二十一話
ウチの子供達は十四歳になった。成長の早い女の子は、もう成熟した感じになっていて、ニコのセクハラ対象になっているんだけど、みんな私が教えた素手の攻撃をマスターしているので、毎日そこかしこでニコの悲鳴が聞こえてる。
唯一私が教えた技を使わないのはシータだ。
姉のシーラに勝るとも劣らない体をしてるんだけどね、魔力の弾を自分の周囲に周回させていて、ニコが来たら一斉に撃ち出すんだ。
死なない程度に威力は抑えてるらしいけど、多分ニコじゃなかったら死んでると思う。
姉のシーラも、私が教えた技を独自に発展させている。私が教えたのは体術としての技なんだけど、シーラはそれに己の神気を乗せて破壊力を倍増させてるようだ。
最近になって台頭してきたのは、サラって娘だ。
この子もニコの好きそうな巨乳にして美乳の持ち主なんだけど、私が教えた技を左右の手で行う。
連打で行う時もあれば、両手で威力を倍にしてる時もある。
ニコのおかげで、この技がどこまで発展していくのか最近は密かな楽しみとなっている。
そんなある日、二人の騎士が訪ねてきた。
一人は長身で細い印象の美しい男性で、もう一人は豪傑と表現するに相応しい大柄な男性だ。
一目見て只者では無いと分かる。私と雑談してたアリスも強いと呟いてる。
私はアリスの頭を撫でた。相手の強さを見抜くのも大事だからね。
「シーザーは、こちらにいると聞いたのですが」
長身の美人騎士は声まで美しい。
シーザーの客だったのか、アリスに呼んでくるように言う。
「失礼ですが、お二人はどなた様ですか?」
「失礼しました。私はランスロー、こちらはガレスです」
私は軽く目を見張った。そうか、この美人のハンサム騎士がランスローで、ゴツイのがガレスか。
これがシーザーを破った男達か。魔王と戦う時は戦力になりそうだなぁ。
すぐにシーザーがやってくる。後ろにはウチの子供二人とシードがいた。
あの三人にとってシーザーは絶対だからね~
それよりも強い二人とのやり取りが気になるんだろうね。
「シーザー、元気そうだな」
「ランスロー様もガレス様もお久しぶりです」
ガレスはランスローに話を任せていたようだが、我慢できなくなったらしい。
喋りだした。
「我々と戦い敗れたとはいえ、お前は王国の背負う騎士だ。それが何故、こんな小さな名も無い道場にいるのだ?この数年、大会にも顔を出さずに、こんな女を相手に血迷っていたのか?」
「ガレス、言いすぎだぞ」
注意はしても、ランスローの気持ちはガレスと同じらしい。
「いえ、こちらの女性は私の師匠です。お二人に負けてから師匠に鍛えなおしてもらっていたのです。師匠に勝てた暁には大会に出場し、お二人に恐れながら雪辱を果たそうと思っていたのです」
「来なかったということは、貴様は師匠に勝てなかったということか?」
「はい、ガレス様。私の腕では師匠に及ばず……」
あれ、そうだっけ?
そうか、シーザーが勝てたら女を教えてやれとか、シーナが言うもんだから花を持たせてやれなかったんだ。
「シーザーは、二人に勝つ為に私と稽古してたの? 私に勝てたら女を教えてくれって言うつもりじゃなかったの?」
「なんだと!?」
あ、やば。
シーザー相手の軽口のつもりだったんだけど、ガレスさんには通じなかったみたいだね。
「やはり、女に現を抜かして腑抜けていたか!?」
「いえ、本当に師匠は強いんです」
「この程度の女など王都に行けば、いくらでもいるだろうに」
なんだとぅ?
「今の私はすっぴんなんだよ。王都にいるような顔にゴテゴテと左官屋が塗りたくってるような女と一緒にすんな! それにどうせ王都の貴族の女なんかアバラが折れるくらいコルセットで締め上げたハムみたいな女か、でなきゃアレコレ詰め込みすぎて、裸にひん剥いたら鶏がら一匹なんて女ばっかりじゃん!私は脱いだら凄いんだ! ね、シーザー?」
「先生、私は先生の裸なんて見たことないですよ」
「おや?子供の頃に一緒にお風呂に入らなかったっけ? なんなら今度一緒に入る? オカズになるかもよ?」
「先生、ご冗談を」
「ハッ!下品な女だな! 弟子を体で誘惑か? どうせ道場破りの用心棒代わりにシーザーを使ってるんだろう?」
「ガレス様、いくら何でもそれは師匠に対する侮辱ですよ」
「シーザーは、私にとっては歳の離れた弟みたいなもんなんだ! 姉ちゃんが弟と風呂に入って何が悪いんだよぅ!」
今やガレスは蔑むような視線を隠そうともしない。ランスローは何か迷ったように考え込みながら私を見ている。
「シーザー! アンタの力なら、このデカイのなんか倒せるけれど、こいつは道場破りと私は見たよ ぶっとばすからね」
「面白い! この俺を倒せるというか!?」
「アハハハハ! どうせ力技で勝ちあがったんでしょ? 私の夫に比べたらザコだよ、アンタなんか」
アルスには勝てなかったもんなぁ、生きてたらもう一回戦ってみたいんだけどね。




