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第6話 冒険者ギルドとルーデンス聖教国の闇




(主人公・相良ユウキの視点)


夜が明け、俺たちは再び歩き始めた。森の魔女アンリに言われた「イシュタムの魂」という言葉が、ずっと頭から離れない。その力は、俺を救うことも、滅ぼすこともできるという。俺は、自分の手を見つめ、改めてこの異世界の理不尽さと、それに立ち向かう自分の運命を実感した。


山道を歩いていると、幸運にもまた旅の商人と出会うことができた。よっしーは早速、**虚空庫アイテムボックス**から1989年頃の品物を取り出した。


「おっちゃん、これと交換してくれへんか?」


よっしーが差し出したのは、懐かしいパッケージのカップヌードルや、チョコレート菓子、ポッキーのようなお菓子だった。


「なんじゃ、これ? 見たことのない品物じゃな」


商人は首を傾げながらも、興味津々でカップヌードルを手に取った。


「これはな、お湯を注ぐだけで美味いラーメンが食える優れもんや!」


よっしーが自慢げに説明する。商人にお湯を沸かしてもらい、カップヌードルを試食してもらうと、その美味しさに商人は目を丸くして喜んだ。


「これはすごい! 是非とも、これをいくつか売ってくださらんか!」


よっしーは、元の世界で持っていたお金やカードは使えなかったが、この虚空庫のコピー機能を使えば、元の世界の品物を無限に生み出すことができるらしい。俺たちは、よっしーの能力のおかげで、この世界で生きていくための資金や食料を手に入れることができた。


あと、彼は元いた世界の嫁さんと簡単なメッセージ通信も出来るんだとか???

…なんだよそれ!どんだけ規格外なんだよw



あーさんは、よっしーの出す「未来の産物」に衝撃を受けていた。


「よっしーさんのそれは、魔法ではないの? では、私が今購入した矢も、本数を増やすことは可能なのかな?」


「おう、イケるで! 一度、アイテムボックスの中に入れる必要はあるけどな! あと、MPは一切使わんから、魔法とはちゃうで」


よっしーは、そう言って、あーさんが持っていた矢をアイテムボックスに入れてみせた。すると、矢は光の粒子となって消え、よっしーが手をかざすと、同じ矢が何本も出現した。

「すごい……! こんなことができるなんて……」

あーさんは、目を輝かせて驚いていた。

クリフさんが、その様子を見て、真剣な表情で言った。

「こちらの世界では、収納魔法やアイテムは存在するが、貴殿のようなスキルは聞いたこともないなぁ。それは、稀人の特権か?」

「稀人って何や?」


よっしーが首を傾げる。


「アンタら、別の世界から来た人のことだ」


クリフさんの言葉に、俺は驚いた。


「何や、他にもおるってことかい?」


「そうだな。私も今まで何人か会ったことがあるぞ。国によっては、一定多数存在する所もあるし、何も人間になっているとは限らない」


「マジかよ……魔物とかは嫌だなぁ……」


俺は、思わず口に出してしまった。








- クリフの過去と聖教国の腐敗 -


夕方になり、俺たちはテントを張り、寝袋にくるまって休んでいた。

よっしーの虚空庫のおかげで、俺たちは商人と様々なアイテムを交換することができた。俺たちは、クリフさんの勧めで一応、武器も装備しておくことにした。剣が使えなくとも、受け流すくらいはなんとかなるだろう。

俺たちの手元には、初級冒険者向けの短剣、旅人の服、回復薬ポーション、毒消し、テント、寝袋などが揃っていた。クリフさんも、色々買い込んでいたようだ。

俺は、焚き火を囲んでクリフさんに尋ねてみた。



「なぁ、クリフさん。ちょっと聞いてええか? 何でワイらのことを助けてくれたんや?」



よっしーが、ずっと気になっていたことを、俺の代わりに聞いてくれた。

クリフさんは、焚き火の炎を見つめながら、静かに語り始めた。



「そうだな。私はルーデンス聖教国の民の役に立ちたくて、志願者として兵士になったんだ。だが、いざ入隊してみると、兵士たちは亜人奴隷をおもちゃにしたり、町の店からは商品を脅し取ったり、やりたい放題で腐敗しきっていた。さらに、奴らが自分たちが儲けるため、お前らをよその国の奴隷商人に売り飛ばすと聞いた時、あまりにも非人道的だと思って我慢できなかったんだ」



クリフさんの言葉に、俺たちは言葉を失った。



「ふーん。クリフさんもなかなか立派な考えの持ち主やな。そもそも、ルーデンス聖教国は聖教会が権力を持ってる国やったら、奴隷解放とか、そういうのは今までなかったんかいな?」


よっしーが、さらに尋ねる。


「それはあり得ない。ただで死ぬまでこき使える労働力を、彼らがみすみす手放すわけがない。聖教会の教えでは、我ら平民と貴族は神から選定された者らしいが、亜人や奴隷は家畜と同等の存在とされているので、痛ぶったり、殺したりしたところで、誰も気にも止めないし、処罰されることもない」


「それは、あまりにも酷い話でございますねぇ……」


あーさんが、悲しそうな声で呟いた。

俺たちは、クリフさんの話を聞き、改めてルーデンス聖教国の闇の深さを知った。

(タイトル:さえない俺と、黄昏の異世界。ただし、イシュタムの魂が俺に宿った)





-冒険者との出会い-


俺たち4人で話をしながら山道を登っていくと、またもや急に霧が立ち込めてきた。そのせいで、どんどん視界が悪くなり、歩きづらくなってきた。

ブラックが周囲を警戒していると、クリフさんとよっしーが何かに気づき、俺の方に目を配った。

ゴオォ……


獣の唸り声が聞こえ、霧の中から3匹の野犬が俺たちに襲いかかってきた。俺は驚いた拍子に転んでしまい、尻もちをついた状態で、持っていた短剣を振り回して威嚇した。 


俺が必死に剣をブンブン振り回していると、すぐにクリフさんが剣を抜いて、俺の前に飛び込んできた。

「大丈夫か!?」


野犬どもは、獲物を見るような目で、俺たちの周りをゆっくりと囲み始めた。


「これは、ちょっとヤバイんじゃね……? クリフさん、なんとかしてくれ!」


そう思った時、なんとも言えない、変な笛の音が聞こえてきた。


ヒュルルルル……


その音に、野犬どもは突然怯えだし、慌てて霧の奥へと去っていった。


突如、霧の中から現れたのは、エルフとリザードマンだった。彼らは、俺たちを指差しながら言った。


「なんだこいつらは? 変わった形の顔や、髪の色の人間種だな。なぁ、あんたたち、どこから来たんだ?」

「聖教国だ。助けてもらってあれなんだけど、あんたたちは何者なんだ? どこへ行くんだ?」

俺がそう尋ねると、リザードマンは言った。


「俺たちはスタロリベリオって街から来た冒険者なんだよ。村々を頼って、いくつかの山を越えたセントラシア公国を目指しているんだ」


「冒険者?」


「Eランクだけどな」


俺たちは、彼ら冒険者と共に、焚き火を囲んで休ませてもらうことにした。彼らは、俺たちが持っていない地図を見せてくれて、色々教えてくれた。どうやら、俺たちはユーゲンティアラという国に向かって歩いていたらしい。

俺は、彼らに詳しく聞いてみることにした。


「ルーノ、あんたたちが来たスタロリベリオって、どんな所なんだ?」


エルフのルーノは、ニヤニヤしながら俺たちを見つめ、言った。


「スタロリベリオはユーゲンティアラの南西にある街なんだ。そこはギルドが盛んで、特に商業ギルドが力を持っているかなぁ。あと、屋台などがやたら多く、中央広場の前でよくパレードやコンサート、寸劇みたいなことをよくやってるな」


「へぇ、なかなか文化の高い国のようだな」


俺は、正直、興味が湧いてきた。

ルーノは、ニヤニヤしながら俺たちを見つめ続けた。


「ギルドを知らないってことは、まだ登録はしてないってことだよな?」

「うむ、私はとりあえず仕事を探したいのだが」


クリフさんが、真剣な顔で言った。

「ギルドに登録して依頼を達成すれば、お金を稼ぐことができるぜ」

「依頼? 例えば、どんなことをするんだ?」


俺がそう尋ねると、メルサローネが、俺を睨みつけてきた。


「ハァッ! あんたたちみたいな、野犬程度にビビってる連中に何ができるってんだよ? 特にそこのへっぴり腰野郎!」

俺は、その言葉にマジでブチ切れて、一瞬ぶっ殺してやろうかと思い、メルサローネに近づいて睨み返してやった。すると、メルサローネが掴みかかってきて、取っ組み合いになった。


「まぁまぁっ! ちょっと待ちぃや! お姉ちゃん、お菓子でも食べへんか? 何やったら、コーヒーとケーキもあるで〜っ! ほいで、ギルドの話の続き聞かせてや?」


よっしーが、二人の間に割って入り、虚空庫から森永製菓のミルクキャラメルと不二家のホームパイ、そしてUCCの缶コーヒーを取り出した。


「うわぁ、何それ! 美味しそう〜!!」


メルサローネは、コロッと態度を変え、俺を突き飛ばして、美味しそうにお菓子を頬張りながら、よっしーに説明し始めた。


「まず、ギルドにも種類があって、戦闘能力スキル持ち向けの冒険者ギルドがあるの。このギルドにはランクがあってね、最初はGランクからなんだけど、薬草の原料を採取したり、種の採取をして、ランクを上げてから、少しずつ難易度の高い魔物を退治していってお金を稼ぐの」



ルーノは、**『冒険者ギルドの初級ガイダンス』**という本を見せてくれた。それによると、



* Aランク:シーサーペント、ドラゴンなど、災厄級のモンスター討伐可能。

* Bランク:キメラヴァイパー、ベヒモス、ゴーレムなど、災害級のモンスター討伐可能。

* Cランク:オークジェネラル、ゴブリンチャンプなど、討伐可能。


* Dランク:魔物の群れの討伐ができる。

* Eランク:単体の魔物を一人で討伐できる。

* Fランク:アイテムの材料、原料を見つけることができる。

* Gランク:登録時のランク。


という風に分かれているらしい。また、倒した魔物の毛皮、爪、肉、核などは、ギルドが買い取ってくれるそうだ。


「次に、商業ギルド。ここは、鑑定とか商業マーチャントスキルの人向けで、店を持って商売をする際に、商業ギルドに所属すると、いろいろな恩恵がある。商品を仕入れる際に便宜を図ってくれたり、何かトラブルが起きて商売ができなくなった時などに保証してくれる」


俺は、どちらかというと商業ギルド向けなのかなぁ、と思った。正直、興味がある。


「最後に、生産者ギルド。ここは、錬金術アルケミーのスキルの人向けで、工房で販売用の商品を作ったりしてるの。ルーノは昔、生産者ギルドに登録して、薬師たちが作った回復薬ポーション製作所で働いていたことがあるのよ」


「おいっ! いきなり昔の話で振るんじゃない!」


メルサローネの言葉に、皆が一斉に驚きの表情でルーノを見つめると、ルーノは顔が真っ赤になった。

冒険者3人の話を聞いた後、よっしー、クリフさんと話し合った結果、とりあえず、モンテーヌの町へ行き、その後はスタロリベリオへ向かうことでまとまった。

よっしーは、何か頼み事でもあるかのような態度で、メルサローネたちに近づいていった。


「お姉ちゃんたち、良かったら、ここら辺までワイらを警護してくれへんか?」

「おっけー! それだったら〜」

メルサローネは、いやらしい笑みを浮かべながら手を差し出してきた。ああ、お菓子の催促だろうな。

しかし、ドワーフのロディマスが彼女の手を弾いて、それを遮った。

「メルサローネ、それは駄目だぞ。ギルドからのクエスト外だ。それに見ての通り、そのなんだ、ワシらはルーデンス聖教国とは関わりたくないんだよ。あそこは人間以外は奴隷差別があるだろう」


クリフさんが、横目でチラッと彼らを見て頷き返した。


「聖教国は、大英雄ニーヤ様が国を起こして以来、今日まで人間と奴隷との関係が続いているんだ」

メルサローネは、クリフさんの顔に近づいて、尋ねた。


「ねぇっ! なんで、私たちエルフや、人間以外の種族は奴隷なの?」


「昔、神学校で習ったんだが、太古の昔、天使と悪魔と人間たちが闘った光魔戦争……伝承では3000年位前の出来事とされている。その戦争で、人間たちに勝利を導いたのが、ニーヤという名前の聖戦士だとか。そして、ニーヤ様と共に闘ったのが、人間と亜人。ニーヤ様との約束の元、皆が平等に暮らせる国を作り、平和になったのちに、ニーヤの教え、約束を破った亜人が、ニーヤの教えを守ろうとする人間と戦い、人間が勝った。その結果、ニーヤを神とし、崇め、亜人を約束を破った裏切り者として虐げる、今のあの聖教国の原型が出来たのだそうだ」


クリフさんの言葉に、俺たちは、ルーデンス聖教国の歴史と、その闇の深さを改めて知ることになった。





けると幸いです。

まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。


後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

冒険者ギルドの存在を知り、この世界で生きていくための道筋が見えてきたユウキたち。しかし、彼らが目指すモンテーヌの町への道は、まだ始まったばかりです。

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