戦いの決意 << マール >>
ワープホールで、ガルナス王国との会談に臨んだ人たちが帰ってきました。
帰ってくるなり、セルバート王はガルナス王国との開戦を遠征軍に伝えました。
時間にして1時間ほどしか経っていない。
なぜ王国間の戦争が、こうも簡単に決まるのか。
私は兵士で戦うことが仕事だけども、自分の知らないところで戦争が始まり駆り出される違和感を感じた。
マイノスさんの村にいたときは、私自身が戦う理由を実感し、戦うことを望んだが、今回の国家間の戦争はそういう思いは皆無だった。
私はチャードンさんにどういう経緯で戦争することになったのか聞いた。
チャードンさんら新世界ギルドは、今回遠征軍をほとんど用意していない。
チャードンさんなら、私の違和感の答えを知っている気がした?
共感してくれる気がした?
「マールさん、あなたは戦うのが嫌かい?わいらは遠征軍はほとんど用意していないが、戦う準備は整えとるよ。ガルナス王国とだけでなく、王立騎士団ともな。ここにいる兵士たちはガルナス王国と戦う覚悟を持って来とる。わいも、グリーンも、サーリペルナも」甲冑を身に着けながら、チャードンさんは続けて話してくれた。
「だが、よくよく考えると、マールさんの話は面白い。なんで戦うのやろな。このまま何もしないと、リゼア王国はガルナス王国に滅ぼされ、次の標的が我々になった時に、立ち向かえない戦力差になっている。セルバート王ら王国政権もわいら新世界ギルド、同じ見解や。だが、それは本当やろうか」チャードンさんは、甲冑を身につける手を休めることなく、話を止めた。
「予感?やろか?未来にこの王国が襲われる予感、可能性。いや、理屈やろうな。この世界に、王国間の戦いが用意されとる。だから戦うんやろうな。もし神さんが、この世界に戦いとは違うものを用意してくれとったら、違うことをしとったかも知れん」チャードンさんが、甲冑を着込み、顔をパンパンと戦いで気合を込めた時、新世界ギルドのキャンプに王立騎士団のマイネが駆け込んできて、報告した。
「ガルナス王国とリゼア王国が休戦した?」チャードンさんは、その報告に驚き、「違和感があったんや。ガルナス王国のヌーア王に余裕が感じられたんや。二方面で戦う焦りが見られなかった。和平を最初に持ちかけたのも彼らだった」と、私にその時のことを話してくれた。
「ガルナス王国側が、和平を持ちかけた?」私は聞き返してしまった。
「ああ。そしてセルバート王はそれに同意した。だが、ガルナス王国のヌーア王はそれを断った」
「わからない。その話はわからない」
「わからんやろうな。その場に居た者でないと」
「マールさん。戦う準備は出来てるかい。わいらはその準備をしてきたんや。その時が来たということや」
私は「失礼しました。チャードンさん、話してくれてありがとうございます」と言って、その場を辞した。
私は傭兵団に何を伝える。
これから戦いに臨む兵士たちに何を伝える。
陣営に戻るとき、ペラーの部隊を見た。
ペラーは傭兵団をこう鼓舞した。
「さあ、皆さん。ガルナス王国と開戦したという報告がありました。皆さんのお力をお借りするときが来ました。ロマール王国最強の傭兵団の力を信じています」ペラーが言うと、傭兵団は鬨の声で応えました。
とても力強い。
そうあるべきだ。
兵士は戦いに備え、戦いに望む。
それがあるべき姿だ。
私は首元のネックレスを見た。
相変わらず、暗く沈む色。
私はキャンプに戻り、傭兵団を集めた。
傭兵団の隊長は私の迷いに気づいたかも知れない。
しかし彼は、私を信頼し、何も言わずに私の発言を待った。
「私たちは、これから死地に向かいます。これから戦うガルナス王国は、すでにリゼア王国の小都市をいくつも攻略し、支配体制を固めつつあります。私たちのロマール王国も、侵略されるのは時間の問題です。ガルナス王国からはすでに宣戦布告を受けました。私たちは、ガルナス王国と決戦し、ガルナス王国軍からロマール王国を守ります。私は兵士です。この命をロマール王国の自由と繁栄のために捧げます」
私は胸に手を当て、「敵に死を」と叫ぶ。
隊長が、兵士たちが「敵に死を」と叫ぶ。
ロマール地方東部の小さな村で育った私は、同じようにこの世界で生きてきた250名の生命を預かり、ロマール王国軍の一員として、ガルナス王国との戦いに臨む。
私の中から迷いは消えた。
兵士の血が私の迷いを焼き尽くした。




