新魔王 誕生!
実は運が良かった男が異世界へ行ったらを書いている時に思いついたので書いてみました。
こちらはのんびり更新します。
そこは世界の中心部にあると言っていいだろうか。
その島は各大陸に囲まれるようにあった。
もちろんどの大陸とも繋がっておらず地上からの侵入は不可能、断崖絶壁で荒れ狂う波の為船での侵入も不可能。
大きな暗雲が常に雷を纏い、とてつもない強風が吹き荒れており空からの侵入も不可能。この島の周りは常に暗雲が立ち込めており常に暗黒な世界、まさに闇の世界といった感じだ。
この世界の人々は陸では馬車、海では船といった移動をするが、船乗り達はこの海域を「絶命の海域」と呼び、一切近寄らずに大きく迂回するのが当たり前となっていた。
過去に1人の勇敢な船乗りがこの絶命の海域に挑み、この断崖絶壁の島を発見し生きて脱出した為、人々の世界地図にはこの絶命の海域の中心にあるこの島に「死の島」と記したのだという。
異質なこの空間には、世界を滅ぼそうとする魔王が多くの魔族や悪魔と共に存在する、そしてこの島に行く方法を世界のどこかで見つけ出し、魔王を討伐せんと各国から勇者と呼ばれる者たちが旅だっていた。
※作者の薄っぺらいイメージにお付き合い頂きありがとうございます。
さて、そんな死の島には非常に険しい岩山があり、その山頂部に「ダークキャッスル」と呼ばれる大きな城がある。
このダークキャッスルに魔王マルトがいるのだ。
ちなみにこのダークキャッスルは魔王マルトが手下達にそう呼ばせている。なんかそれがかっこよかったらしいのだ。
息子の私が本人からそう聞いたのだから間違いない。
私はジル。魔王マルトの息子であり魔王後継者と言われている。皆からは父をも凌ぐ凄まじい力があると言われるが私にそんな自信はないし、魔王を継ぐ気もない。
そもそも私は争い事が嫌いだ。
まあ光こそないが、この島でのんびり動植物を世話しながら過ごす毎日にそこまで不満はない。
だが父や他の魔族達は未来永劫、安寧の暮らしと魔族繁栄の為、この世界を人間達から勝ち取りこの狭い島から抜け出し、魔族の魔族による魔族のための世界を実現する!と言うのだ。
もちろん私はそんな野望に一切興味はなく、基本的には特に欲望もないが、一つだけ理想という欲があるとするならば、気の合う女性を娶って、のんびり畑で農作物を育てながら平穏な日々を過ごせればと思っていることであろうか。
平和万歳!!
さて、いつものように朝を迎え私は日課をこなしていた。
まずは庭園の植物に水をやる。
ここは光がないため、人間達がよく育てるという「花」のような美しさはなく少々禍々しい見た目をしているが、日々育つ植物を見て私は心癒されていた。
「ふむ、この香りは…」
恐らくなんの耐性もない人間がこの匂いを嗅げば、痛烈な頭痛とともに全身麻痺といった感じになるであろう。
「立派に育ったようだね。毎日水をあげた甲斐があったよ」とその禍々しい植物に話しかけた。すると植物は私の声に応えるかのように茶色い胞子を放った。
「あはは!また子供を増やすのかい?また手入れが大変になるなぁ」と笑いかけた。
私は庭園を後にすると、1つの部屋へ向かっていた。
部屋に入ると早速声をかける。
「さあ、ケル、ベロ、スーご飯だよ!」と私が可愛がっている愛犬に食事を与える。
まあわかる人はすぐわかると思うが、地獄の番犬と呼ばれるケルベロスだ。
頭が3つあり、それぞれが意思を持っているためそれぞれに名前をつけたのだ。手抜き感満載な名付け方であったが、ケルもベロもスーも名前を気に入ってくれたようだ。
(作者も考えるのめんどくさかったんだろうな)
彼らの餌の入った大きな器を置くと、「グォォォ!!!」と大きな声を上げ餌の取り合いを始めた。
「こらこらお前たち、どうせ同じ胃袋に入るんだから仲良く食べるんだよ」と落ち着かせようとしていると、
「ジル王子、こちらにいらっしゃいましたか。そろそろ定例会議のお時間となります」と一人の使い魔が私に声をかける。
「定例会議ねぇ、もう今日で1437回目だよね?どうせ何の変わりもないだろうに…」
「ジル王子そう仰らず、マルト魔王様からのご命令ですので」
「ふぅ」と大きなため息をつき、謁見の間へ足を運ぶ。
どうせこのダークキャッスル目指して魔王マルトを討伐しようとしている各国勇者達の現況報告であろうが、今のところこのダークキャッスルはおろか、東西南北それぞれに配属されている魔族四天王にすら辿り着いていないのだ。
正直本当に人間滅ぼして世界を手中にというのであれば、さっさとこちらから攻めればすぐに決着しそうなものであるが、それは父の魔王美学に反するらしい。
「魔王は勇者を待ってなんぼ!」なんだとか、、アホくさ。
謁見の間に到着すると、魔族四天王はすでに揃っており
定例会議の始まりを待っていた。
「ジル王子、お疲れ様でございます」と声をかけてくる魔族。彼は四天王フォティア、火を操る魔族である。
端正な顔立ちで、いかにも聡明といった感じである。
「ジル様ぁ!会いたかったです~!!」と可愛らしい感じで声をかけ、腕をからませてくる彼女はイードル。水を操る魔族で、いつもこのようにスキンシップをとってくるのだが、
「あ、あぁイードル、久しぶりだね」と腕を解き距離を取った。
「むぅー、相変わらずつれないなぁ」と頬を膨らませるイードル。別に嫌という訳ではないが、どうも女性に関しては抵抗がある。
「ガッハッハ」と笑い声を上げ、「イードル!坊ちゃんは女子に免疫がないんじゃ!あまり刺激が強いと卒倒してしまうぞぉ!」と大きな声で話すのは風を操る魔族ケイモーンだ。
「……」
こちらを見て軽く会釈だけしているのは土を操る魔族ホーマだ。彼はあまり喋る方ではない。
「さて、皆さん静粛に!間もなく魔王様がお見えになります」と父の側近の使い魔が席につくよう促した。
そして、定刻を過ぎたが魔王マルトは現れず、私達はただただ父の現れるその時を待っていた。
「マルト様はどうしたんじゃい?」と最初に声を上げたのはケイモーン。
「そうですね、魔王様はいつも定刻ピッタリにお見えになられるのに」とフォティアが続けた。
「お腹痛いのかなぁ?」とイードル。魔王って腹壊すのか?
「……心配だ」と珍しく口を開くホーマ。
そして四天王全員の視線が私に向いた。
魔王マルトの部屋に入れるのは息子である私のみ。
皆の視線を感じた私は、「私が魔王を呼びに行ってきます」と立ち上がる。
「私も部屋の前まで一緒に行くね!」とイードルも立ち上がる。一人で大丈夫なんだが?
私とイードルは父の部屋に向かい始めた。
「魔王様寝坊かなぁ?」とイードル。
「父は他にやることがないから、唯一の仕事であるこの会議には必ず遅れずに参加するはずなんだけどなぁ」
「ジル様さりげなくディスってますよね☆」なんて会話をしながら廊下を歩き、父の部屋に到着した。
「じゃ私は様子を見てるからイードルはここで」
「りょーかいですっ」
そして私は部屋のドアをノックし、
「父さん、入るよ?」とドアを開けた。
すると、そこには床に倒れ込んでいる魔王マルトの姿が。
「と、父さん!?」と慌てて魔王マルトに駆け寄る。
異様な空気を察知したイードルも部屋に飛び込んできて、
「魔王様!?」と私に続いて魔王マルトに駆け寄ってきた。
「イードル、君は他の四天王にもすぐに報告を!そしてすぐに魔医を呼んできてくれ!」
「わかりました!」とイードルは慌てて部屋を飛び出していく。
「父さん、しっかりしろ!」と声をかけベッドへ運ぼうとすると、
「ジル……か?」と微かな声が聞こえた。
「ああ!今他の四天王と魔医も来る!もう少しの辛抱だからな!」
「ジル、余はもしかするとこれが最後になるかもしれん」と絞り出すような声で私に語りかける。
「何を言ってるんだ!魔王だろう!?そんな簡単に……」
「歳には勝てぬ……」
魔王って老衰するのか?と思ったが、
「勇者と戦ってみたかったなぁ……」
「……」
だから待ってないで自分から行けば良かっただろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
まあ私は争い事は嫌いだからいいけども。
魔王美学に拘り勇者を待ち続けた結果、自分に辿り着く勇者はおらず、そして時間だけが無情にも過ぎていき、今老衰で息絶えようとしているのだ。
(急にこんなに老け込むなんて……これがこの作者のファンタジー世界なのか!)
その後四天王が全員集まると、生気のない姿でベッドに横たわる魔王マルトの姿に一同は絶句する。
「皆集まったか?」と魔王マルトは最後の力を振り絞り、
「余はどうやらこれまでのようだ。余の亡き後魔王はこのジルに継がせる。皆で余の理想を叶えて……」と言いかけたところで魔王マルトは息を引き取った。皆が悲しみに打ちひしがれる中、「え?え?私が?え?」
「………」
(やめてくれぇぇぇぇ!!!!!)
と、突然の新魔王誕生に、平穏な暮らしを望んでいる私は皆とは違う悲しみに打ちひしがれるのであった。




