東部戦線 << セルバート王 >>
鷹の目ギルドが小都市ハールをいきなり攻略したことには、さすがに私も驚いた。
我々と戦わずに青の港から撤退したギルドだったので、従順なウサギのようなギルドかと思っていたら、獲物を狩る能力はあるようだ。
聞くところによると、役員のうち何人かは、別のゲームから移籍してきたようで、団結力はあるらしい。
リーダーのログリーがしっかりしているのだろう。
ガルナス王国との会談では静かに列席していただけだったが、その後の行動も事前に打ち合わせていて、速やかに動く辺り、彼らは今回は役に立つ。
小都市ハールを占領したので、次は奥地への探索をすることになるが、彼らにはその探索部隊を戦闘支援する遊軍として、臨機応変に動いてもらうことにした。
探索部隊には、王立騎士団の半数と、新世界ギルド、西の強国ギルド、ビッグレイクギルドで行ってもらい、王立騎士団の半数は小都市ハールで待機させることにした。
また商人ギルドには、退路を絶たれないために、国境から小都市ハールまでの地域を哨戒させることにした。
小都市ハールに待機している防衛隊メンバーからは、交代を早くしてくれという要望が来ている。
ロマール王国では遭遇しない魔物がずいぶんといるという情報があり、退治したいのだろう。
だが、今回に関しては、敵は魔物じゃないんだ。
ガルナス王国の主力部隊が来たら、ロマール王国の命運をかけた戦いになるのだ。
そのことを忘れないでほしい。
東部戦線について、私は哨戒中のゴールネスに遠隔通信を繋いだ上で、イザベルへ連絡した。
リーダー間で戦況は共有した方がいいからな。
私の隣にはマリスやコーベン、シンシアやトルエンといった役員もいる。
「イザベラ。そちらの状況はどうだ。こちらは小都市ハールを陥落させた。今はその先の都市への探索を始めている。小都市ハールは無防備な状態で襲撃できたので、まだ大規模な戦闘は起きていない」
「こっちは驚いているよ。いきなりリゼア王国がガルナス王国と停戦しちまうから。だが、リゼア王国のモラルード王は、停戦は形式上で一時的なことだ、都市を奪われたまま停戦を続けるつもりはないと言っている」
「都市を奪えれればその都市は保有しても良いというのを聞いたが」
「リゼア王国からしたら、補給線が繋がらない都市は、敵対したらいつでも奪い返せる。私たちにガルナス王国と戦わせる口実だよ。でも乗るんだろう?」
「ロマール王国の戦力を全て使うには、東部戦線で戦うことも必要だ。こちらにガルナス王国の戦力を全集中されると勝てなくなる。頼むよ」
「OK。こっちはいきなり小都市攻撃とはいかない。この先がリゼア王国とガルナス王国の戦闘の最前線だったんで、敵部隊も多い。だが、リゼア王国からの索敵情報だと、敵の部隊は半減しているという話もある。そっちにも確実に向かってるよ。気をつけな」
「わかった。ありがとう。ファンリーと替われるかい?」
「セルバート王。こっちの敵は半減したと言っても、簡単じゃない。元々、リゼア王国の総兵力と対峙し押し込んでいたガルナス王国軍だからね。慎重に戦わせてもらうよ。作戦指揮はイザベラではなく、私に取らせてもらうよ」
「ああ。イザベラにもそれは伝えている。兵力も第一ギルドが一番多い。勝てる戦いをしてくれ。また何かあれば連絡する。そうだ。ゴールネスからは何かあるか」
「いや。次の王国評議会で、ガルナス王国とリゼア王国での旅の話で酒を飲もう。お互い生きて帰ろう」
「そうだな。また連絡する」
ガルナス王国軍が、リゼア王国からガルナス王国北部に来るにはかなりの時間がかかるはずだ。
いや、ワープホールを使えばすぐだな。
しかし集結させるのは簡単ではない。
魔力の消費も大きい。
必ず、ワープホール作成者の魔力回復の時間も取るだろう。
どんなに早くても、ゲーム時間で1週間はかかる。
それまでに、もう一つ都市を取れれば、敵の防衛戦は更に深い場所になり、敵戦力の分散も図れる。
探索の結果次第で、戦い方も変わってくる。
私は側近の役員にそう伝え、少し休むことにした。
会談からここまで、緊張が続いた。




