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百九話

 オーガーなどの集落に近いコボルト族や他の獣人族の居住地に向けて、私達は出発したのよ。目立たないけど私達の軍の中には先日の打ち合わせの通り、こちらについたコボルト族が混ざっている。約束した合戦の場所へ近づくと、双方の軍から1~2人のコボルトが頻繁に行き来していた。勿論、合戦場の位置と時間などの微調整を行う為にね。そして今、見た感じでは両軍が堂々たる布陣を敷いて構えている。


 両軍はしばし睨みあった末、ついに激突した。コボルト族の俊敏にして屈強そうな戦士団が雄たけびを上げながら、こちらの陣へ突撃してくる。私達は前衛にコボルト族を出して、これを迎え撃つ構えを取ったのよ。そして、こちらに突撃してきたコボルト族は戦うこともなく、私達の陣営を通り抜けてトシュウの村を目指して去っていく。そして残るコボルト族は敗走し始めるので、こちらも追撃を開始する。ここまでは打ち合わせの通り。


 

 「獣魔族に続いての俺の国の民か……」

 「大事にしなさいよ? 魔王を見限って、あんたの国民になるんだからね」

 「分かってるって! 人は石垣、人は城。人材ってなぁ、一つの武器なんだぜ。使い捨てにしてる連中には分からないだろうけどよ。俺は違うぜ!」



 ゆっくりと進軍してる時にニコに言ったんだけど、ニコってば武田信玄みたいな事を言ってんのね。こういうのって、どこの世界でも普遍的なことなのかしらね。やがて前方を敗走してたコボルトの連中が散り散りになった。私は手を上げて進軍を停止させる。



 「コボルト達が散ったって事は、もうすぐ巨人族を主力とする真の敵軍が来るわ! 気を引き締めていくわよ!!」

 


 歴戦の兵士達が勇ましく声を上げる。ここで味方の中にいたコボルト族が偵察を買って出た。勿論、私は喜んでお願いしたのよ。何人もの偵察が巨人族の軍を偵察しに飛び出していく。この間に軍の中から二千の兵を割いて別働隊を編成したのよ。別働隊の指揮官はランスローで、ガレスを副官にしたの。

 やがてコボルト族が戻ってきたので報告の受けたの。巨人族はオーガーとトロールの二種族を主力としていて、兵力はおよそ1万程度らしい。1万とは言っても、普通の人間で考えれば3~5倍に相当するんじゃないかしらね。でも、私達は内力を身につけてるし、そしてここにいるのはニコの部下の獣魔族達だからね。十分に戦えるはずよ。

 巨人族の位置を確認しながら別働隊の作戦を大まかに決めたわ。作戦って言っても奇襲しかないんだけどね。でも陳腐だけど効果はあるはずよ。ランスロー達の別働隊にもコボルト族を連絡役及び斥候として複数名つけて出発させたんだ。


 コボルトの偵察兵を頻繁に出して敵の位置を確認しつつ、私達は魔王軍との距離を縮めていく。その中で私はニコやサラ、そしてシードに声をかけたんだ。



 「ニコの配下なら敵と対等に戦える。でも、それをやれば人的損害も大きくなるわ。だから私達が先頭に立って敵を斬り倒していくわよ。こっちが圧倒すんなら主力となる強いメンバーでガンガン押していくしかないと思うのよ」

 「先生、俺の配下はヤワじゃないぜ? だけど、圧倒的な強さを持つ奴が敵陣を切り裂いて突っ込んでいくってのは賛成だ! 強さが自慢の奴らには最初にガツンと凹ましてやるのが一番効くと思うぜ!」



 サラとシードも頷いた。そして敵が見えてくる。大きくて迫力があるって素直に思ったよ。身体も筋肉質であの体格で鈍器でも振り回したら、当った瞬間に体内をグシャグシャにされて死ぬだろうね。ちょっと味方もざわめいてる。これはさっきもニコと話してた通り、まず私達が突っ込んで敵を倒し、出鼻を挫くと共に、味方に勝てるって気持ちを強烈に示してみせないとダメか。



 「皆! 聞いてちょうだい! あそこに見えるのが長年コボルト族を支配してきた連中よ。見ての通り身体も大きいし、力もあるでしょう。手強いし、そして何よりも恐ろしい。それは認めましょう。でも私達なら勝てるよ。内力を極めて数々の実戦を乗り越えてきたんだもの。さぁ! 体内に内力を満たしなさい! 勇気を持って! 進みましょう!」



 万を数える巨人達が地響きを立てて接近してくる。私は最初は早足で、そして徐々に速度を上げて敵へと走っていく。左右にはシードとサラ、そしてニコにルージュがいた。後方からも雄たけびを上げて仲間達が続いてくる。頭上を越えて後方から矢が流星の如く、こちらへ突撃してくる巨人達へ降り注ぐ。巨人達の足が若干鈍くなったように思えた。そしてそれこそが好機だと思った私は、巨人の群れの中に飛び込んで斬り倒す。サラが、シードが、ニコとルージュが群れに飛び込んで縦横無尽に斬りまくった。

 私達が飛び込んだ周辺の巨人達は、私達に気を取られて大混乱となった。そこへニコの配下が突撃して巨人達を攻撃する。



 「一対一にこだわらないで!! 二対一、三対一で戦いなさい!!」



 私は巨人と戦いながら叫んだ。この混乱が続いてる間に、なるべく敵を倒したい。そして敵に手強いと思わせて士気を低下させたい。そうさせればランスローの別働隊が奇襲をして来た時には勝負がつくはずだからね。



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