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第14話

「……おい、それはどういうことだ?」


と言って声をかけてきたのは大きな鍋を手に持ったイケメンさんです。

というより鍋? え?料理してたの? 幽霊なのに?

どうでもいいですけど、なぜイケメンさんが料理をすると爽やかに見えるんでしょうか? モテる男が料理をするとさらにモテるのってずるいと思うんです。

……申し訳ございません。私情が入りました。


「あ、リンちゃん!」

と、気づいたアカリちゃんが「きいてきいて、イリヤがねぇ〜」と近寄ります。

「リンちゃんじゃねぇ。鈴屋だ」ボソっと呟きイケメンさん、もといスズヤさんが手に持っていた鍋を卓に置き、アカリちゃんに向き直ります。

「で、さっき不穏な単語が聞こえたんだが、 なんだったんだ?」

「ふっふっふっ。聞きたい? やっぱり聞きたい!?」

「……」


あ、いま絶対イラっとしてます。口もとが引きつり目が半眼になってます。


「……ああ。教えてくれ」

「どうしよっかなー? どうしよっかなー?」

「…………」

「やっぱり教えてあげないー!」


ガシッ。



可愛く、あざとく、素敵な笑顔で情報の提供を拒むアカリちゃんの頭をスズヤさんはおもっいっきり掴みあげ、ギリギリと締め上げ……って、ええ!?


「うっ。り、リンちゃん? だ、だめだよ! 皆んながいるところでこんなッ!?」

「黙れ」


メキメキ……。


「もう、リンちゃんのせっかちさん!

って、あれ? 痛い? え? リンちゃん、霊力込めてるの!? 」

「俺は、黙れと言ったぞ?」

「はぅ! 痛いよぉ〜。リンちゃんちょっと待って!?」

「……アカリ?」


目の前で繰り広げられる喜劇なのか、恐怖劇なのかに僕が恐れおののいていると、スズヤさんがとびっきり優しい声でアカリちゃんの名前を呼びます。

どうしてでしょう? 優しい声の筈なのに、感じる恐怖は加速していく一方です。


「……はい」


アイアンクローをキメられているアカリちゃんもその声にガチの雰囲気を感じ取ったのか、一気に静かになります。


「俺の質問に答えろ」

「はい」

「さっき言っていたイリヤがどうのって話はなんだ?」

「イリヤに彼氏ができたと思われます。男性と手を繋いで真っ赤な顔をしていたので、これはもう間違いないと思った次第です」

「な……んだ、と?」


スズヤさんが一歩後ろによろめきます。アイアンクローを継続したまま。


「そんな、イリヤが…まさか!? い、いや。

………相手の男性っていうのはどこのどいつだ!?」


動揺を引きずったままスズヤさんがアカリちゃんに噛み付くように質問をします。

アイアンクローをされた状態で視覚を失っている状態のはずなのに、アカリちゃんがヨロヨロと僕を指し示します。

「「な……んだ、と?」」


僕とスズヤさんが同時に呻きます。

スズヤさんはまるで悪夢が現実になったかのような表情で。

僕は、唐突に巻き込まれたこの現実に。


「「馬鹿な……ッ!?」」


二人して呻きあげます。


「って、なにテメェまで驚愕してやがる!?」


そりゃ驚愕しますよ!?


パッと締め上げていたアカリちゃんの頭を解放するとスズヤさんは此方に向かってすごい貌で歩いてきます。怖いです!

スズヤさんが一歩こちらに進めば僕は一歩後ろに後退します。

でもいつまでも下がり続けることはできずに壁際まで追い詰められてしまいます。

そしてついには胸ぐらを掴まれ……あわわわ!


「お前! 名前は!?」


ヒィ!


「ヒロトです!?」

「なに!? お前なんぞ〇〇で十分だ!!」


いきなり伏字!?


「おい!〇〇!! お前はイリヤのなんだ!? ま、まさか本当に彼氏とでも言うつもじゃねぇだろうなッ!?」

「も、もちろん」

「なんだとッ!?」


いや、最後まで聞いてください!?


「ももももも、もちろん違いますよッ!? 僕、彼氏、違いますッ!?」

「ならイリヤを騙したのかッ!?」


許せねぇぜ! と息巻くスズヤさんが手をこちらに伸ばしてきます。

こ、これは……!?

脳裏をかすめるのは先ほどのアイアンクロー。……怖すぎるッ!?

元はと言えばアカリちゃんから始まったこの誤解。ならアカリちゃんに納めてもらうしかないッ!

そう思ってスズヤさんの後ろにいるアカリちゃんに視線を飛ばすと、


「えぅ……痛かったよぉ~。痛かったよぉ~」


と、えぐえぐと泣いてるアカリちゃん。って、おいぃぃ!?


「おい、てめえ話し聞いてんのか!?」

「も、もちろん聞いております。はい!」

「いいか? 先に一つだけ言っておくぞ。イリヤは優しいんだ」

「そ、そうですね! 優しい人ですよね!」

「てめえ、なに分かった風なこと言ってやがる!?」

「ヒィ!」


と、ここで壁ドン。……もうやだぁ~。誰か助けてください!?

僕がそう悲鳴を上げる寸前、


「はいはい。そこまでだケン」


救世主が登場したのです。

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