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百五話

 ちょっと予想外の部分もあったけど……、うん、小型魔族が白兵戦を挑んで来るってところがね。あれって斜面を登ってこれないと思っていたのよ。それが出来たんだよね。雑魚だと思って舐めてたのかなって反省したよ。それで斜面をより垂直に加工して、さらに下から来た奴が登れないようにしたんだ。日本の城で言うと武者返しって言うのかな。


 大砲は高い場所から、敵を一望して砲撃できるようにしといたし、火薬の管理もしっかりさせた。魔族達が火薬の事を知ってたら、そこをピンポイントで襲って火をつければ良いんだもんね。だから高い場所から撃つのは正解だと思うんだ。それと、白兵戦に対応できる連中の詰め所も設置したんだ。これだけやれば、この前を通る敵は大半が討ち取れると思う……気がする。まぁどれだけ想定しても、用心しても死角ってのはあるだろうし、これはもう、その都度に改善するしかないでしょ。


 砦のほうもね。壁を二重、三重にするんだってさ。矢をガンガン射る為の矢狭間をたくさん設けたし、しっかりした土台を作ってるから何をするのかって思ったら、ここにも大砲を設置するんだってさ。アラディンが耳打ちしてくれたけど、矢狭間は将来的に小型化した銃を撃つ場所にするみたいね。


 砦の建設も進んで、長老からも兵隊が次々と送られてきてるんだ。その連中に色々と教えて引き継ぎをしてるんだけど、旧スラール王都から連絡が来たのよ。ニコの獣魔族の王国を認めるってね。ニコが領土として主張した場所は、魔族の再侵攻があれば最前線になるし、取っても維持できないって考えたのかしらね。カレドニアは欲張らずに良い判断をしたと思うよ。


 それで一度戻って来いって言われたんで、獣魔族の指揮はスレッジに任せて、私達は王都へ戻ったのよ。それで今後の方針を決める会議となったんだけどね。ランスローが私に真っ先に聞いてきたのよ。



 「アルマ殿、あなたの考えを聞かせてもらいたい」

 「なんで? 私は地位も軍団も持ってないんだけどね」

 「我々の軍の内力の技は、すべてアルマ殿から伝授して頂いた。クロヴィアは陥落の危機を救われたし、フォボスもアルマ殿には絶大な信頼を寄せている。正直なところ、アルマ殿がいなければフォボス領内を通る事は出来ないでしょう。それこそ、フォボスを占領しなければ」


 

 クロヴィアの姫様も頷いているし、フォボスから来た代表も頷いている。



 「分かったわよ。まずクロヴィアの軍勢はクロヴィア領地の治安維持。何よりもマース王国からアンデッド軍団が溢れ出さないか、監視をして欲しいわね。たぶん、大丈夫だと思うけど、念のためよ。それから一隊を出してもらって、この部隊にはニコの王国の治安維持をして欲しいの」

 「承知しましたわ、アルマ様」

 「カレドニアの軍勢は、内力に優れた者を5000人ほど選別してちょうだい。魔王討伐隊にするからね。残った部隊は、本国とエドリアル大陸のカレドニア領の治安維持。そして一隊を出してもらって、ニコの王国の治安維持をして欲しいの」

 「了解した。で、アルマ殿は?」


 私はニコの全軍とカレドニアの選抜部隊、合計一万を連れて魔王の領土を侵攻するのよ。ニコの部下の中には魔族の言葉を話せる者も多いので、敵対しない限り小型魔族は味方になるように説得する。そういうワケなので、カレドニアとクロヴィアには将来的に味方になった小型魔族達を差別しないように、意識を改革して欲しい。先日の砦戦で分かったけど普通の人間では敵わないくらい小型でも魔族は強いのだからね。



 「アルマ、俺達も連れていってくれるんだろうな?」



 カレドニアでも1・2を争う剛勇の猛将ガレスが私に尋ねてくる。こいつってばランスローが殿をつけてもクロヴィアの姫様が様をつけても、変わらずに私を呼び捨てにするんだよな。別にいいけどさ。



 「勿論よ! こっちの治安維持軍の指揮をする者と、本国の指揮をする者以外は指揮官クラスでも連れて行くわ。強い奴は多い方が良いのだからね」



 そう言うと、その場でアーサーが指揮官として残される事に決まってしまった。本人は行きたかったらしいけど、将軍としての責務から決断したらしい。こういう人って、いつも貧乏くじか、陽の当らない裏方仕事で苦労するんだよね。なんか生暖かい目で見守っちゃうよね。

 そして会議の間、黙っていたニコが終了後に話しかけてきた。ニコの軍団だけが重い負担を背負わされるのが不満らしい。


 「なぁ、先生。俺の軍団は全員行かなきゃダメなのか?」

 「アンタの配下が一番強いのよ。それに新興国家なんだから、自分達の力を周辺国家に示して見せなきゃダメでしょうが。それによ。もし、魔王の討伐が上手くいって小型魔族達も懐柔できたら、ニコに魔王の領土を全部あげてもいいのよ?」

 「本当か!?」

 「その代わり、こっちの領土はフォボスに譲りなさい」

 「だけどよ~、それ、クロヴィアやカレドニアが飲むのか? 先生の一存で決めていいのかよ?」

 「ニコの領土にするって言った土地だって、魔王との最前線になるから他の国は放棄したのよ? 魔王の直属領地なんて、何が出るか分からないし、魔王を滅ぼしたって統治するのは苦労するわよ。そんな土地を欲しがるはずないでしょ!」

 「そっかぁ……、じゃあ、魔王を倒したらもらうぜ! 勿論、その時は今の約束してる土地は返すぜ。俺の領土で魔族も人間も全てが仲良く暮らせる国をつくるんだ!」



 こいつってば、本当に大物になってきたわね。でも単純な奴だから、本当に実現しちゃいそうだね。後世の歴史では、ウチの子供達よりもニコのほうが英雄として語られてるかもしれないねぇ


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