魔界から来た“魔法少女”〜序章〜
「いきなり叩いたり、蹴ったりする人はキライだ」
12、3歳程の一昔前の少女漫画のようなボリュームを持った巻き毛を鎖骨の少し上まで伸ばしたセミロングの金の髪の少女
魔法行使で展開される“セイル”は出現しておらず、あちら側の魔法機構で送り出された少女は空を滑空し、既に魔法を行使した証“セイル”を展開している『叩いたり、蹴ったり』をした魔法行使者に自分の意思を伝える。
「贈与品の無碍な改造はされてない様ですね」
夕陽から夜空に切り替わる黄昏の空間がひび割れ
そこから一人の少女の“現界”を確認した“狙撃者”は答える
“人世界“考案の“魔界”に贈られた装置は無事に起動できた様子だった
人世界で開発された”交流“用に魔界に送られた機械
スペックそのままであれば先ほどの魔砲は命中しない
ある意味魔界の誠実さを信用した“残光を引く息の長い一射”を放っていた少女
最初から出現者の目の前を自身の“魔杖を供えたのライフル”の撃ちだした魔法光が横切る計算。
言い訳としては出現空間へたまたま重なった“試し撃ち“
カタログスペックが違いを起こしていたら“当たったかもしれない”
特定の誰かを狙ったわけではない狙撃手は
自身は人世界の門番であるかの様な高圧的な物言いをする
「人世界の人は礼儀を知らないの?」
“魔法少女”である筈の金の髪の少女は未だに滑空のみで魔力展開すらしない
狙撃手が本気であれば撃ち落とすことも容易な状態であっても護りの構えすらとらない。
「“ごめんなさい”でしょ?」
そんな少女が狙撃手の魔法少女に礼儀と謝罪の仕方を説く
「人以外のものを打ち出せるなら質量兵器と変わりませんので」
飄々とした態度で切り返す。
真っ当な意見を説くがそもそも交流目的の“外交”であるので見当違いだろう
「ルート外の“魔道の構築”魔界でもすっごいマナ使うからね!?」
…それに狙ってやるのであれば自分を射出後に装置を分解改造するだろうし
“魔界”にはまだ人世界の機械の精密さは出せない。
…それと
「暴力は“魔界の歓迎”の仕方と学んでいましたが違いましたか?」
“狙撃手”は再度挑発する
“魔杖の供えられたライフル”を構え直し
”一戦“をアピールする強いストレスを抱えた“魔法少女”ではあるが…
彼女は“セイル”を展開しているものの彼女の髪に“魔法色”の発露は認められず
亜麻色の地毛が魔導器の“空戦モード”での飛行の風圧を受けて後方に靡いている。
彼女の所作もまた”魔法少女らしくない“
魔闘衣を召喚し、髪を”魔法色“に染め上げ、“セイル”を背に展開して自在に空戦を行う魔法少女が普遍的な“近代の魔法少女”
そこにあってに彼女はイレギュラーな“魔法少女”である。
モデル体型といえば聞こえがいいが身長が高く痩せすぎた彼女“平河あかり”
彼女は”変身系“の魔法少女だった。
その世界のプロフェッショナルになれる“可能性”の魔法少女
困っている人のお手伝い、なりたい自分を導く奇跡、大人になりたい子供達の夢の『願い』を体現した魔法少女は今の世界に居場所はなかった。
人と魔の混成世界
とある事件をきっかけに人と魔は共に歩む道を切り拓いた。
人と魔で争いは起きず人と魔は見事に技術を吸収し合ってみせる。
“魔界”
新たな『世界』、新たな『大陸』、新たな『資源』
魔界の資源開発、未知の物質の発見や二世代前の引き取り処分手数料を取られる様な電化製品が新品以上の高値で取引される未開拓のブルーオーシャン!!
…ではあるがそれに伴っての偽の投資話も溢れ出す
一部に魔法少女に許されていた魔“法”の一部“ルール”の解明は互いの世界が混じり合う混乱よりも訪れた新たな刺激に浮かれた現地民による混乱の方が大きかった。
…新たな”暴力“が生まれた。
結果的に信用と信頼については“我々”の世界以上にナイーブな状態に陥っている。
”変身“の魔法少女は結果的に身元不明、信用も信頼も出来ない他人が“変身”してお手伝いに来ても門前払いをされるそんな世界になってしまっている。
魔法少女としてアイデンティティを奪われてなお”平河あかり“は”魔法少女“であろうとした
主に“魔導器”を使った公安を目的とした一般魔法行使者として
一般魔法行使者達よりもマナの効率は段違いに良いもののそれだけであり
”魔導器“を使用して魔法を行使しなければ“戦士”系の魔法少女との”魔力行使“の勝負にもならない
魔法少女でありながら“準魔法少女級”
一般人であれば最高峰の評価は彼女を貶めている
…であっても彼女は
”No.持ち“128
魔法を行使して活躍すれば報奨金を得られる資格持ち
本来戦闘に向かない魔法少女は努力で今の評価を得ている
そんな彼女の転機は戦闘技法を納めた後だった
認識阻害も併せて併発する”変身“系魔法少女は
スパイ行為であれば無制限に重用出来る人材でもあった。
魔界の偵察と称してある時は家電販売の店員として、ある時は魔界初のテレビ番組のクルーとして人世界以上に感謝と尊敬を集め、彼女本来の『願い』は魔界の人々によって満たされていた
しかし彼女は自分を過小評価している人世界から魔界に対してのスパイ。
彼女が十分に大人であってそれを職業として選べていたのなら受容できたのかもしれない
夢見がちな少女にのみ許された”魔法少女“という奇跡と魔法が一般常識となった現代とのギャップ、ノーとはいえない自身の弱さに彼女はすり潰されていった。
…さらに
8歳から“変身系”の魔法少女の平河あかりは“変身後“へ実年齢が迫りつつある
魔法少女であればピークから緩やかに下降線を下り引退の選択をする時が必ず来るのであるが
彼女の場合些か早めの下降が始まっていた。
自身の成長を拒む様に食事を制限した彼女は心身のバランスを欠きだしていた
今宵の魔界の魔法少女への最初の“吐露”も彼女の精神状態が起因している。
魔界からの大使へ次は“狙撃”の意図で放つ
もはや言い訳できない“魔法少女”としての宣戦布告である
「ああ、そういう事ね”力“比べしたいんだ?」
「握手してからルール決めた方が“まいった”がわかりやすくていいんだけど」
今ここに自分を待ち構えていた魔法少女であれば“話が通っている”筈の人物
それであって自分に“じゃれついてきた”のであればそういう事だろう
「“魔界ルール”知ってるみたいし」
「分かりあう気が“ある”みたいだから“それで”でいくね♡」
「『トリガー・アウト』」
金の髪の少女は『詠う』
魔法少女の『祈り』魔闘衣の召喚と自身の髪を魔法色に染め上げる
金の髪はさらに強く輝き“黄金”の髪色へ
魔闘衣は星空の蒼を落とし込んだ深い蒼のマントケープとラメの様な細かい魔石の煌めきを纏ったスカート
“セイル”は翼の様に2枚並列に現れているが淡い青に発光するシンプルな虚像
魔界の魔法少女は転身を終える。
“オーソドックス”
故にこれが魔法少女の王道と
それ故に頂点に至れる者と言わんばかりの威光を放つ
「少しお肉食べた方がいいよ、赤ちゃん産めなくなっちゃう」
両手で数えられる程度の“転身”回数と溢れる力の発露で口が軽くなり思った事が口を突く
少女特有の世間を知らない言葉
思春期を迎えて大人を受け入れる事を拒む“魔法少女”に投げかけられた、最悪の刃
「…『マジカル・タッチ』」
何の気無しに発言した黄金の髪の少女の言葉は
大人になりたくない少女の逆鱗を鷲掴みに躙った




