表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/387

潮の拍、群島の兆し

1. 海峡を越えて


潮風が頬を切るように吹き抜け、砂舟は蒼玻そうは群島へ向けて疾走していた。

太陽塔で得た古い潮図は正しかった。風の拍を合わせた舵取りに、舟は驚くほど素直に応えてくれる。


「よっしゃ、このまま真っ直ぐや!」

よっしーが舵を握り、バイクのエンジンのように足元で振動が伝わる。


「気持ちいいニャー!」

ニーヤが帽子を押さえながら、風を受けて耳を揺らす。


リンクは舳先で二段ジャンプを繰り返し、ブラックは空の高みを旋回して潮の裂け目を見張っていた。



2. 群島の影


午後、水平線の向こうに大小の島が見えてきた。

白い砂浜と深緑のジャングル、その奥で古代の祭殿らしき石の尖塔が陽を反射していた。


「あれが蒼玻群島……」

あーさんが息をのむ。掌の盃が、光を受けてきらりと輝いた。


クリフさんは弓を握りしめたまま、低く言った。

「嫌な気配がする。潮がざわついている」


その言葉どおり、海面が不自然に泡立ち始めた。



3. 潮の魔物


突然、舟の横で水柱が上がった。

姿を現したのは、銀色の鱗を纏った巨大な魚――リヴァイアサンの幼体だった。


「くそっ、またか!」

よっしーが盾を構え、俺は旗を握り直す。


「リンク、ブラック! 援護だ!」

「キューイ!」

「ン!」


ニーヤが詠唱を始めた。

氷結弾フリーズ・ブリッド波環なみわ!」


青白い氷弾が連続して放たれ、海面を瞬時に凍らせる。幼体の動きが鈍り、クリフさんの矢が目の隙間を正確に射抜いた。


ブラックが風の刃で水しぶきを散らし、リンクが背に跳び乗って後頭部を蹴り飛ばす。

幼体は断末魔の声を上げ、海の奥へと沈んでいった。



4. 島への上陸


夕暮れ前、俺たちは群島の南端の浜辺に舟を着けた。

白い砂浜、背後には鬱蒼としたジャングルが広がっている。


「とりあえず今夜はここで野営やな」

よっしーが虚空庫から簡易テントを取り出し、リンクが砂浜を駆け回る。


あーさんは掌の水で火を灯し、ニーヤは調理用の小さな鍋を杖先で浮かせた。


「うーん、久しぶりにまともな飯が食えそうだ」

クリフさんが干し肉を切り分け、ブラックはその上で静かに見張りを続けていた。



5. 古代の祭殿


翌朝、俺たちはジャングルの奥へと足を踏み入れた。

湿った空気、絡み合う木の根、鳴き声の響き――そのすべてが異世界の拍を刻んでいる。


数時間の行軍の末、苔むした石の階段が姿を現した。

その先にあったのは、巨大な石造りの祭殿だった。


「……ここか」

俺は旗を肩に担ぎ、深く息を吸った。


壁面には、潮と風、そして輪を象徴する古代文字。

中心には青い宝珠が収められた台座があり、淡く脈動している。



6. 白鎖の影


祭殿の奥から、あの声が響いた。


「よく来たね。輪の外側から、内へ」


白鎖が現れた。鎖の輪は肩に掛けられ、冷たい光を放っている。

その隣には炎糸、そして弓を携えた女――シャヒーンの姿もあった。


「今日は食べない、なんて言わないよ」

白鎖の目が笑う。



7. 拍の戦い


ニーヤが杖を掲げ、日環の輪を三重に重ねた。

「氷結弾・潮輪しおわ!」


あーさんは掌の水を薄い面に変え、俺は旗で返礼の拍を刻む。

よっしーは盾で衝撃を受け止め、クリフさんの矢が空気を裂いた。


リンクとブラックが二重の軌跡を描き、炎糸の攻撃を逸らしていく。

だが白鎖の動きは速い。こちらの拍を真似し、さらに一歩先を読んでくる。



8. 新たな輪


苦戦の最中、あーさんの掌の水が光を放った。

「……潮は、礼を返したがっております」


水の面が広がり、白鎖の足元を包み込む。

その隙を突き、ニーヤの氷結弾が鎖を凍らせた。


俺は旗を振り、返礼の拍を深く刻む。

「これが、俺たちの輪だ!」


白鎖は短く笑い、鎖を収めた。

「いい礼だった。……続きは、海のさらに向こうで」



9. 静寂と余韻


戦いの後、祭殿は静寂を取り戻した。

中央の宝珠が淡く光り、潮の拍が穏やかに響く。


「次は……東の海か」

クリフさんが呟く。


「輪はまだ続くニャ」

ニーヤが笑い、リンクが小さく鳴いた。


俺は深く息を吸い、指輪を胸に押し当てた。

――この旅は、まだ終わらない。



次回予告


蒼玻群島を抜け、さらに東の海域へ。

潮流を支配する“海王の祭殿”、そして白鎖との三度目の邂逅。

日環と水鏡が交わる拍の中で、新たな仲間と秘密が明らかになる――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ