表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第一回 定例会議 新魔王初指令!

魔王マルトの死から3日後、マルトの葬儀は国葬として執り行われ、全ての魔族が彼の死を悔やんだ。

(父さん…)

私は父の祭壇をずっと見つめていた。

「……」

「坊ちゃん、魔王様の祭壇を見つめたまま動かねーな」

「偉大なる魔王様であり実の父が急逝されたのです。その悲しみたるや、我々の想像を絶するものなのでしょう」

「ジル様…」

この時四天王達は、魔王ジルとしての私を全力で支えようと静かに団結していたそうな。


「………」

(父さん……何で私を新魔王になんて指名したんだよぉぉぉ!!!私は平穏な日々を送りたいのにぃぃぃ!!!)

私は心の中で取り乱していた。新魔王…すごく嫌だ…


葬儀の後、すぐに新魔王である私の挨拶が行われることになる。ダークキャッスルの麓には城下町があり、父はこの町のことを「エビルタウン」と呼ばせていた。なんか響きがかっこよかったとのことである。

エビルタウンの広場の壇上にて私と四天王が並ぶ。

「これより新魔王ジル様よりご挨拶をいただきます!」と民に向けてフォティアが声をかける。

ちなみに、ここにいる魔族は皆が皆戦闘をするような者ではない。人間と同じく商売をしたり農作をしたりと平穏な暮らしをしている魔族も多く存在するのだ。私も平穏な暮らしをしたい…


「ほら、ジル様!練習通りにお話してもらえれば大丈夫ですよ☆」とイードルに背中を押される。

私は軽く咳払いをし、「民の者よ、私が新魔王となるジルだ。先代魔王マルトの果たせなかった悲願、我々魔族が未来永劫安寧の暮らしができるよう、私は全力を尽すと約束しよう!」

と言い放つと、民衆から大歓声が沸き起こる。

「…ジル魔王、お見事です」とホーマ。

「魔王様、この後はどうするだい?」

「君は坊ちゃんでいいよ、ケイモーン。私は少々疲れたので部屋で休ませてもらうことにするよ」

「魔王様…そうですね。この数日間のご心労お察し申し上げます。本日はごゆっくりお休みくださいませ」

フォティアに頷き返すと、私は城へ戻り自室へ。


「つ、疲れた」とベッドにドサッと座り込む。

「これからどうしよう…私は戦争なんかしたくないし人間をこの手にかけるのも嫌だし、でも父さんが亡くなってから四天王も他の兵達も気合い入っちゃってるし……」

もう考えるのも憂鬱だった。

「よう!新魔王様ー、お疲れさーん!」と声が聞こえてくる。

「イルか…魔王様だなんて、君だけはその呼び方はやめてくれ」と声をかけた視線の先にいるのは小さな悪魔イル。

何やら昔色々やらかしてしまったらしく、こんな小さな可愛らしい姿に変えられてしまったのだとか。

幼少期より引っ込み思案な私にとって唯一友と呼べる存在で、元々名前なんてない存在であった為、私は彼をイルと呼ぶことにしたのだ。

「お前は昔っから魔王やら世界やら興味なかったもんなぁ」

「僕は平穏に暮らせればそれでいいんだ」

「でもよぉ、誰がそうしたのか知らんけど人間の間じゃ魔族やら魔王ってのは悪なんだよな」

「みたいだね…まあ実際父さんも他の魔族達も世界を手中に!なんて言ってたけど」

「そんなんじゃ人間と魔族が共存なんてできやしねーよな。まあお前の父ちゃん、何故かむやみに人間の街を襲ったりしなかったみてーだけどな」

「父さんは魔王美学がー…とかよくわからない拘りを持ってたからね」

「本当のところなんてわかりゃしねーけどな。もう死んじまったわけだし」

「君は相変わらずデリカシーがないなぁ」と話しながら考える。

(人間と共存か…)

「そうだっ!」とあることを閃く。

「お?何か思いついたんか?」

「ああ!早速明日の会議で実行しようと思う!」

「そうか…でも気をつけろよ?ジル、お前の理想と違って四天王やその兵達は血気盛んだからな。お前の理想がバレて謀反みたいなことになっても厄介だからな。まあ、俺ならお前にまずケンカは売らねーけどな!ギャハハハ!!」と、笑いながら忠告してくるイル。

「ありがとうイル。気をつけるよ」


そして翌日、定例会議を迎える。

「それでは新魔王ジル様による第一回定例会議を始めます」と、使い魔の声により会議が始まる。

「それでは、各地の勇者達の同行、魔物の状況から…」と会議は進んでいき、私は各々の報告を聞いていた。

「…以上が今回の報告となります。魔王様いかがでしょう?」

ここまでは過去の定例会議と同じ、報告も相変わらずだ。

父なら引き続き同じようにと言って終わりだっただろう…何て無駄な会議!

しかし私は四天王全員に「ある指示」を出す。


「四天王全員、各地での魔物の生成を中止とする!」

「!?」

四天王全員がざわつく。

この世界の魔物は、四天王を中心に魔族が生成している。

魔族は人間に比べて数が圧倒的に少ない為、四天王の根城の周りや我々が世界の調査をしている周辺には生成した魔物を兵の代わりに配置していた。

だが魔物は知能が低く、よく暴走をしては本能的に人間や人間の街を襲ってしまうようで、そういった魔物を勇者達や人間の兵士達が討伐していたようだ。討伐されては生成するといった無限ループだ。


※この世界ではそういうことにしておいて下さい。


「ジル様?私達が生成してる魔物は日々勇者達や兵士によって討伐されています。それなのに生成やめるなんて」

「そうだぜ、坊ちゃん!!正気とは思えねぇ!!」

「…反対です」

「一体何故そのようなお考えを!?」

と口々にする四天王達。

(え、えーと…)

口が裂けても人間が魔物に襲われるのが嫌だからとは言えない。

私はその時、イルに困った時はこう言え!と授けられた、ある言葉を思い出した。

「…私にみなまで言わせるつもりか?」と四天王達を睨みつける。

「ッ!?」

四天王達は凍りついた。幼少期より、その力は父以上と言われていたからであろうか、その効果は絶大だったようだ。

「…魔王様は何かお考えがあると?」そう問いかけるホーマ。

するとハッと、何かを察したようにフォティアが口を開く。

「そうか!魔物がいなくなれば人間どもは実戦の機会がなくなる。そうすることによって人間どもの武力は低下していくと、そういうことですね!?魔王様!」

私は「フッ」と笑みを浮かべる。

(うーん、まあそういうことにしておけばいっか)

「生成を中止し、徘徊している魔物は全て排除、それぞれの根城は跡形もなく消し去って全員この島に引き上げてくるように」

「え?根城も消しちゃうんですか?」と言うイードル。

「そうだ、根城もだ」と四天王に目をやる。

先程のにらみが効いたのであろうか、それ以上は誰も何も言わず、全員「承知致しました」と各地へ戻っていくのであった。

(せっかく魔物をなくして、人間の安全を確保したというのに魔族が生成してた痕跡があったなんて人間に知れ渡ったらまた魔族のイメージが悪くなっちゃうからね)

私は人間も魔族も関係ない平和な世界でのんびり平穏に暮らせればいいのだ。その時は魔王なんてものも降りてやるんだ!


***************************


会議から1ヶ月が経とうしていた頃、世界各地より帰還していた四天王より報告を受ける。

「魔王様、各地の報告です」と一歩前に出たフォティアに対して、私はこくりと頷く。

(どうなったかな?人間達は皆魔物のいない世界で平和に暮らせてるのかな?)

「魔物の生成をやめ、各地から魔物がいなくなった後ですが…」

うんうんと期待しながら報告に耳を傾ける。

「人間同士で戦争を始めたようです」

「………へ?」

「さすがはジル様!こうなることをわかってて魔物の生成を止めさせたんですね☆」と腕にしがみついてくるイードル。

「…根城を全て破壊し、生成の痕跡を残さなかったのは我々魔族が生成していたと人間にわからないようにするため…」

「おう!俺ら魔族が生成してたってなるとあいつら結託して魔族討伐!なんてことになるからな!自然に魔物が消えたとなれば…」

「後は人間の欲望が暴走し、人間同士で潰し合うと。そこで人間どもが疲弊し切ったタイミングで我々魔族が自由に動きやすくなると…魔王様、お見事でございます」

「あ、あぁ…」

私は踵を返し、謁見の間を後にする。

(人間達ぃぃぃぃ!!!何て愚かなんだぁぁぁ!!!魔物がせっかくいなくなったんだから皆んなで仲良く平和に暮らせばいいじゃん!!!何で戦争なんか始めちゃうんだよぉぉ!!!)

こうして、私の初めての世界平和への道は失敗に終わった。


(人間同士で争うならまた魔物の生成しようかな…)

私はまた世界各地に弱めの魔物の生成再開しようと考えた。

とりあえずこれで皆団結して戦争をやめてくれ!


部屋に戻ると、イルに「どうだった?」と聞かれ、

先程の報告を全て伝えると、

「ギャーハッハッ!!!」と大爆笑をされるのであった。


(…今に見てろ…絶対に平和な世界にしてやる…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ