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百十七話

 魔王には結界を張る装置を守れって言われてたんじゃないのかな? 

 私達を試す為に装置を壊して、しかも魔王城へけしかけるなんて、重大な裏切り行為じゃないの?

 そんな風に言ってみたらさ。



 「たかが人間如きに怯えて、甲羅へ入って出てこない亀のようなマネをするなど、王たる資格無しだろう。しかも、我らの扱いは捨石同然ではないか。人間達が攻撃したくらいで滅びるのならば滅びればいいのだ。そうは思わんか?」



 かな~り不満があったんだねぇ。けど魔王が勝ったら、裏切りとして粛清されんじゃないのかな。



 「お前達が負けたら、すかさず攻撃して壊滅させる。人間の姑息で卑怯な手段によって、結界を破壊されたと弁明するさ」



ずるい、こいつらずるいぞ。そう思ったけど、口には出さない。「それもそうか。では戦おう」なんて言われたくないし。ともかく了解を得て私達は結界を発生させる装置を破壊した。コボルト族の足の速い者が偵察に行ったところ、魔王城の結界は消えていて、大騒ぎになっていたそうだ。

 装置を破壊したことで、もう竜族の村に用は無かったのだけど、代表者と会話した時に王都で竜族を倒した事を話して、我ながら疑問に思った事を聞いてみたんだ。


 

 「あのさ、カレドニアの王都で竜族を倒したって言ったよね。でも、あいつは見るからに人の形の竜って感じだったんだ。でも、ここにいる人達は、若干の違いはあるけど私達に近いよね? 何で?」

 「私をジッと見つめているから、どうしたのかと思えば、そんなことか。別に隠す事でも無いから教えてやろう。私達は姿を二つ持っている。お前が王都で見たものと、今のこの姿だ。どちらが真の姿というワケではない。必要に応じて使いわけている。より竜に近い姿は戦闘に適しているので、その王都とやらでは、その姿になったのであろうよ」

 「ふ~ん……あいつ、変身が解けたって言ってたんだよね、確か……それに、あんた達って似たような姿の私達を捕食するの?」

 「脆弱な人間とはいえ、単身で敵地のど真ん中に現れたのだ。はったりをかけたんじゃないのか?」

 「そっか。あの竜族は私の夫を殺したって言ったからさ。憎い敵だったから、その姿も醜いって感じてたんだ。でも、威風堂堂としてる貴女は人の姿でも綺麗だし、きっと変身した竜人の姿も美しいんだろうね」



 アルスを殺した奴は今でも許せない。だからって、その種族を全部憎む事は無いものね。そう思えば憎しみからくる歪んだフィルターは外れて、その種族なりの美しさを認められるなって思ったんだ。

 そしたら代表者が、とても優しい笑みを浮かべて、私の頭を撫でるんだよ。私は童顔だし、背も小さいから子供みたいに見えてるのかもしれないけど、これで高い高いされたら、さすがに怒るよ。

 まぁ、さすがにそこまで露骨に子供扱いはされなかった。うん、良かった。



 「私の名前はリュシールというのだ。人族の女性よ。次からは私を名前で呼ぶがいい」



 威風堂堂なんて、女性に使う表現じゃないかもしれないけど、リュシールは表現に相応しい人だったんだよ。それが今は、とても柔らかい、本来の女性らしい暖かい雰囲気で私を見てる。あまりにも雰囲気がガラッと変わったので私が戸惑っていると、トシュウさんが小声で教えてくれたんだ。



 「竜族は自分の認めた者に名を教えます。これはとても名誉なことですが、その強さに相応しく気位が高い為、多種族には滅多に名を教えないのですよ」

 


 そう聞いてしまっては名乗りを返さなくては失礼だよね。



 「名前を教えてくれて、ありがとう。私はアルマ・リュージュ。アルマって呼んでよ」

 「アルマか、良い名前だ。戦で愛する者が殺される、それも世の倣いと言えばそれまでかもしれない。だが、その憎しみを胸の奥へ秘めて出さず、憎い敵の種族と交渉するなど……アルマは立派だ」



 なんか、とても過大に評価されてる気がするよ~? 

 でも二種族の永遠の友情を築いていくために黙っておこうかな。 

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