↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/462

潮の拍、群島の兆し

1. 海峡を越えて


潮風が頬を切るように吹き抜け、砂舟は蒼玻(そうは)群島へ向けて疾走していた。

太陽塔で得た古い潮図は正しかった。風の拍を合わせた舵取りに、舟は驚くほど素直に応えてくれる。


「よっしゃ、このまま真っ直ぐや!」

よっしーが舵を握り、バイクのエンジンのように足元で振動が伝わる。


「気持ちいいニャー!」

ニーヤが帽子を押さえながら、風を受けて耳を揺らす。


リンクは舳先で二段ジャンプを繰り返し、ブラックは空の高みを旋回して潮の裂け目を見張っていた。


⸻


2. 群島の影


午後、水平線の向こうに大小の島が見えてきた。

白い砂浜と深緑のジャングル、その奥で古代の祭殿らしき石の尖塔が陽を反射していた。


「あれが蒼玻群島……」

あーさんが息をのむ。掌の盃が、光を受けてきらりと輝いた。


クリフさんは弓を握りしめたまま、低く言った。

「嫌な気配がする。潮がざわついている」


その言葉どおり、海面が不自然に泡立ち始めた。


⸻


3. 潮の魔物


突然、舟の横で水柱が上がった。

姿を現したのは、銀色の鱗を纏った巨大な魚――リヴァイアサンの幼体だった。


「くそっ、またか!」

よっしーが盾を構え、俺は旗を握り直す。


「リンク、ブラック! 援護だ!」

「キューイ!」

「ン!」


ニーヤが詠唱を始めた。

「氷結弾(フリーズ・ブリッド)・波環(なみわ)!」


青白い氷弾が連続して放たれ、海面を瞬時に凍らせる。幼体の動きが鈍り、クリフさんの矢が目の隙間を正確に射抜いた。


ブラックが風の刃で水しぶきを散らし、リンクが背に跳び乗って後頭部を蹴り飛ばす。

幼体は断末魔の声を上げ、海の奥へと沈んでいった。


⸻


4. 島への上陸


夕暮れ前、俺たちは群島の南端の浜辺に舟を着けた。

白い砂浜、背後には鬱蒼としたジャングルが広がっている。


「とりあえず今夜はここで野営やな」

よっしーが虚空庫から簡易テントを取り出し、リンクが砂浜を駆け回る。


あーさんは掌の水で火を灯し、ニーヤは調理用の小さな鍋を杖先で浮かせた。


「うーん、久しぶりにまともな飯が食えそうだ」

クリフさんが干し肉を切り分け、ブラックはその上で静かに見張りを続けていた。


⸻


5. 古代の祭殿


翌朝、俺たちはジャングルの奥へと足を踏み入れた。

湿った空気、絡み合う木の根、鳴き声の響き――そのすべてが異世界の拍を刻んでいる。


数時間の行軍の末、苔むした石の階段が姿を現した。

その先にあったのは、巨大な石造りの祭殿だった。


「……ここか」

俺は旗を肩に担ぎ、深く息を吸った。


壁面には、潮と風、そして輪を象徴する古代文字。

中心には青い宝珠が収められた台座があり、淡く脈動している。


⸻


6. 白鎖の影


祭殿の奥から、あの声が響いた。


「よく来たね。輪の外側から、内へ」


白鎖が現れた。鎖の輪は肩に掛けられ、冷たい光を放っている。

その隣には炎糸、そして弓を携えた女――シャヒーンの姿もあった。


「今日は食べない、なんて言わないよ」

白鎖の目が笑う。


⸻


7. 拍の戦い


ニーヤが杖を掲げ、日環の輪を三重に重ねた。

「氷結弾・潮輪(しおわ)!」


あーさんは掌の水を薄い面に変え、俺は旗で返礼の拍を刻む。

よっしーは盾で衝撃を受け止め、クリフさんの矢が空気を裂いた。


リンクとブラックが二重の軌跡を描き、炎糸の攻撃を逸らしていく。

だが白鎖の動きは速い。こちらの拍を真似し、さらに一歩先を読んでくる。


⸻


8. 新たな輪


苦戦の最中、あーさんの掌の水が光を放った。

「……潮は、礼を返したがっております」


水の面が広がり、白鎖の足元を包み込む。

その隙を突き、ニーヤの氷結弾が鎖を凍らせた。


俺は旗を振り、返礼の拍を深く刻む。

「これが、俺たちの輪だ!」


白鎖は短く笑い、鎖を収めた。

「いい礼だった。……続きは、海のさらに向こうで」


⸻


9. 静寂と余韻


戦いの後、祭殿は静寂を取り戻した。

中央の宝珠が淡く光り、潮の拍が穏やかに響く。


「次は……東の海か」

クリフさんが呟く。


「輪はまだ続くニャ」

ニーヤが笑い、リンクが小さく鳴いた。


俺は深く息を吸い、指輪を胸に押し当てた。

――この旅は、まだ終わらない。


⸻


次回予告


蒼玻群島を抜け、さらに東の海域へ。

潮流を支配する“海王の祭殿”、そして白鎖との三度目の邂逅。

日環と水鏡が交わる拍の中で、新たな仲間と秘密が明らかになる――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。