百二十六話
魔王の城の入り口付近を制圧したところで、私も城へ入ることにしたのよ。子供達も、私と一緒に入るみたいね。母さん一人にしておけないから、なんて言ってるんだけど、子供のくせに生意気だよね。それとも、「あの小さかった子供達が立派になって……」とか言えばいいのかな?
やっぱり、やだ!
そんなことを言ったら、一気に老け込みそうだもの。
ニコは「俺の見せ場を取るんじゃねーぞ」って言ってるけどさ。世界を脅かすような元凶なんか、誰でもいいから倒せばいいんだよ。手柄を競うなんて、まだまだ青いなぁ。
なんて、ついポロッと言ったらさ。
「魔王を倒したら、この地を俺が支配しても良いんだろ? すべての種族が平等に暮らせる国をつくるのが、俺の夢だけど、まずは支配者として舐められないように強さを見せないと、あとで反乱でも起こされたら大変じゃねーか」
ああ、そうなの。結構色々と考えてたのね。ごめんね、単純馬鹿だと思ってて。これからも、この認識を変えるつもりはないけど、ほんのちょっとだけ、見直してあげるよ。
「俺は、そこまで考えたりしてねーよ。ルージュが心配性なだけなんだ」
なんだよー、全部ルージュの考えかよー
やっぱりニコは馬鹿なんだ。
などと、喋ったり考えたりしながら城内へ侵入したんだけどね。
内部は拍子抜けするほどに敵がいなかった。入り口付近の獣人族が主力だったのかしらね?
時々、巨人族とか敵が出てくるけど、それらも子供達が倒してしまうのよ。
「まだまだ、城の中で強い抵抗をしてくると思ってたんだけどね~」
「有力な種族を次々と寝返らせてるし、よっぽどの偏屈者しかいないんじゃねえかな?」
と、私の独り言に返事をするアリマ。
まぁ、そんなもんかなぁ?
負け戦に最後までつきあう奴はいないか。
「だったら謁見室を、さっさと探し出して突入しちゃおうか」
私が提案すると、アレスとアリスは反対するんだよ。
どこかに伏兵がいるかもしれないんだってさ。
ま、私達を討取っちゃえば、魔王の勝ちって気もするけど、それをやれるだけの兵力があるなら、篭城なんかしなくていいんだよね。
ヴァルキリーズが手際よく城内を探索して、地下から一階、そして二階へと進んでいく。
奥へ、そして上層階へと進んでいき、ついに謁見室らしき場所を探し当てたんだよ。
「長かったなぁ……」
私の隣にいたアリマが呟いている。前の世界で魔王を倒すまでに5年だっけ。
そこから、この世界へ来て子供を育てながら、アルスの敵討ちのチャンスを狙って20年くらいかな?
まぁ私達も歳を取ったもんだよ、本当にね。
そして私は謁見室の扉を蹴り開けた。




