百二話
アラディンと共に、砦の壁に向かったんだけどね。ルージュと獣魔族達は、壁の前で陣形を組んで魔族軍を待ち構えてたのよ。
「壁の上から矢を射れば、こちらが有利だと言うのに!」
アラディンが舌打ちしながら言う。壁にはまだ頑丈な門扉を取り付けてないからね。ルージュは突破されてしまう事を恐れたんだと思うのよ。そうアラディンに指摘したんだけどね。
「だとしても、壁の内側で陣を敷けばいいんだよ。壁を背にしても半包囲されるじゃないか」
「だったら、その失敗は今から取り返せば良いのよ。アラディンは長老の兵を指揮して大砲を撃つ準備をしなさい。私はカレドニアの5000に指示を与えるから!」
「わかった!!」
アラディンは頷くと大砲の準備をする為に走っていった。カレドニア兵は、さすがに私達と激戦を共にしただけあって、準備が出来た者から整列して指示を待っていたの。
この場には2000の兵が待機していたので、それを半分に分けてシードとサラに預ける事にしたのよ。シード隊は壁の上に配置して弓で遠距離攻撃。ルージュ隊の支援攻撃をさせるわ。サラ隊は山肌に作った配置場所から魔族を攻撃、アラディンの大砲部隊の準備が出来て以降は、連携して攻撃するように指示を出したの。
カレドニア兵の残り3000だけど、準備が整って集まり次第、500名の部隊を三隊編成させるわ。役割はシード隊、サラ隊、アラディン隊への補給。それと必要であれば補充、交代要員も兼ねさせるつもりなの。
あとの1500はルージュ隊の後詰めを任せるつもり。これらの編成はスレッジに任せたのよ。私は獣魔族に被害が出ないように、ルージュに合流するつもりだったんだけどさ。スレッジが言うのよ。
「姐さん、あんたは我々の指揮をしてくれよ!」
「え~!? 最前線で戦う方がいいと思うんだけどなぁ……」
「アラディンから姐さん宛に、大砲を撃つには時間がかかるって言ってきてるんだよ。それについて、俺は何をどう指示すりゃいいんだよ? 各自に任せるってお任せしちゃっていいのか?」
「あぁ、それでいいんじゃないかな」
「そうかぁ? いや、それは俺でもマズイって思うんだ」
スレッジが、あまりにもシツコイから仕方ない、私は後方で指揮をする事にしたよ。とか言っても軍団同士のぶつかり合いって意外と経験ないんだけどなぁ。カレドニア軍の指揮官を一人くらい連れてくれば良かったのだろうか?
「シード隊、配置につきました!」
「サラ隊、配置につきました!」
うん、よし。とりあえず、これで最低限の応戦準備はできたのかな。
「オッケー、それじゃあサラ隊はシード隊に比べて敵に近いからね。敵まで50メートルの距離になったら攻撃開始。シード隊も同じだよ。ルージュの隊を誤射しないように、若干遠くを狙って射るんだよ」
「サラ隊より伝令! 敵の数は、およそ5万!」
「こっちは実働で6000~7000ってとこか。10倍弱じゃねぇか。姐さん、いきなりピンチだぜ!」
スレッジが笑ってる。コイツってば図太いよね。たぶん、どんな負け戦になろうと自分だけは生きて帰る自信があるんだろうなぁ。抜け目ない奴だしね。でも、下手に青くなってオタオタされるよりは、遥かにマシってもんよ。
「伝令、夜でろくに見えないのに敵の数を5万と判断したのは何故?」
「魔族軍は松明を持って進軍してます。恐らくは我々が砦を築いてる事に気がついてないと思われます。その松明の数から5万と判断しました」
「おい、こっちも作業の為に、火をつけてなかったか?」
「最初に敵を発見したときに、即消しました。向こうが我々に気がついていれば、同じように消すと思うのですが……」
「マズイな。こっちも敵から見えそうな奴は消せ!!」
スレッジが待機してるカレドニア兵に指示を出していく。
「敵の構成とか見えた?」
「申し訳ありません。松明を持って進軍してると言っても遠くなので、そこまでは……」
「敵の位置は?」
「発見したのは坂の手前ですね。今頃は登り始めてるかもしれません」
そうだとすると、こっちは傾斜がキツイ分、下から頂上まで500メートルってとこか。私達に気がついてないんだとしたら、ゆっくり登ってくるよね。
「オッケー、伝令。サラ隊に伝えて頂戴。さっき補給部隊500を送ったんだけど、ありったけの矢を届けたら補給隊も攻撃に加わる事。魔族軍の先頭が砦の存在に気がついたら騒ぎ出すでしょうから、それを合図に攻撃開始。矢が尽きるまで撃って撃って撃ちまくりなさい!」
「了解!」
「姐さん、敵に見つかりそうな松明は消しましたぜ」
「お疲れさん。スレッジ、伝令を出したいのよ」
「じゃあ、私の部下を使ってください」
スレッジの部下が来たので、早速伝令を頼んだわよ。一つはルージュ隊で壁の内側へ撤退。門扉が無いから敵は、そこを目指して雪崩れ込んでくると思うけど、一度に大勢は通れないから、そこを攻撃して各個撃破するように伝えたわ。
もう一つはシード隊で、門扉をつけてないとはいえ、壁はオーガーやトロールを想定して高く厚く積み上げてあるわけよ。だから、敵から見えないように身体を伏せて待機。砦に気がついても私達が見えなければ、敵は警戒しつつゆっくりと近寄ってくると思うので、最大限に敵をひきつけたところで攻撃を開始するように伝えたのよ。
まぁ少々突破されたところで、中にはルージュ隊が待ち受けてるしね。安心してやってちょうだいってなもんよ。




