第4話
少し短いかもしれません。
暗い深夜の町を走り始めて十分ほど。
僕の前を走り続ける黒猫は迷いなく一度も立ち止まることもせず、どこかに向かって駆けていきます。
いったい何処に向かっているんだ!?
無いはずの心臓が激しく脈打つ感覚がします。
不安と期待。前を走る黒猫を追いかけながら、その二つの感情が胸を圧迫します。
突然の事故。
家族との別れ。
幽霊となってしまった自分。
食べることのできない餃子。
黒猫。
もう、頭の中がぐちゃぐちゃで何がなんだか解りません。
ある日突然幽霊になりました。
びっくりな展開です。僕の好きなオタクジャンルの中だったらありきたりな展開ですが、現実に自分の身に起こると途方に暮れてしまいました。物語にでてくる幽霊と違って何もすることが出来ず、ただ其処に居るだけ。歯痒く思ったのも一度や二度じゃありません。
何も出来ず、ただ過ぎていく一日。積み重なっていく日数。
もうたくさんだ!!
そんな時に現れた不思議な黒猫。
何か……。今のこの現状を変える何かを見つけることができるかもしれない。
僕はその可能性に縋るように、猫を追いかけます。少しでも前を走る猫から意識をそらせば、この夜の暗闇に紛れて見失ってしまいそうになるのを必死に目を凝らして。
生前こんなに必死に走った事はなかったなぁ……。と思いながら。
走って。
走って。
走って。
着いた先は丁度僕の住む町と隣町の中間地点にある土手でした。真ん中を流れる川のすぐ向こう側からはもう隣の県です。
久しぶりに来た土手の様子は僕の記憶の中にある風景と違っていました。まず土手の道はアスファルトで舗装されてあり、ついで斜面の少し手前にはガードレール。そして、土手の斜面では遊ばないようにと注意書きされた看板が一つ。
僕が小さかった頃は土手の道は剥き出しの地面で、斜面では段ボールをソリにして滑り下りて遊んだりしたんですが、この看板を見る限り、今はそういう遊びをする子達は居ないのでしょう。面白いんだけどなぁ……。残念でなりません。
ああ。そういえば昔、皆が段ボールを使って斜面を滑り降りてるのに一人プラスチックでできたソリを持ち込んだ子がいたっけ。ええと、そうだ。ユウジ君だ。当時、いかに斜面を早く滑り下りるかを競い合っていた僕達は彼の持ち込んだ秘密兵器に度肝を抜かれました。彼の持ち込んだソリは僕たちの段ボールの二倍……いや、三倍は早かった。彼は瞬く間に英雄になり皆から持てはやされました。皆が口々に「ユウジ君スゴイ!!」と言い、ユウジ君もまんざらじゃなそうに片手を上げていたのを覚えています。今思い返せば、これがいけなかった。人間とは調子にのりやすい生き物。ほどほどで止めておけばいいものを、もっともっと。と際限なく望んでしまう性。ましてや子供。その湧き上がる衝動を抑えることなど出来るはずも無く、
「次はもっと早く滑ってみせる」と、豪語したユウジ君は息を巻きながら斜面から距離をとり、全速力で斜面に向かって走りだしました。そして斜面の境い目ギリギリで脇に抱えていたソリに頭から飛び乗り、凄まじいスピードで斜面を滑り下りて行きます。間違いなく最速。彼が英雄になった瞬間でした。しかし英雄の最期とは古今東西哀しいものです。
ユウジ君もその例に漏れることなく、斜面を凄まじいスピードで滑り下りた後、彼のソリは止まることなく、斜面下の平らな部分をも駆け抜け、そのまま川に向かって飛び出して行きました。
頭からソリに飛び乗った為、足でブレーキをすることが叶わず起きた哀しい出来事でした。今でもユウジ君の「イヤァーー!?」という叫び声を鮮明に思い出せます。あれは子どもながらに、こうはなるまい。と思った出来事でした。
ああ、いまでもこの斜面を見るとあの時の出来事の光景が鮮明に浮かんできます。皆子供でした。キラキラ輝いてたなぁ。
はは。
あはははは……。
…………。
いや、そろそろ現実逃避は止めましょう。
右見て、左見て。
見渡す限り、目につくのは舗装された道と点々と立つ街路灯の小さな明かりのみです。
……黒猫さん何処に行ったの?
スミマセン。ヒロイン次回になってしまいました。
でも次は必ず登場します。本当に適当なことを書いてしまいすみませんでした。




