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第1話 遺品整理

 こんにちは第二の人生(?)を図らずとも歩き出してしまった佐藤博人です。

 

 さて火葬から一週間が経ちました。

 未だに成仏できません。すこし困っています。

 この一週間いろいろ試してみました。

 

 さようなら。と百回呟いてみる。

 意味がなかったです。

 

 両手を広げて、冥府の扉よ我の前に開け! と唱える。

 恥ずかしいだけでしたッ!


 心を空っぽにして慈愛の精神を持つ。

 そもそも慈愛ってなんでしょうか?


 まぁ、僕なりにいろいろ頑張ってみたんですが、結果は芳しくありません。

 はぁ、本当にどうしたものか……。


 そんな事を来る日も来る日も考えていた僕ですが、その考えは途中でぶった切られます。

 父によって。



 ある日曜日の朝、朝食の席で父が重々しく言いました。今日、ヒロの住んでいたところの遺品整理に行くから皆も来なさい。と。

 

 遺品整理……だと!?


 僕こと佐藤博人は都会の大学に入学したため実家を出て、都会のボロアパートで一人暮らしをしながら大学に通う青年でした。いくらボロアパートとはいえ、住んでた当人がこの世を去っているのです。維持費もバカにならないし、遺品整理をして解約するのは普通のことなんですが……。だが遺品整理だと!? あ、あそこには……。

 僕が恐れおののいているうちに皆は準備をして父の運転する車に乗り込んで行きます。僕も慌てて乗り込みます。

 

 


 僕が住んでいたアパートは〇〇区の一番端っこの△△町という少しさびれた感じの町の裏道の入り組んだところにあるんですが、父の運転する車はなんなくそこにたどり着いてしまいました。

 父は事前に受け取っていらしく、合いかぎを使って僕の部屋のドアをあけます。

そのままパチンと部屋の明かりのスイッチを入れると、靴を脱いで中に入っていきます。

家族が全員そんなに大きくもない1DKの部屋に入り、僕もそれに続くように久しぶりの第二の我が家に入ります。

 ……当たり前ですが、部屋は僕が出たその日のままでした。

僕は、朝はぎりぎりまで寝ているタイプの人間だったので、慌てて飛び起きた布団はベッドからずり落ちていて、衣装ダンスはこれまた引き出しが引き出されたまま放置。食生活の乱れを主張するかのように、部屋の片隅には未開封のカップラーメンがピラミッド状に積み重ねてあり、…全てがそのまんまでした。

 

 ぐすん。

 

 母が鼻をすすります。どうやら泣けてきたみたいです。それがこの惨状を見ての悲しみでないことを祈るばかりです。

 父は気を取り直して、母と共に部屋を片づけていきます。僕の洋服を段ボールにしまったり、粗大ごみなども業者に引き渡しやすいように一か所にまとめていきます。

弟と妹はどうやら掃除担当のようです。家具や荷物をどかして何もなくなったところを拭きあげたり、掃き掃除をしています。

 そんな中、僕の心は不安と絶望で淀んでいきます。

 

 ま・ず・い。


 まずい。これはまずい。


 両親はテキパキと僕の部屋を片付けて荷物を運び出していきます。弟と妹も見習うかのようにテキパキとした動きで部屋を掃除していきます。

 そしてついに禁断の扉は開かれてしまいました。

 

 「なんだ? これはやたらと重いな…」


 そう言って父がベッドの上の収納スペースから取り出したのは一つの大きな段ボール。


 ああ、ついにこの時が来てしまったか……。と僕は片手で顔を覆って天を仰ぎます。


 そして開けられる段ボール。


 「……これは」と父。

 「うわー…」と妹。

 「兄さん…」と弟。

 ぐすん。と母。


 入っていたのは所謂ギャルゲーです。ええ、それもかなりの重量を感じてしまうくらい段ボールぎっちりのゲームソフトの山です。

 なんとも言えない表情の父とドン引きの妹・弟。そして泣き出してしまった母。今回の涙は明らかにこの惨状を見ての悲しみの涙ですよね……。ごめんなさい。

 一人忸怩たる思いで項垂れていると、

 「まぁ、さ。でもなんかお兄ちゃんっぽいよね?」と突然妹がのたまいます。

 

 はい?

 

 「ほら、これなんか見てよ『神社恋愛☆巫女服彼女たち戦争』って私、いま思い出したんだけど、今年の元旦神社でお兄ちゃんが巫女さんとすれ違ったとき、「ほぅ」とか言ってたんだよね。きっとあれは、このソフトの影響だよ! いや、もしかしたら逆かな? あの日影響を受けてこの作品に走ったのかも……」


 え? チョットまッッ


 「……そうだね。僕もなんか思い出したよ。だとしたら……。ほら、やっぱりあった『モテ期セカンドレボリューション』前に兄さんがモテ期についてやたらと僕に説明してきたことがあったんだよね」


 そしてついにクスクスと笑いだす父と母。


 もう止めてください……。これ以上は耐えられないです…。せっかく心残りなんか無かったのにこのゲームソフトの山が僕の心残りになってしまいそうです……。

 でも一人、羞恥と悲しみの涙を流す僕をよそに僕の家族たちは和やかに僕の思い出話を続けます。

 ああ、遺品整理。それは時として死者に鞭打つ過酷なイベントになるものなんだと……。死んで魂をもって実感致しました。


 みなさん! よくネットで「俺が死んだらパソコンのハードディスクを破壊してくれ」とかいうのを見かけますが、それだけじゃ全然だめみたいですよ!!


主人公はオタクなんですが、物語に直接関係したりはしません。

ただ、すこし重たいシーンでもこの主人公の趣味がクッションになってくれればと思っての設定です。

どうか生暖かく見守ってやってください。

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