2+1/2 温かい気持ち
「過ぎたことを思い出しても何も変わらないよ」
佳奈子はそう言うけれど、私はそう思わなかった。
だって、思い出すんじゃないの、思い出させられるんだもの。
今日は曇り。
何にもいいことなさそうな曇り。
微かに動く雲の姿を見て憂鬱になる。
千尋は一人、屋上にいた。
彼女以外の人の姿はなく、爽やかとは言えない風邪が彼女の肌に軽くなでつけるだけ。
千尋は自分の背よりもずいぶん高い柵に背中をよりかけて空を見ていた。
なんて嫌な空。
これまで何度も見てきた曇り空だけどこんなに酷い空はない。
「宮下。宮下なんだっけ?」
千尋はふと宮下の名前を思い出していた。
でも名簿すら見た覚えがないので、いくら考えても思い出すことなんてできなかった。
「はぁ〜」
自己嫌悪
クラスメイトの名前さえわからないなんて、やっぱり佳奈子の言う通り私ダメダメだ。
はっきりと記憶しているのは佳奈子の本名くらい。担任の先生の名前さえあやふやだ。
佳奈子の言うとおり友達なんていやしない。佳奈子以外に心なんて開けないもの。
でもそれじゃあダメだってわかってる。友達を作れないなんて人として終わってるもの。
それに
それにいつまでも佳奈子を煩わせるわけにもいかない。
私に手間がかかるせいか佳奈子はいつも私につきっきりで居てくれて。
本当は他の子達とだって遊びたいだろうし、一緒に行動したりしたいに決まってる。
知ってるのに。本当は頼りになる佳奈子は人気があるって。みんな佳奈子と仲良くしたがってるって。
優しい佳奈子を独り占めにして私バカみたい。
いつになく思い悩む千尋は今にも泣きそうだった。
たまにこのような状態になる千尋を佳奈子はいつもなだめていた。
それでも今のようにぶり返して鬱状態になる時がある。それは佳奈子もまだ千尋に出会う前の過去に原因があった。
それは佳奈子にしか話したことのない過去だった。それも佳奈子に話したのはごく浅いところで、もっと奥深く、千尋に突き刺さる過去があった。
「羽野さん」
ふいに男の声がして、空を見ていた顔を声のする方へやる。
特に表情をもった顔をしていたわけではないが、優しい顔をした宮下がそこに立っていた。
またこいつかと千尋は心の中で思ったが、彼の顔を見た瞬間、自己嫌悪で押しつぶされそうだった心がスッと穏やかに戻った気がした。
「…どうしたの?」
千尋は不思議な気分で、自分でもなんでだかわからないけれど自然に笑みがこぼれた。
その笑顔は控えめな笑顔だったが、人に響く、そんな笑顔だった。
宮下は初めて見た千尋の笑顔に少し驚いたが、すぐに優しい笑顔を返した。
「仕事だってさ、担任が手伝えって」
何故だか千尋は温かい気持ちになっていた。
間違えて4話目を先に投稿してしまったので、無理矢理つめこんじゃいました(汗汗
しかも前話のレイアウトも間違ってしまったし最悪です。
過去にあったことを思い出して鬱な千尋が、ふと宮下くんをを見て温かい気持ちになったという微妙な話です(・」・;




