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十話

 途中で無法者に絡まれたけれど、私は無事にアルコンにやってきた。

 商業都市っていうだけあって活気のある町だと思う。というか、ずっと村にいたから、人が多すぎて落ち着かないくらいだ。この1年半で私もすっかり田舎者か。

 

 まずは仕事を見つけないとね。あと寝泊りする場所も確保しないとな~

 どこかのお金持ちの家で住み込みのメイドさんなんて出来れば嬉しいんだよね。

 衣食住を確保できるでしょ?


 そうだ。冒険者ギルドに入るのも手だな。登録だけしておくか。

 町の衛兵にギルドの場所を聞けばいいか。


 「冒険者ギルドか。教えるのは構わないが、お嬢さんはどうして抜き身の剣を持っているんだね?」


 はて、どうしたものか?

 

 「実は私、両親と旅をしてたのですが滞在してた村が何者かに襲われて壊滅したのです」

 「なんだと!? どこの村だ!?」

 「ここから南へ行って裏街道の方から獣道を入っていくとあります」

 「そんな場所に村があったかな?ここから南へ行っても港町フォースティンしか無いんだがな」


 衛兵は難しい顔して考えている。多分、村があったかどうか思い出そうとしてるんだろうけど、隠れ里だもん。多分知らないんだよ、きっと衛兵は全員知らないだろうね。  


 「私は地下室に隠れることで生き延びたのです。落ちていた武器を護身用として持って歩いてました。それがこの剣です。お金も無く、身寄りもなく、冒険者として生きていくしかないのです」


 だから早く冒険者ギルドの場所を教えてよ。


 「それは気の毒になぁ。今日は私の知り合いの宿屋へ泊まりなさい。宿泊費については軍の方で出してくれるから心配はいらない」

 「ですが、それは申し訳ないというか」

 「気にしなくていい。我々の知らない村があった事、そしてその村が壊滅した事。これは大きな事件だ。それを通報してくれた礼だよ。明日、詰め所で事情を聞かせてくれ。それと村の詳しい位置もね」

 「分かりました」


 衛兵のおじさんは、私を宿屋へ案内すると料金は詰め所へ請求するように言って去った。

 うん、初日はラッキーだったかもしれない。

 その晩は、お腹いっぱいに御飯を食べて寝た。次にいつ食べれるか分からないからね!


 翌朝、衛兵のおじさんと一緒に詰め所に行って事情を話した。

 ただ村の場所については衛兵達は首をひねるばかりで、村があったとは信じられないらしい。

 裏街道から獣道の入り口まで案内を申し出て一緒に行くことにした。

 宿の礼は、きっちりやるんだぜ!ですわよ。


 衛兵5名と私の合計6人で再び村へと向かったけれど、私は獣道の入り口で2人の衛兵と共に待機することになった。精神的に厳しいだろうと考慮してくれたみたいだ。

 2名の衛兵を残してくれたのは、女一人じゃ物騒だから、らしい。

 アルコンへ行く途中に絡まれたもんね。

 裏街道って、あんな奴がゴロゴロしてるのかな?

 

 しばらく待つと調査に行った衛兵達が青い顔して戻ってきた。

 

 「これは俺達の手に余る。襲撃したのは、たぶん魔物達だ。倒壊した建物に凄い爪痕が残ってた」

 「俺は、こんなのを見つけたんだ」


 皆でそれを見ると、一本のロングソードだったんだけど剣身に牙の跡がついてた。牙の跡から考えると、この噛み付いた奴は相当に大きな魔物らしい。

 

 「もう村を滅ぼした魔物達はいないようだが早く戻って報告しよう」

 「あぁ、それがいい。スラールが滅びた時は遠い異国の事だと思って実感が無かったが、よもやこれほど近くの村で、こんな事件があったとはな」

 「お嬢さん、あんたは運がいい!これほどの事件に出会って生き延びたんだからな」


 ああ、私もそう思うよ。でも、運がいいんじゃなくて、命をかけて逃がしてくれた人のおかげなんだけどね。


 「上層部には生き残りがいた事を報告しても、それ以外には黙っていた方が良い気がする」

 「お嬢さん、色々と聞きたい事もあるので、しばらく町に滞在してもらえないだろうか?」

 「ええ、旅を続けるにしても、お金も持ち物も、あの騒ぎで無くなってしまいましたし、アルコンで働こうと思ってましたから構いませんわ」

 「ありがたい。町への滞在費は我々の詰め所で出そう。仕事を探すなら探して構わないが、どこで働くのかは教えてくれ」

 

 アルコンでの滞在費は詰め所で持ってくれるってさ。

 あとは仕事を探さなきゃ。

 お金を貯めて出産費用を稼ぐ。

 それと産後は、しばらく動けないだろうから生活費も稼ぐ。

 魔王を倒す第一歩、それは仕事を探すことと見つけたり!


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