百二十三話
大砲が10門ほど並んでる。それを周囲の兵隊達が、興味津々で見ていた。どこを狙うのか、それは私の指示を待つ為に、まだ決めてないんだってさ。まぁ方向を微修正するだけだから、大したことじゃないか。
亜人達がいても極力被害が出ないように、まずは一点集中で砲弾を叩き込もうかね。
目標は城門で、修理なんか無駄だと思えるくらいにぶっ壊すんだよ。
「いいかな。まず初弾は、あの城門付近を狙うよ。我が軍が一斉突撃をしても、楽に通れるくらいに壊してやるんだよ」
「了解!!」
方向を指示してやるとフォボスの技術者達は、近場の兵達にも手伝ってもらいながら射角などをテキパキと調整していく。勇者に敵対する道を選んだ亜人達は、こちらの説得しようとする亜人達と向かい合って、まだワイワイと言い合っている。砲撃場所から上手い具合に離れてるから衝撃は受けるだろうけど、死にはしないでしょ。
城門の上あたりから、こちらを見張ってる連中もいるけど、あれは無関係な連中かな? できれば離れて欲しいけど、戦争に被害はつきものだし、もう仕方がないよね。警告はしないんだ。
「アルマ様! 準備完了!! 撃てます!!」
技術者の報告が聞こえた。私は兵士達に向って語りかけた。
「勇者が魔王に戦いを仕掛けるのは、太古の昔より幾度もあった事だと思う。でも勇者不在で強大な魔王に戦いを挑むのは、今日が歴史上初めてよ。今までは勇者対魔王、人対魔族・亜人。互いに自分達こそが正しいと考えて二極に分かれて戦ってきたけど、相手にレッテルを貼り付けて戦うのは無意味なんだよ。だから、もうお終い。 その象徴たる一方の勇者は現れず、もう片方の魔王も今日滅ぶのよ。そして明日からは、ただ多種族・多民族の皆が対等で平等な世界が始まるんだよ。それが今回の戦いの意義だからね。これは勇者の為でも、正義の為でもない。この世界に住む私達の全員の為の戦いだからね。だから最後まで頑張ろう!」
おう!
そう兵士達は答えて武器を空へと突き上げた。
「よぉ~し、全砲門、撃て!!」
10門の大砲が一斉に火を噴く。一瞬のタイムラグの後、激しい轟音が城門から聞こえてくる。それと同時に爆発の衝撃波も押し寄せてきた。門のあった城壁部分は砲弾が集中したせいで、木っ端微塵に吹き飛んでいて、10人前後の人間が一列に並んでも通れそうな程に穴があいていた。
こうなるだろうなと思っていた私でさえ、驚いて一瞬だけど頭の中が真っ白になったくらいだから、何も知らなかった敵も味方も度肝を抜かれて呆然としている。唯一、フォボスの技術者だけは、予想以上の破壊力と戦果に歓声をあげていた。静まり返った戦場では、その声だけが、やけによく聞こえていたのよ。
「続けて砲撃用意!!」
我に返った私が叫ぶと、僅かな遅れの後に「了解!」と返事がきた。そしてそれが合図だったかのように敵も味方も動き出した。味方の亜人達は、魔王側についた身内に、今のを見たかと投降を呼びかけ、それがイヤなら終わるまで奥へ逃げていろと繰り返し叫んでいる。
「城内への突破口は開いたけど、無事な城壁から攻撃されるのは面白くないのよ。次は城壁を攻撃するわよ。もう大砲の威力は見せたよね。城門へ攻撃することで、あんた達の身内が逃げるか、こっちへ投降するだけの時間も与えたよね? もう義理も果たしたわよね? 次は遠慮しないわ」
私が本気だと心底分かったのだろう。亜人達は悲鳴のような声で、次は砲弾が行くぞと叫んでいる。それを聞いたからか、城壁の上にいる亜人の数は減ったけど、こちらへ来る者はいない。まぁ考えてみれば、派手に城の一部を破壊されたとはいえ、それほど死者も出ていないのなら、こちらへは来れないのかもしれない。
「砲撃準備完了!」
「うん、じゃあ次は城壁を満遍なく破壊してやろうかな」
私はどこを撃つかを大まかに指示すると、兵士が方向の微調整を行うのを待った。
「準備完了!」
「よし、撃て!!」
先ほどは全弾が、ほぼ一箇所に命中したけども、今度は城壁全体に砲弾が飛んでいく。さすがに10発もの砲弾が爆砕した城門ほど破壊されてはいなかったけど、それでも派手に粉砕されていく。運の悪い敵の兵士は、数メートルも吹き飛ばされて地上に落ちていった。あれは……死んだろうなぁ……




