二十八話
見物人からは大歓声が上がっていた。漏れ聞こえる声によると、アーサーは今大会の優勝候補だったらしいわね。ごめんよ、本命を脱落させちゃってさ。
「私の完敗です。もし、よろしければ名前を教えて頂けませんか?」
「アルマ・リュージュよ。アルコンで小さな道場と塾をやってんのよ。近くへ来たら遊びに来てね。アーサー殿なら大歓迎するわよ」
「おおっ!! 貴女が、あのロリッ……ゴホッ! 失礼。噂はランスローとガレスから聞いておりますよ。なるほど、アルマ殿に負けたのなら仕方がない。あのランスローが認めた方ですからな」
コイツ、今、何を言いかけて止めたんだ?
ランスローとガレスの野郎、私にどんなあだ名をつけてやがるんだろう?
アーサーを締め上げて吐かせるかな。
私から噴出す殺気を感じたのか、アーサーは少しずつ距離を取り始める。
「では私は、これで失礼します。大会を楽しみにしておりますよ、では!」
アーサーは足早に立ち去った。
「なによ、母さん。せっかくカッコイイ人だったのに、追い払うなんて!」
「だって! 私の事をロリって言ったんだよ。どんな名前で呼ぶつもりだったのか気になるじゃん!」
アリスは、はぁ~っとため息をついて教えてくれた。
「母さんってさ、若いのよ。今の私と姉妹で通るくらい。いえ、下手すると私が姉に見えてるかもしれないんだよ」
「ホント!? とても嬉しいなぁ」
「そうやって、素直に感情表現出すでしょ? 子供っぽいのよ。で、ガレスさんあたりがね、ロリおかんとか、ロリママとか呼び始めてさ。ニコも調子に乗ってロリ巨乳とか吹聴してんのよ」
「あいつら、ミンチにしてやろうか」
「道場の生徒も噂してるんだよ」
「どんな噂?」
「お母さんは処女だって」
「はぁ!? 私は経産婦だよ、処女なワケねーだろ!? アルスに破られて思いっきり、あんたらの元を流し込まれたんだよ。じゃなきゃ、産まれてないってんだよ!」
「お母さん、露骨すぎるよ、声がでかいよ!」
ハッとして周囲を見渡すと、好色そうな目で私を見てる奴らが何人もいやがる。
「うぜぇ目で見やがるなぁ、斬っちゃうかな?」
「お母さん、言葉が乱暴だよ、もう」
むっ! 今のは娘の口を借りてアルスが忠告してくれたのかもしんない!
「うふふふ。私、エッチな目で見られるの、いやぁん! 斬り刻んじゃおうかしらね?」
「お母さん、ネコを被るの失敗してるよ」
「あらそお? それにしてもロリ巨乳って何よ?」
「少女のような外見で、大きな胸をしてるからでしょ? ニコがそう言ってたわよ。」
「あのエロ餓鬼、指を全部斬り落としてやろうかな。やっぱり、男はアルスが一番だよ」
「お父さんが?」
「とにかく強かったし優しかったよ。そして女性を変な目で見ない。私は一年半くらいアルスの家で生活してたけど、エッチな事なんかされてないし、エッチな目で見られた事だって無いんだよ」
「お母さんを見て何も思わないなんて、父さんってば大事な何かが欠けてたんじゃ、あいたぁ!?」
アルスの悪口は言っちゃダメなんだよ。悪い娘にはハイパーウメボシの刑だよ!
「いたたっ!? ごめんなさいってば!」
「それじゃアレス達に合流しよか?」
「は~い」




