第9話
ここから物語の都合のにより、死者や幽霊、その他いろいろなものの扱いが独特のものになっていきます。が、それらは全て作り話です。僕自身にそれらを軽んじるつもりは一切ないことをご了承下さい。
成仏。
そう、イリヤさんが言った言葉が理解できるまで数秒時間がかかりました。
じょうぶつ……じょうぶつ……成仏!!
ハッ! となってイリヤさんを見つめます。
イリヤさんは一度僕に頷くと、話し始めてくれました。
「今日、私たちの仲間の一人が成仏するんです。昨日……ようやく条件が整ったので……」
そう言うイリヤさんはやっぱり少しだけ泣き出しそうな……でも嬉しそうな表情で僕に話します。
そんなイリヤさんを見つめながら二つ気になったことがあります。
一つはイリヤさんが最後に言ってた成仏の条件が整ったって言ってたことです。
成仏するには条件がいるということなんでしょうか? 裏を返せば、その条件を満たさないと成仏できない……?
そしてもう一つは、どうしてそんな憂いを帯びた表情をするのか……。
僕のそんな考えが表情にでたのかイリヤさんは、
「……ヒロさんは成仏ってなんだと思いますか?」
と、僕に質問してきました。
成仏とはなにか? 言われてふと思います。成仏とは一体全体何なんでしょうか? 何故、僕たち幽霊は成仏しなければならないのでしょうか?
成仏することによって僕たちは何処に行くんでしょうか? 天国? 地獄? それとも無に還るのでしょうか?
それとも。
それとも。
それとも……。
「ヒロさんは……」
思考の海に漕ぎ出した僕をイリヤさんが呼び戻します。
「輪廻転生という言葉をご存知ですか?」
……輪廻転生。
僕が生き甲斐にしていたゲームやアニメ、漫画やライトノベルによく出てくる設定ですね。
だいたいは主人公が英雄の生まれ変わりだったり、ラスボスと相打ちになった主人公が生まれ変わって幸せを掴んだりするアレですよね?
「生まれ変わるって解釈で大丈夫ですか? って、まさか!」
そこまで言って気づきます。
この話の流れ……成仏の先は転生……なのでしょうか?
僕は驚愕の表情でイリヤさんを見つめます。すると、イリヤさんはコクリと頷きました。
まじですか。僕たち生まれ変わっちゃうんですか!?
「もちろん全ての魂が生まれ変われるわけじゃありません」
「そうそう、罪を犯した魂は地獄に堕ちるしね」
ふむふむ……ってミラさん!? 今サラリと酷くおっかないことをおっしゃいませんでしたか!?
じ……地獄、本当にあっただなんて……。
自分の今までの人生と行いを振り返ってみます。はたして罪とはどこまでがセーフでどこからアウトなんでしょうか?
残念ながらお世辞にも僕は善人です! と言えないのが悲しいところです。ああ、こんなことなら家でギャルゲーばかりしてないで地域清掃のボランティアにでも参加しておくべきだったッ!
一人ガクガクと震える僕をイリヤさんは苦笑しながら、
「ヒロさんなら大丈夫ですよ。もし罪を犯したんだとしたら、その魂は死と同時に堕ちてしまいますから。
それに本当に地獄があるのかさえも私たちには分からないんです。私たちが分かっているのは罪を犯した魂は死と同時に、現れる鎖にがんじがらめにされて地面に引きずり込まれてしまうっていう事だけで、その先に本当に地獄があるのかは誰も知らないんです。
――って、暗い話になっちゃいましたね」
話、戻しますね。そう言ってイリヤさんは昏い話だったぶん、わざとらしくキリリとした表情を作り、話を再開しました。
うん。なんて言いますか、人差し指を胸の前に持ってくるポーズが大変可愛らしいです。
「それでここが重要なんですが、私たち幽霊が成仏して転生するとき、私たちに用意される来世は私たちの霊格によって決まるんです」
「霊格……?」
「はい。霊格が高い魂ほど生まれ変わった時に幸福な人生を歩みやすいんです。場合によっては前世の記憶を持ち越せたり、運命を自分に引き寄せたりできます」
いきなり始まった小難しい話に必死に耳を傾けます。
つまりイリヤさんが言うところによると、霊格が高ければ高いほど来世で幸せになれる確率が高くなる……そういうことなんでしょうか?
では霊格が高くなるとはなんなんでしょうか? 答えてくれたのはミラさんでした。
「霊格っていうのは、その人の魂がどれだけ他者に意識されているかによって決まるんだ。
沢山の人たちから意識されている魂は霊格が高くなり、逆に誰からも意識されていない魂は霊格が前者に比べると低い。
だから有名であればあるほど、その魂の霊格は高くなるんだ。
昔の王様の葬儀が大規模だったのも、もしかしたら王の霊格を上げるための処置だったのかもね」
「もちろん霊格は死後からでも上げることが可能……というより、基本的には死後から少しずつ上げていくのが一般的ですね。
そうやって自分の霊格を十分に上げた状態で成仏すれば、来世に託す願いを叶えやすくなります。
――と、少し話しが長くなっちゃいましたね。
さぁ、みんなも待ってますし、行きましょう。ミラさんお願いしますね!」
イリヤさんがそう言うとミラさんは出てきた時と同じ大人三人くらいが同時に通れそうな白い靄を作り出し、先に行くよ! と言い残しその靄に飛び込んでいきます。
「それじゃあ、私たちも行きましょう! ヒロさん手を貸してください。初めてだとたどり着けないんで私が案内しますね。途中で手を放すと迷子になっちゃいますから、絶ッッッ対に手を離さないでくださいね!」
イリヤさんはそう言って笑うと僕の手を引いて靄の方に向かいます。
果たしてこの先に何があるのか……。
僕は緊張した表情で靄に向けて一歩を踏み出しました。
「あ、落下しますよ」
「え? う、うわぁあぁあああ」
緊張の第一歩目をスカした僕は靄の中、笑うイリヤさんに手を引かれながら何処かに向かって落下していきます。
……できれば先に言っといて頂きたかった。落下しながらそんな風に思ってしまうのでした。
いかがでしたでしょうか? 少し話がややっこしくなってないか心配なところです。次回でもう少し詳しくキャラクターたちに説明してもらう予定です。
評価や感想、少しでも面白いかな? と思って頂ければお気に入り登録など、なんでも励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。(^^)




