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この恋が叶わないなら、消えてしまえばいい~そう願ったら、イケオジ王弟の過保護マックス溺愛攻撃が始まりました~  作者: Alicia Y. Norn


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番外編:波乱の新婚旅行!? ――甘く危険でドキドキの前編

テネシーとノーラの幸せな時間はまだ続く。

トラブルは二人で乗り越える!


ドキドキの新婚旅行・前編です





 「準備はできたか?」


 最愛の旦那さまが、ノックもせずに扉を開ける。


 「テネシー、いきなり入ってこないでくださいっ!」

 「君の怒った顔が可愛くて、つい。」


 スッと腰元を抱き寄せて、大好きなバリトンが耳の奥に響いてくる。


 この確信犯めっ!


「今日はだめです。予定通りに出発したいなら、もう少し待っていてください。もうすぐ終わりますから。」


 本当はすごく名残惜しいけれど、腰元の手を剥がす。


 「そういえば、テネシーはもう準備できたの?」


 男性は荷物が少ないのかもしれない。

 それでも、荷造りの時間が随分と短い気がした。


 「おう、余裕だ!」


 勢いよくテネシーが胸を張る。

 差し出した指先は、足元の旅行鞄を指さす。


 ……???……


 高級革のバッグは、尋常じゃないほどパンッパンに膨れ上がり、今にも弾けそうだ。


 この人、どや顔してるよ。 

 これ、一回開けたら最後、締められなくなるやつだ……ダメじゃん。


 一目瞭然の惨状に、ノーラは思わず固まった。


 「……あの。旦那さま、ひょっとして荷物を詰めるの初めてですか?」


 わざと丁寧にお伺いを立ててみる。

 こんなの、公爵、いや王弟だから、だとしか思えない。


 「まぁ、初めてではないが、経験はあまりない方だな。

  よくわかったな。護衛は身軽が一番だからな。こんな細かい準備は必要なかったんだ。」


 いや、胸張るところ違うからっ!

 図星されて照れちゃうって、この人ってば、もぅ!!

 そんな姿も、かわいいんですけどね。


 「あなた……本来のご身分は、護衛じゃなくて、王族で公爵さま……ですよね?」


 立場や地位を考えれば、この人が視察に出かけないなんてことはない。

 どう見ても、初めて旅行の準備をやり終えて褒めてもらいたい子供の反応だ。

 ノーラの微妙な反応に、テネシーが口を開きかけた瞬間、背後に影が落ちた。



 「――その件につきましては、すべて、わたくしが整えておりました。」

 「……っ!」


 テネシーの真後ろで侍女長が、静かに微笑んでいる。

 先日知ったのだが、侍女長はもともとテネシーの乳母だったようだ。

 小さなころから破天荒で、それはもう、いたずら好きだったと教えてくれた。

 ちびテネシーの"やらかしエピソード"は、たくさんあるようで、『少しずつお話しますよ。楽しみにしていてくださいませ、奥さま』と微笑まれた。


 テネシーは耳まで真っ赤にしている。


 かっ、かわいい……この人、かわいすぎる……


 絶対無敵の王弟、わたしの大好きな旦那さまは、こうして今日も、わたしを無自覚に翻弄するのだった。




 想定外の荷造りのやり直しも、優秀な侍女長のおかげで事なきを終え、時間通りに馬車に乗り込んだ。

 けれど、びっくりな展開は、なにも荷造りだけじゃなかった。


 実は、テネシーは隠していたいようだったが、馬車の改装をしていたのは知っていた。

 今回の旅行の移動に丸二日はかかるので、安全快適を目指して、できることはすべてやり遂げたと、隠し事がバレた時点で、教えてくれた。けれど、乗り込んだ馬車の座席は『リビングルームのソファですか?』というくらいクッションが強化され、『馬車の床に絨毯はいらないよね?』と思うのに、裸足にでもなれる触り心地のラグが敷かれている。

 そして、その馬車に乗り込んだときから、テネシーのテンションがやたら高かった。


 景色を見てはニコニコし、ノーラにピッタリ寄りかかっている。

 おまけに手を握り、離さないどころか、隙を見ては肩を抱こうとしてくる。


 「ちょっと、近すぎませんか?」


 いたたまれなくなって聞いてみると、とても分かりやすくしゅんとした。


 大型犬の耳が見える……耳が垂れて、しっぽまで……


 「嫌ではないんですよ。」


 落ち込む姿が申し訳なくて、すぐに言葉を付け加える。

 今度はぱっと明るくなって嬉しそうだ。


 やっぱり、しっぽが……見えるかも。

 

 「……そんなに嬉しいんですか?」


 宰相をやり込めた、あの冷酷無慈悲な王弟はどこへ行ってしまったのかしら?


 あまりのギャップに苦笑いしそうになる。


 「当然だろ。ノーラとふたりきりの初旅行なんだぞ?」


 直球ストレート。真顔でそれは……ズルい。

 

 あまりに真っ直ぐ言われて、ノーラは顔を覆った。


 もう……ほんと、こういうところが……


 だが、この浮かれぶりが、のちの波乱を呼ぶとは――

 まだ誰も知らない。


***


 バシャァァン!!


 突如空が暗くなり、大粒の雨が馬車を叩いた。


 「えっ、ちょ――!」



 バランスを崩して、テネシーに抱き止められたところで、御者の叫び声が聞こえる。


 「泥っ、車輪がはまりました。」


 馬車が大きく傾いたが、ノーラはがっちりテネシーの腕の中だ。

 突然の雷雨(スコール)だというのに、この腕の中にいると安心感しか感じない。


 「危ない。ここにいろ、ノーラ。すぐ戻る」


 スッと、抱きしめた腕を緩め、彼は迷いなく外へ飛び出した。

 

 馬車が揺れるのを感じる。

 雨の中、御者と二人で車輪を持ち上げているのだろう。

 するとそこへ、数人の足音が雨音に混ざって聞こえてくる。


 親切な人が助けに来てくれたのかもしれない……などと、思った自分の認識の甘さは、すぐに打ち消された。雨音で何を話しているか聞こえなかったが、言い争う声と、金属音が聞こえ始めたからだ。


 「何?一体、外で何が起きてるの!?」


 異様な雰囲気の中、一人であることに不安を覚える。


 「奥さま、野盗の襲撃です。絶対に外にはお出にならないでください。」


 状況を知らされたことは幸運だったが、その内容が芳しくない。

 何人の野盗がこの馬車を襲撃しているかわからないのだ。



 『もう大丈夫だ。怪我はないか?』


 不意に、初めて助けてもらったあの路地での戦いを思い出した。

 鋭い身のこなしで男たちを次々に制圧していくテネシー。


 美しい剣技の"品"に、実践で磨かれた独特の"殺気"が溶け合ったような動きだったのよね。


 あの姿を思い出したら、すっと心が落ち着いた。

 それどころか、好奇心が働いて、もう一度、彼の戦う姿が見たいとまで思ってしまった。

 馬車の小さな窓に顔を寄せる。


 バシャ、バシャと泥を撥ねあげて、テネシーが戦っている。

 やっぱり野盗ごときは敵ではないようだ。


 ふと目が合って、驚かれる。


 思わず満面の笑みで、手を振ってしまった……わたしってバカ?


 多分、制圧には五分とかからなかったと思う。

 あっという間に、彼らはテネシーに縛り上げられ、木に括りつけられた。



 「ノーラ、危ないだろっ!」 


 テネシーが馬車に戻るなり叱られてしまった。

 でも、そんなことは一切気にならない。

 それどころか、濡れた白シャツにチラリと透ける逞しい身体が……色っぽくて、何も聞こえてこない。


 ノーラは真っ赤になって俯いた。


 な、なんでこんな……濡れただけなのに……泥だらけなのに……大人の色気ってずるい!


 どこを見ていいかわからず固まっていると、テネシーが盛大に勘違いをしたようだ。


 「大丈夫だ。ノーラ、怒っているわけではなくて、君が心配だっただけで」



 ふふふっ



 テネシーの慌てぶりが可愛くて、思わず笑ってしまった。

 その笑い声に、テネシーは安堵の様子を見せて、向かいに腰を下ろした。

 


 雨に濡れた髪。

 滴る水。

 服が身体に張りついて浮かぶシルエット。



 「……っ、すごく……かっこいい……反則よ」

 「ん? 聞こえなかった。もう一回――」


 不意に顔を寄せられて、ノーラがあわてる。


 「泥だらけじゃないですかっ!」

 「君のためなら、泥をかぶるくらい平気さ。」


 そう言ってシャツを掴む姿が、やはり危険すぎるほど色っぽい。

 なんだか翻弄されっぱなしが悔しくなって、やり返してみることにする。


 「風邪をひいては大変です。乾くまで脱いでしまった方がいいわ。」


 テキパキとシャツに手をかけて、はっと思いとどまる。


 これ、かなり大胆なのでは?


 と、思ったときには時すでに遅し――不自然に止まった手にテネシーが手のひらを重ねる。


 「今日の俺の奥さんは、やけに積極的だな。」


 やっぱりぃ~。やらかしちゃったのよね、わたし。


 真っ赤になって俯いたノーラの指先は、シャツを持ったままプルプル震えている。


 誰か教えて、この状況、どうしたらいいの?


 「冗談だ。こういう時こそ俺の真価が問われるんだ。変なことはしないよ。」

 「……真価って、泥まみれの姿で?」

 「……ま、まあ、それも含めてな」



 炸裂する色気が充満する密室に、なにをどうしてもいたたまれない。

 でも、戦闘後の泥だらけ姿、それでもいつも通りの優しい笑顔……きっと、わたしを安心させるために冗談を言ったのだろうと想像できた。


 「やっぱり、好き。」


 あふれる気持ちが口をついた。

 テネシーが不思議そうに見つめ返す。


 「な、何でもないの。聞こえなくていいんです!!」

 「そっ、そうか。」


 好きとつぶやいたことに気づかれてしまったのかと思い、ノーラが大きな声を出した。

 そのあまりの迫力に、テネシーが気圧される。

 気が付くと、いつもの調子に戻っていることに、二人は笑い合っていた。




 「えっと、宿の予約は大丈夫ですか?」

 「ん?大丈夫だろう……と思う。」


 テネシーが少し浮かない顔をする。予約した宿に鍵を取りに行ってから、様子が少しおかしい。


 「やっぱり、何かのトラブルですか?」

 「……ま、とりあえず、君の意見を聞かせてもらいたい……かな。」


 そう言いながらも、荷物を持つ手が少しぎこちない。

 部屋へ案内されてすぐ、テネシーの様子に合点がいった。

 貴族の、しかも公爵夫妻の泊まる部屋とはとても言い難い部屋だったからだ。

 もっとも、この旅行はお忍びで、御者以外、護衛も侍女も付けていない。

 だから、一般の宿屋に予約をしていたのだが、それでも、部屋の大きさにはテネシーがこだわっていた。


 「少し、狭い……ですね。」


 感想というよりは、事実確認と言った口調で、ノーラがテネシーを見上げる。


 「まずい……よな。」

 「何がダメなのですか?」


 きょとんと首をかしげる。


 「それが……まずいんだ。」

 「えっ?」


 テネシーの耳が赤くなったことに気づいて、ノーラの体温も上がる。


 「狭い部屋はそれだけ距離が近くて、わたしは嬉しいですよ。」


 照れながらも精一杯、気持ちを伝えてみる。


 「狭い方が、もっと近づける……近くにいられる……それであってるか?」


 ノーラの心音が跳ねる。真っ赤になって頷くと、テネシーも赤くなって顔を逸らした。


 「奥さんが、可愛すぎると苦労するな、まったく」

 

 テネシーの小さなつぶやきが、ノーラに届くことはなかった。



 ろうそくの炎が揺れている。豪華さはないけれど、狭いベッドにこれ以上なくらいの距離で、二人でくっついて座る。

 テネシーに後ろ抱きにされるようにすっぽり包まれて、ノーラはろうそくの炎が揺らす二人の影を見つめていた。


 「……今日は、色々ありましたね。」

 「そうだな。」


ノーラは小さく微笑む。雨も野盗も、狭い部屋も、すべて二人の歴史に変わったのだ。


 「……私、幸せです。」

 「俺もだよ。」

 「守ってくれて、ありがとう。」


 甘えるように、腕の中に顔をうずめる。


 「俺は、君だけの護衛さ。一生な。」

 「あなたに守られるなんて、贅沢ね。」


 ノーラが安心しきった様子で笑う。


 「贅沢なもんか。君だけの特権さ。」

 「でも、守られてるだけなんて、やっぱり悔しいな。

  だから、わたしもあなたを守るわ。」


 テネシーが驚きに目を開き、大笑いする。


 「失礼ね。本気で言ってるのに……。」

 「嬉しいよ。この上ない、栄誉だ。」


 テネシーは腕の中にすっぽりと入る小さな体に、顔をうずめる。

 首にかかった吐息に、ピクリとノーラの肩がはねた。


 ここからは大人の時間――二人の時間。

 

 壁の影が一つになると、風に揺れていたろうそくの明かりが、二人の夜を歓迎するかのようにそっと消えた。



最強の護衛がいるっていいですよね。

ノーラが幸せなのが嬉しいです。

そして、テネシーが……どんどん骨抜きにされている気がするのですが!?


王族という鎧を脱いで、ありのままの自分でいられる。

エレオノーラにとってテネシーが転生を隠さなくていい存在であるように、

テネシーにとってエレオノーラも唯一『自分』でいられる存在なんでしょうね。


やっぱりお似合いだw


この二人のドタバタ新婚旅行はまだ続きます。

「番外編:波乱の新婚旅行!?――ワクワク、でもやっぱりドキドキ後編」

お楽しみに!

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