表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

5,遠足日和 3

 なんで、なんで私はこの2人とこんな所にいるの?

 しかも…


 千尋は園内の小高い芝生の丘にいた。

 この動物園はかなり広い敷地の芝生が広がっていて、子ども達が遊び回るのにちょうど良い。

 彼女たちの居る場から下って少し離れた所にはビニールシートを広げた母子が居た。子どもの方はまだかなり幼く、よちよちと数歩歩くのがいっぱいいっぱいで、母親はそんな我が子を見てハラハラしている。端から見るととても微笑ましい光景であった。

 しかしながら、千尋が気になっているのはそこからさらに奥の方でぎゃあぎゃあと叫ぶ集団についてだ。

 みんなそれぞれに好き勝手やっているようで、ある者達は持参したボールで円陣バレーをしているし、またある者達はプロレスか何か格闘技でもしているようで、男子がまわりを囲んで騒いでいる。


 あれは高校生なんだろうか?

 16,7歳にもなって、よく恥ずかしげもなく騒げるものだ。


 千尋は内心バカにして彼らを見る。しかし、彼女にはそれ以上に不信感を抱く人間がいた。それは紛れもなく、彼女の後方で仰向けになり寝ころんでいる担任教師の小野寺その人だ。小野寺はかぶっていた青いキャップを顔に乗せすやすやと就寝しなすっている。

 体育座りをしていた千尋はチラッと後ろを向き、気持ちよさそうに寝ている小野寺を見た。

 その目はあきらかな非難の目で、整った顔から見せるそれは普通よりもすごみがあった。

 そんな彼女の顔を見た宮下は少しも顔を変えず、横目でずっと彼女を見ていた。

 宮下は千尋の左隣に居て、彼女から少し離れていた。というよりかは、3人とも微妙に距離があって、そこに気まずい空気が流れていた事は言うまでもないだろう。


 そもそもの原因は小野寺なのだ。小野寺さえあんなバカなことを言い出さなければ…。

 その時千尋はきちんと話を聞いていなかったが、後で佳奈子に聞くとこういう事だった。




「いいか、お前らよく聞け。どうせお前らのことだから文句をたれるやつがいるのはわかってたからな、俺がわざわざ考えてきてやったんだぞ?感謝しろ」


 小野寺はやる気のなさそうな声でそう言う。


「って、小野っち教師でしょ?あたりまえじゃないのさ〜」


 佳奈子があきれたように返す。しかしその顔にはほのかな笑みが宿っている。


「なにいってる。俺がわざわざ考えたんだぞ?これは勲章に値する価値がある」


 佳奈子は「はいはい」と気のない返事を返し、小野寺はそれを流した。


「で、どんなことかというとだなぁ、簡単だ、ジャンケンで決めよう」


 その言葉に生徒達は一瞬固まったが、すぐにザワザワしだす。


「静かにしろ。代表者2人がジャンケンしてだなぁ、1人が勝てば全員で仲良く動物観察。で

、もう1人が勝てば今日一日自由時間になる。な、簡単でいいだろ?」


 小野寺は意地悪そうに笑い、生徒達を見た。

 生徒達は非難の声を出したが、かまわずにさらに続けた。


「その代表者だけど、ちょうどよく2人組の係がいるからな、そいつらにジャンケンしてもらおう。ということだから、補助係の宮下と羽野は俺んとこ来い」


 そう言って千尋と宮下は前にでて、ジャンケンをさせられた。

 千尋が勝てば動物観察。

 宮下が勝てば自由時間。

 結果はお解りの通り、千尋の一発負けで自由時間となった。

 しかも小野寺はさらに2人に注文をつけた。


「俺、最近寝不足気味で眠いんだよなぁ。だからお前ら、あいつらがはめ外さないように監視してくんない?あと、他のクラスの担任にばれたらまたなんか嫌み言われっからその辺も見ててくれよ。じゃ、行くぞ」


 2人は半ば強制的に丘の方に連れて行かれ、小野寺はというと着くやいなやかぶっていた帽子を顔にのせて眠りだした。

 これでは一度や二度睨みつけたって仕方がない。



 千尋がため息をつき、小野寺から視線を外すと、ふいに宮下と目があった。

 千尋は自然な感じに目をそらしたが、宮下の方はそうではなかった。

 顔を下に向けたが、それでも宮下が視線を外さないのがわかる。

 しびれを切らした千尋は思いきって聞いた。


 「…何?」


 小野寺の人使いの荒さのせいで、宮下と2人きりになることが多い。そんな千尋は、最近彼にこんな質問ばかりしている気がする。

 いつもふとした時に、宮下が自分のことを見ているのに気付くのだ。

 無表情な顔で、ただでさえ人の心を読みとる能力に欠ける千尋には何を考えているのかさっぱりわからない。

 宮下は答えなかった。しかし視線は外さない。

 千尋は口ごもるしかなく。それから質問することはなかった。


 すーっと風が流れ、少しだけ見えるタンポポが揺れる。

 クラスメイトの騒ぐ声が遠くなった気がした。


 すると沈黙を破り、宮下が話し出した。


「羽野さん、今日かわいいね」


 思っても見ない言葉に千尋は思わず宮下の方を向いた。

 本人は気付いていなかったが、その顔は真っ赤で、宮下は初めて見る千尋の赤面に優しく笑いかけた。


「その顔もかわいい」


 あまりにも驚いて声が出ない。千尋は口を開いたまま固まった。

ぎゃー宮下くんたら大胆!!う〜ん;いまいちよくわからない少年ですね宮下くんは。気付くと暴走してしまうのでいつも頑張って止めてるんですけど、今回はやっちゃいました;でも、それが彼の魅力って事で…。(おぃ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ