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百三十話

 私が頷くのを確認した後、アリマは相手をあざ笑うような、自嘲するような何とも言えない複雑な表情でアルスに言った。


 「お前があの時に抱いたのは、そこのチンチクリンじゃなくて、この俺だ!」


 なんだよ、私に向ってチンチクリンたぁよ。そりゃ私は背が小さいけどさ。オマケに、その言い草じゃ絶対に誤解を招くってんだよ。ほら見なよ、子供達の表情ときたらもう、頭の中が真っ白になってるみたいだしさ。しかも周囲を見ればヴァルキリーズの面々が、顔を真っ赤にして、しかも嬉しそうに何かを語ってる。

 ……こいつら腐ってるな?


 「母さん!」


 アリスが私を呼ぶので、そちらを見たんだけどね。


 「母さん、父さんと母さんは恋人だったけど、父さんは両刀で母さんの弟のアリマさんと不倫したのね?アリマさんは、それを申し訳なく思って姿を消して、その後に父さんがアリマさんを追って蒸発。母さんは仕方なく一人で私達を育てた、と。そういうことでいいの?」


 子供達の中で、私とアルマとアリマの関係が、どんどんと歪んでいく。このアリスの推理に皆が頷き納得していて、唯一違うと分かってるのはシーラくらい。なんせ、この子は私とアリマの存在が重なりあってるのを発見してたくらいだからね。

 シーラだけは誤解してないってのはアリマには朗報だろうけど、それ以外がアリスの推理を事実認定したんじゃ、納得いかないのよ。


 「違うわよ、バカ娘!! 変な事を想像してんじゃないッ!!」

 「じゃあ、どういう事なのよ?」


 尋ねられても分かんないのよね。

 私は確かにアリマ・リュージだったはずなんだ。でも、目の前に私がいる。俺がアリマ・リュージが存在してるんだ。ん~、俺って一人称使うの20年ぶりくらいかな。違和感ありまくりでダメだわ。


 「あとで、あのアルスの偽者を叩き潰したら教えてやるわよ!!」


 問題を先送りして、目の前の偽者を叩き潰す事に集中させないとね。だけど偽者は納得しなかった。


 「君は何を言ってるんだい? あの時、君はいなかったろ? ボクが魔物の群れと戦う前に抱き合ったのは、確かにそこのアルマだよ」

 

 蒸し返してんじゃねーよ、このヴォケ。けどまぁ、ビジュアル的には偽者の言うことに間違いはないんだよね。肉体は確かに私だったんだ。でも、この身体ってこの世界に来た時にアリマの肉体が変化したものなのか、それとも何か違う事情があったのか?


「アルス、いや、その偽者。あの時の映像を見てモノを言ってるんなら、お前が正しい。だけどな、あの時の感情を込みで言うなら間違えている。そして、それはアルスも知ってたことだ。だからアルスだったら、俺を知らないと言う筈はない。もう茶番はいい。お前をこの世から消してやる」


 アリマが剣を構えながら、ゆっくりと歩いていく。すぐ後ろにシーラもいて、支援魔法の詠唱を開始していた。


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