてたように思う。何で知ってるの?って感じかな。
「あれは私が食べた。腕を食い千切られた時の、奴の苦痛に歪む顔は忘れられない愉快な思い出だ。
出血多量で動きが鈍くなるのを、仲間達が嬲り抜いた。最後に首を斬り飛ばした時の無念の表情は最高だった!」
アレスとアリスは顔面蒼白になっているね。そりゃそうか、私を守って死んだとしか知らなかったんだから。




