全滅の危険 << マール >>
セルバート王から私たちが託された任務は、小都市ハールから先の探索でした。
一応、小都市ハールに入城した時に、街の依頼は一通り見てきて、簡単にこなせそうなものは引き受けました。
近隣の獣3匹討伐、盗賊団の討伐、魔物の討伐(何でも良い)、薬草採集などは、一度の探索で十分に達成することが出来ました。
気になったのは、ガルナス王国はロマール王国より獣や魔物が多いということです。
虎やライオンといった超危険な獣や、サーベルタイガーがいるという噂もありました。
虎とライオンですが、危険なのはライオンです。
虎は単独行動で狩りをしますので、部隊で行軍しているときは、少なからぬ被害はあるかもしれませんが、部隊が全滅するようなことはありません。
しかし、ライオンの場合は群れで襲ってきますので、100名ほどの部隊が全滅するということもあるというのを聞いています。
またサーベルタイガーは、古代に絶滅したと言われる伝説の動物です。
サーベルタイガーは、マンモスのような大型の動物を仕留めるのに有利な巨大な牙がありましたが、小型の獲物を狩るのは苦手で、大型獣が減ったことにより絶滅したと言われています。
ですので、魔物扱いされていますが、これが生息出来るということは、その獲物がいるということです。
大型動物、もしくは大型の魔物がいる危険がありました。
私とペラーの部隊は、小都市ハールから南方の大平原を探索していたのですが、幸いにも、危険な猛獣や魔物には遭遇しませんでした。
そして私たちは遂に大都市を発見しました。
旅の行商の話から、それは農業都市タバタでした。
大都市の発見でしたので、すぐにセルバート王のいる小都市ハールに伝令を走らせましたが、同行するペラーの部隊から、さらに奥地へ行こうという意見があり、同意しました。
農業都市タバタには、敵地なので入城することはしませんでしたが、食料等は十分に持っていたので、更に奥地を調べることが出来ると、私たちは判断したのです。
「マール!あれを見て!南西の方角・・・」
ペラーの部隊が高台の窪地に隠れるように私たちの部隊を誘導してくれた後、私はペラーの指し示す方角を見ました。
そこには人の波が見える。
大軍勢だ・・・。
「何あれ・・・あれが軍団だとすると、ロマール王国軍より遥かに多い・・・」
「農業都市タバタに向かっているね。セルバート王の話だと、そろそろ敵が集結してもおかしくない時期です」
「農業都市タバタを迂回して、一旦帰還しましょう。あれに飲み込まれたら、ただでは済まない」
「うん。後ろを振り向かずに、一気に小都市ハールまで駆け戻ろう」
私たちはそこから一気に駆け出しました。
途中ハイエナの群れに襲われましたが、その頃には敵の軍団には見つからない場所まで避難していましたので、落ち着いて包囲殲滅しました。
小都市ハールに到着した私たちは、すぐにセルバート王に大軍勢の移動を報告しました。
ちょうどその時、西方を探索していた新世界ギルドのチャードンたちの部隊が来ていて、小都市ナムを発見したことを伝えていました。
そして、王立騎士団の探索部隊から、私たちと同様に、農業都市タバタに大軍勢が集結しつつあり、その数10万という報告も入りました。
セルバート王もチャードンさんも、そろそろ敵が集結しておかしくない頃だと、考えていたようですが、10万という数には流石に驚き、マイネを呼んで確認の指示をしました。
セルバート王は、「リゼア王国が劣勢になるのだ。その全軍で来るとそのくらい居てもおかしくない」と言って、東部戦線(リゼア王国内で、ガルナス王国と第一ギルド・懲罰ギルドの連合軍が対峙しているということを聞きました)の状況確認もしていました。
マイネはフェアリーとやって来て、指示を受けると、私に声をかけ、「外でこれから僕を見ていて」と言いました。
私とペラーは言われて通り、都庁から出て待っていると、マイネは馬に乗って駆けてきて、「見てて」と私たちの横を通り抜けていきました。
マイネは龍王の鎧をまとった時と同様に、剣を天に指し示すと、その件はマイネだけでなく馬をも包み込み、龍となって空を駆けて行ったのです。
「異世界から来た人は凄いなぁ」と、ペラーは驚いていました。
「確かに。でもマイノスさんでも、空は飛べないわよ。マイネが凄いのよ」と、私はつぶやきました。
「王立騎士団には他にも凄い人が何人かいると聞いた。そんなギルドとは戦いたくないなぁ」
「私たちは今回、ロマール王国軍として今回は出征してきてる。彼らと共に、今回は戦う。今回はね」
私たちは今回、王立騎士団に和解の意思を示すために、ガルナス王国遠征に加わっています。
しかし、所属連合は、王国第二位の新世界ギルド側なので、まだ王立騎士団と抗争する可能性はありました。
マイネと戦ったら、私は勝てるのかしら・・・。
私はふぅと息を吐いて、大地を踏み、そして息を吸って、軽く身体を動かしました。
魔力を帯びた鋼の剣が、ガルナス王国の風を切りました。
誰であろうと戦いでは切る。
私たちは傭兵団のもとに行き、今夜は都市内でしっかり休息を取るように指示をしました。
持ってきた資金の大半を、今回の休息に使いました。
宿屋では朝食と携帯食を用意してもらえないか相談し、交渉は成立しました。
翌朝、私たちは慌ただしく朝食を食べながら、携帯食を部隊の兵士に分配していたら、マイネが駆け込んできた。
「まだ宿にいたの?みんな撤退の準備を始めてるよ。僕らは包囲されてる。国境から小都市ハールまでを哨戒してた商人ギルドが、敵の大部隊に襲われて、こちらに逃げてきている。退路を絶たれたんだよ」
え??
私は、パンを水で喉に流し込み、「農業都市タバタから来る軍勢とは別に?」と聞いたら、「農業都市タバタから10万、国境方面にも10万という大軍に挟み撃ちになっている」と言われた。
私は命のネックレスを見たら、もう吸い込まれるくらいの真っ黒になっている。
ロマール王国軍の兵力は3万人弱。
全滅する可能性もある。
私たちはマイネの指示通り、街の北部へと駆け出した。
そしてそこには、もう多くのロマール王国軍が布陣していた。




