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二十二話

 「面白い! 大言壮語を後悔させてくれる!ランスロー、貴様が審判だ、いいな!?」

 「了解した」


 私とガレスは離れて距離を取る。周囲をチラッと見たら弟子たちが鈴なりになって見ている。

 見学とは、見て学ぶと書く。良いチャンスだから、きちんと見るんだよ。

 いつのまにかシーナも来ていてトウモロコシを食べながら試合を見てる。

 あとで見物料を取ろう。その隣にはシーラとシータも並んでる。巨乳母娘でニコには眩しいだろうな。


 「始め!」


 ランスローの鋭い掛け声がかかる。ガレスは特に構えもせず、ノシノシと歩いてくる。

 よっぽど舐められてるんだなぁ、私は。

 ガレスは真上から剣を振り下ろす。

 つーか、ここまでで胴体をなぎ払ってやれたんだけどね。

 振り下ろされた剣は、わずかに体を捻ることで避けてみせる。

 剣は地面に浅くだが刺さっている。寸止めする気も無しなわけ?

 

 「これは試合であって果し合いじゃないはずですよ!」


 シーザーが青い顔して叫ぶ。

 いいんだよ、シーザー。私も手加減しなくていいってガレスは言ってくれたんだよ。

 私は浅く地面に刺さった剣の上に飛び乗った。

 当然だけど、剣はガレスの手から落ちる。

 

 「あ!?」

 「何を間抜け面してんのさ?」


 私は剣をガレスの首にピタリとつけた。

 見たか、シーザー。

 力自慢なんざ、こんなもんだよ。

 

 「も、もう一度、お願いする!」

 「ん~? ガレス、あんたは死んだんだよ。勝負に二度目は無いんだけどね」

 「そこを何とか!」

 「どうせ、本気でやれば、とか考えてんでしょ?」


 ガレスは黙り込む。図星か。


 「まぁいいわよ。ほら、稽古をつけてやんから今度は本気で来なさいよ?」

 「当然だ!!」

 

 今度も力に任せた技だったけど、少なくとも私を舐めてないみたいだね。

 さすがに、これに対抗するのは難しいんだよね。

 男の頃だったら、力でも対抗できたと思うんだけどさ。

 ガレスの周囲を回りながら、スピード重視の手数で攻める。

 力技は攻撃する時は良いんだけど防戦に回ると弱いんだよ。

 戦争だったらランスローがフォローするんだろうけど、こういう試合じゃ当てにできないもんね。


 「刺突・千手の型」


 私は猛烈な速度で突きを繰り出す。まるで千の手で同時に突くかのように。

 ちょっと深く刺さりすぎたかなって一撃も何発かあったけど、ガレスは最初に殺すくらい本気でやっていいって態度で示してくれたし、いいよね?

 シーラ、回復をよろしくね。

 ガレスがその身に、どれだけの突きを受けたのか、刺した私も分からない。

 10発から先は面倒で数えないよね、普通は。

 派手に倒れたガレスに、シーラが回復魔法をかける。

 

 「先生、もう少し手加減しないと、この人は死んでましたよ?」

 「シーラがいるから大丈夫だと思ってたんだよ」

 「死なない限りは治せますけど、死んじゃったら治せないんですからギリギリまで試すの止めて下さいね?」

 「分かったわよぅ。弟子を相手に使えない技を使うチャンスだったもんだから、ついね」

 

 ガレスが助かった事を確認したランスローは、安心したのかため息をついている。


 「で? ランスロー、あんたもやんの?」

 「いや、ガレスがここまで一方的に敗れたのであれば、私も勝てないでしょう」


 勝てないと知りつつも戦うのが男だと思うんだけど、それをこんな小さい道場で実践する気はないらしい。


 「今日は失礼しました。後日にまた、お詫びに伺います」


 そういうとランスローはガレスを担いで去っていく。シーザーも一緒についていった。


 「お母さん、じゃなくて先生! 強かったね! あのランスローも戦えば負かしたでしょ?」


 興奮したアリスが抱きついてきた。


 「負けるとは思わないけど、あのランスローってのは、アルスに匹敵するくらい強いかもね」

 「父さんに!?」

 「私と同じスピード型かと思っていたけど、あの重いガレスを簡単に担いで去ったということは、力もスピードも、おそらくは技も兼ね備えた万能の剣士だろうね」


 これは楽しみになってきたよ。

 後日、ランスローとガレスは改めて詫びに来た。そして剣技を極める為と称して、ウチの道場に出入りするようになった。王国でも五本指に入る剣士が三人も来るようになったか。

 まぁ私も強くなれるから、いいけどね。


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