宴のあと << マール >>
私たちの王国評議会は終わりました。
チャードンさんとグリーンさんとグロームさんの3人は、まだ評議会に参加しています。
私たちは参加許可がないまま参加して、正体が発覚してしまったので、追い出されてしまいました。
王都郊外のキャンプに戻った時に、ドノフから「ご無事で何より」と言われた時には、確かに捕縛される危険もあったし、帰れて良かったと改めて思いました。
そのドノフから、評議会はどんな感じでしたかと聞かれたので、正直に私たちより格上感はあったことを伝えました。
都市を持つギルドのリーダーは、なんだかんだ言っても成功者たちです。
このロマール地方に幾つのギルドがあるのかわかりませんが、その中のトップ11ギルドのリーダーがあそこにいました。
マイノスさんに負けたロドリゲスやブレイクナイトも、あそこにいる以上は、私たちより成功しているのです。
「私たちに劣る部分があり、彼らに優れている部分がある」
帰り際、マイノスさんは「それが何かわからない限り、私たちは負け続ける恐れがある」と私に言いました。
私はそのことをドノフに伝えると、「そういえばボスはどこに?」と聞いてきました。
マイノスさんは、今日は空気のようです。
いつの間にか居なくなり、あれ?と思ったときに、遠くからドノフを呼ぶ声が聞こました。
でもそれはマイノスさんではない。
「新世界ギルドのメンバーが、酒宴に呼んでくれてまして、ちょっくら行ってきます」
「わかりました」と私は言い、ドノフが新世界ギルドのメンバーと上手に付き合ってくれていることに感謝しました。
私はマイノスさんを探しに行きましたら、少し離れた場所で、マイノスさんは周囲を眺めていました。
それはキャンプを警護しているようにも見えましたが、この各ギルドが集結している状況で、戦闘を仕掛けてくるギルドがあるようには、私には思えませんでした。
キャンプの中心地では、酒盛りが行われていて、ドノフも少し飲んでいるようなのはわかっていました。
ふと、その中心地からマイノスに声をかけて、近づく人影が見えました。
私も剣に手をかけて、近づきましたら、それは誰かに似ていました。
「リリアさん、リリアさんですか?お久しぶりです」
私は二人の元に駆け出しました。
リリアさんは海運ギルドを解体して、ギルド資金を国庫に戻してから、王立騎士団のメンバーに狙われていました。
「大丈夫だったのですか?」と聞いたら、「これのお陰で助かった。私への恨みが消えるようにお願いしたの」と言って、砂時計のようなものを見せてくれました。
「これは魔法の粉で、七色の粉とも、虹色の粉とも言われているの。7つの色の魔法の粉を混ぜて作られたもので、7系統の魔法を使用できるようになると言われているわ。通常は魔法は習得しないと使えないんだけど、七色の粉が一緒にあるときは、その効果で願うだけで魔法を使えるようになる。しかも願いに対して、どの系統の魔法を使用すれば実現できるかも選択してくれるから、とても使い勝手がいいの。もちろん、出来ないこともあるけどね。魔法では出来ないことも」
私はふーんと考えました。
多数の人の恨みを消すにはどの系統のどういう魔法を使えばいいんだろう???
でもリリアさんらしい話なので、私は気にするのを止めました。
夜は少しずつ更けてきて、立ち話も何だからと、近くの岩や切り株のある場所で、私たちは話し込みました。
「リリアさんは、あの後はどうしてたんですか?」
「私は海運ギルドを離れてからは、一時、好戦ギルドにいたの。ほら、あそこで大男のハイドンと飲み比べている人。ヘリオスっていうんだけど、好戦ギルドのリーダーだった人。王立騎士団の外務大臣していたときに、西方を担当していて、彼と知り合ったので、そのギルドのお世話になったのよ。その頃、好戦ギルドは新世界ギルドと抗争をしていて、苦戦していたの。私は西方調査していた時に、新世界ギルドのことも調べていたから、ヘリオスに新世界ギルドには勝てないよって教えてあげたの。新世界ギルドを見ればわかるけど、彼らは戦争だけじゃないのよ。ゲームを自由に楽しんでいる。戦争で精一杯の好戦ギルドとは、余力が違うって教えてあげたの。それで統合を勧めて、私が調整をしてあげたの。それからは私も新世界ギルドにいるわ」
リリアさんは、身なりは高価なものを着てはいないし、時折若さも感じるけれど、私は嫌な感じはしませんでした。
ルナさんがマイノスさんに近いときは、もやもやしたものを感じたし、クエティーパリカさんがサブリーダーだった時も、なにか違うなていう感じがしていた。
でもこのリリアさんは、私たちと相性が良いというか、本当の意味で味方になってくれるような、そんな印象を受けたのです。
リリアさんは、私たちを無理に新世界ギルドの集まりに誘うこともなく、私たちをありのままに受け入れてくれるような、そんな印象を受けたのです。
私たちはそれから、これまでの魔物退治の武勇伝を話したり、いろいろなアイテムや武具についても情報交換をしました。
ふと気づくと、夜はどこまでも深くなり、あれだけ騒がしかった王都周辺のキャンプも、静まりかえっていました。
私は少し飲食物が欲しくなり、新世界ギルドのキャンプの中心地に行きましたら、以前私たちのギルドにも外交で来てくれたサーリペルナさんが、ギターを静かに弾いていました。
ムーチェンとルオ・シーというカップルの二人が、サーリペルナさんのギターの卑猥なメロディーに合わせて何やら静かに盛り上がっていました。
このまま続けたらどうなっちゃうんだろうと不安になったところで、サーリペルナさんはそっと転調して、物悲しいメロディーを弾き始め、周りの空気を鎮めました。
「彼は優秀だよね。周りの空気を読んで、それに合わせたギターを弾ける」
猪の串刺し肉やエールを調達している私に話しかけて来た人がいました。
見た瞬間に、この人はマイノスさんと同じくらい強い人で、スライサーという人だとわかりました。
佇まいに、隙が全く見えないからです。
私は強い緊張しましたが、スライサーはそんな私の緊張を解くように、「リーダーたちが帰ってきたようだ」と私に教えてくれました。




