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第10話

「おおおぉぉおおお!!」

最初の一歩を見事にスカした僕は真っ逆さまに白い靄の中を下に落下していきます。

途中で体勢が変わり、あるはずのない内臓が持ち上がる感覚がします。非常に恐ろしいです! くっ、気絶することさえできないことがこんなに恨めしいだなんて!!


 神様のばかやろぅ! などと心の中で叫んでいると、イリヤさんが声をかけてきました。


「大丈夫ですよ! 私が付いてますから!!」


 ええ、僕の心の拠り所は既にイリヤさんと繋いだこの手だけです。って、あれ? 今ふと気付きましたが、僕ずっとイリヤさんと手を繋いだままなんですね。おや? これって案外最高なんじゃないでしょうか?

 ぎゅっと手を握り締めると、それに応えるようにイリヤさんも微笑みながら握り返してきてくれます。

 ふむ。

 悪くない……。いや、これは最高だ。

 イリヤさんの手はいかにも女の子らしい小ささと柔らかさを兼ね備えた素晴らしい手です。その手をずっと握り締めていることができるなんて! 神様ごめんなさい。ありがとうございます!!

 すると不思議なことに周りを見回す余裕もでてくるではありませんか!

 改めて落下しながら白い靄の中を見回してみると、僕の目に飛び込んでくるのは、白い靄の中に浮かぶ――


 扉? 


「なんで扉が!?」



 イリヤさんに手を引かれ落下するなか、僕の目に飛び込んでくるのは、白い靄の中に浮かぶ幾つもの扉です。

 扉にはいろいろな種類がありました。頑丈そうな木で出来ている扉。石で出来ている扉。メルヘンチックな扉。

形も大きさもバラバラな幾つもの扉が白い靄の中を浮かんでいて、僕とイリヤさんはその間を下に下にと落下していきます。


「あの扉は他の幽霊さんたちのコミュニティーへの入り口なんですよ」

「コ、コミュニティー?」

「はい。この白い靄の中……ここは俗に言う霊界なんです。

幽霊といっても私たちの目的や在りかたは様々ですから。だから自分に合うコミュニティーに分かれてそれぞれ活動しているんです」


 唐突に始まった幽霊社会の講義にポカンとした顔でイリヤさんを見つめます。


「もちろん他のコミュニティーとも交流はありますよ? でもその扉をくぐって他のコミュニティーに行くにはそこのコミュニティーに所属している人から招待を受けないと入ることが出来ないんです」

「じゃあ、僕たちが今向かってる所って……」

「はい。私たちのコミュニティーです。

と、そろそろ着きますよ」



たどり着いたのは一つの白い扉の前です。金色のドアノブと曇り硝子のはめ込まれた扉の前に立つと、イリヤさんは繋いでいた手を離してドアノブに手をかけて、クルリと振り返り、

「ようこそ! 私たちのコミュニティー『HOPE』へ!!」


カチャリ。


そして満面の笑みと一緒に扉は開かれました。



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