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百十九話

 大砲が届くまで暇だったんで、私の親衛隊になっちゃったワルキューレの子達と……面倒だからヴァルキリーズでいっか。ヴァルキリーズの面々と遊んで……血の滲む実戦練習を繰り返していたんだけどね。ウチの子供達が出発してから4日後に届いたよ。

 巨人族の人達、身長が3メートルくらいあるんだけどさ。もっとかな? そんな人達が大砲を10門引っ張って来たんだから大したもんだよね。車輪の部分を見たら、ゴムを被せてあってタイヤと呼べなくも無いものがついてたよ。

 大砲はタイヤもどきがついて移動が楽になったのと、全体的に軽量化してるみたいだね。ちょっと小さくなってるもん、間違いない。

 

 巨人族の面々は魔王城まで運んでくれると言ってくれたんだけど、どうも彼らの当初の予定では、ここまで運んで帰るつもりだったらしい。私達が13人しかいなかったんで運んでくれる気になったらしい。ごめんね、君達を計算に入れててさ。こちらに味方した瞬間から、コキ使われて驚いたろうなぁ。


 「いんやぁ、魔王城まで持っていくのは、全然かまわねんだけんども、オラ達が戦うのは勘弁してくんねーだか? あそこにゃあ、親父やお袋の言うこと聞かんで勇者に敵対する親戚がおってな。それと戦うのは勘弁して欲しいだよ」


 なんだ、こいつらの純朴そうな喋りは?


 「運んでくれるだけでも十分に有難いんだけどさ。けど、私らが戦ったら、その親戚を殺してしまうかもしれないよ?」

 「それは仕方ねーだなぁ。戦の習いってヤツだべ。ただまぁ同じ戦でも身内で殺し合いは避けたいだ。それが人情ってもんだべ?」


 あれぇ?

 なんか私、諭された?


 「ねぇ、巨人族って言えば魔王軍の中ではエリートで、コボルトや人と魔のハーフを虐げたりしてたんじゃないの?」

 「してましたよ! 私の背中の翼を力任せに千切ったのは巨人族ですし……」


 強い口調で返事したブリュンヒルデだったけど、あの喋りに困惑したのか段々と声が小さくなって、最後には言葉が途切れてしまったんだよ。うん、分かるよ。復讐してやる、皆殺しにしてやると心に誓っていたのに、こんな純朴そうなのが来ちゃったら困るよね。


 「どうしよう。こんな人の良さそうな巨人まで殺せない」

 「昔の復讐をするなたぁ、言わないわよ。でもね、その憎い仇の種族まで全部憎む必要はないんだよ」


 ま、月並みな事しか言えないけどさ。それでも言葉をかけてたら、その巨人がね。


 「どしただ? えれぇベッピンさんだっちゅーのに、そんなに落ち込んだ顔したら台無しだべ。もちっと笑顔を浮かべるだよ。おなごの武器は剣じゃねーだ。笑顔だでよ。男はその笑顔にコロッと参っちまうんだべさ」


 こいつ、純朴そうな顔して女を口説くのも得意なのかな?

 いや違うね。これを邪な心なく素で言うから、こっちも困っちゃうし、赤面しちゃうんだよなぁ。でもま、真剣に励ましてくれてるっぽいので、事情を説明してやったんだけどさ。


 「そんなヤツは巨人族の風上にもおけんヤツだべ!!」


 うわぁ、デカイだけに凄い迫力だなぁ。他の巨人達も何事かと聞いてきたので、この巨人が……

 そういや名前を知らないなぁ。いいや太郎にしとこう。太郎がブリュンヒルデの翼について怒りに声を震わせながら他の巨人達に語っている。その太郎の怒りに感化されたのか、他の巨人も激怒して、なんかとても恐いんだけど。普段大人しい人を怒らせると恐いって話は、こっちの魔族関連でも通じるみたいだ。


 「ブリさん、つれぇ思いをしただなぁ。アンタにひでぇマネしたのは、オラたちの部族の出身者かもしんねぇと考えただけで、冷や汗がとまらねぇだよ」


 ブリさんって、魚じゃないんだからさ。あぁ元の世界へ帰ってブリの照り焼きとか、ブリ大根とか食べたいなぁ。もう何年食べてないんだろう。こっちの似たような魚で似たような料理を作ってみようかな。でも私は料理が不得意でシーナには世話になったんだよね。


 食べ物の事を考えてたら、ブリュンヒルデと太郎が打ち解けて笑顔で喋ってたよ。それまで黙々と運んでたんだけど、他の巨人族もヴァルキリーズとお喋りを楽しんでいるみたい。憎しみだけが大きく心を占めているなんてしんどいもんね。私も子供達やママ友や弟子達のおかげで、日々何とか楽しくやってこれたんだしさ。


 太郎達とヴァルキリーズが雑談に花を咲かせていると、名前の話になってたんだよ。それでヴァルキリーズの名前は私がつけた事を太郎達が知ったんだけどね。もう、自分達にも名前をつけて欲しいなって言うんだよ。


 「魔王の城まで大砲を持っていくのは手柄にならんだべか?」

 「大砲が届けば戦力が飛躍的に増加するから手柄と言えば手柄なんだけどさ。でも、この子たちは、下手をすれば命を落とす環境で武功を立てたからね。どうしたもんかなぁ」

 「分かったべ! そんなら名前をくれたら戦にも参加するだよ!」

 「え~!? だって、あんた達、身内がいるから参戦は勘弁してくれって言ったじゃん!」

 「こんなめんこい娘っ子の翼を千切ったのが巨人族なら、もしそれが身内なら容赦しないべ。強い力を持ったもんは、他者に優しくせねばダメだべ。それに……」

 「それに? なによ?」

 「言葉というのは力を持つんだべ。アルマ様は勇者じゃねーかもしんねぇけんど英雄だべ?」

 「英雄でもねーと思うわよ?」

 「謙遜しなくてもいいべよ。その英雄が名前をつけるっちゅーことは、その名前の言葉も相当な力を持つんだべよ。そったら立派な名前は欲しいでねーか」


 そんなの初耳なんだけどなぁ。前の世界では、そんな話は聞いた事がないし、元の世界では似たような話はあったけど、あくまでも迷信だったからね。


 「分かったわよ。あんた達にも名前をつけてあげる」


 ジャイアント、ギガンテス、タイタン、ティターン、ギガースと名前をつけてった。同じ名前の読み方が違うだけじゃんって思うけどさ。異世界の彼らには、そんなの分かんないし、いいよね。太郎にはアトラスって名前をあげたんだ。名前になる言葉には力が付与される、だっけ。そんな情報を教えてくれたから手抜きせずに、ちゃんとつけたよ。


 「アトラスか! 良い名前だべ! で、どんな意味だべか?」

 「天をも支える凄い巨人の名前だよ」

 「そらすげぇ!ありがとう英雄様!!」


 そこまで喜んでくれると、私も嬉しいよ。

 さぁ魔王の城まで、あと少しだよ!

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