十四話
私、死ぬかもしんない。
双子の赤ちゃんは、驚くほどに頑丈だ。さすが勇者の一族だと思うよ。
この二人が朝、昼、夜と関係なくミルクを要求し、オムツが汚れたことを知らせてくる。
眠りたいよ……
こいつら示し合わせてんのかって思うほど、交互にやらかしてくれるんだよ。
最近の私の特技は、3秒以内に深い眠りに入れることなんだ。
これ、何年続くんだろ?
私は最後まで耐え切れるだろうか?
そんな時にシーナとニナが来た。
ニナは自分とダンナの両親が親バカならぬ、祖父母バカになってるそうで喜んで孫の世話をしてくれるらしい。こいつ、少しは苦労しやがれですわ!
そう言ってみたら
「あたし、産む時に死ぬって覚悟決めたほど苦労したもん。だからいいのよ」
だってさ!
シーナの赤ちゃんは長男と長女が面倒を見てるらしい。
どうやったら、そんな有能な人材に育つんだろうか。
その母親ときたら、子供を産む時にウンコ呼ばわりしてるというのに……
「あんた、身寄りがないし少し手伝ってやろうと思ってさ」
シーナ、あんたって人は……これからは、お姉さまって呼ばせて下さい!!
気色悪いから、お姉さまって呼ぶなと言われた。
何でだ?
じゃあ、お礼に如何に効率よく敵を倒すか、その白兵戦技術を教えてあげるんだ。
シーナの6人の子供達をパーフェクトソルジャーに鍛えてあげよう。
しかし、それも断られた。
何でだ?
仕方ないので読み書きと計算を教えてあげよう。
そう言ったら、今度はシーナも喜んでくれた。
読み書きも大事だけど、まずは強さなんだぞぅ、と私は言いたい。
まぁいいや。
読み書きを教える合間に、超強力な武術も仕込んでやろう。
我が息子と共に魔王を倒してくるがいい!
そんなことを考えていたら、余計なことを教えんなよって釘を刺された。
何でばれた?
赤ちゃんの世話を手伝ってくれる代わりに、子供達に読み書きを教えるって事でシーナと手打ちした。
なので私はシーナの家の近所に引越しをすることになった。
シーナの子供達は利発で勉強熱心だった。
赤ちゃんの世話をしてもらうから、教えるのだという気持ちは消えた。
何でもかんでも教えてやるのが楽しい。
シーナのダンナさんからは、男の子には武術も教えてやりたいと聞かされたので、その言葉を錦の御旗に武術も教えだした。娘の方は魔法を教えてみたけど、回復魔法の素養があるようでメキメキ上達している。
これ、本当に冗談抜きで我が子と共に魔王を倒しに行くかもしんない。
シーナの子供達に勉強と武術を教えることで、他人への教え方ってものを私は学んだ。
私自身は、自分が強くなる方法は一生懸命に考えて実践したけど、他人が強くなる方法なんて、どうでも良かったからね。
シーナの子供達へ教えたことをキッカケに、魔王を倒す為に我が子と共に戦ってくれる者を育成しようと、塾と道場を立ち上げた。
塾はシーナの子供を助手に使って経費を浮かせようと思ってる。
人に教えることで、気がつく事や学ぶことも多いからね。
と、シーナには言ったんだけど、タダでこき使う気か?と言われたので小額ながら給料を出すことにした。
上手くいくといいなぁ。