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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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名を書き、風を借りる日(前編)

炉は、今日も回っている。


段は怒っている。

「ほどき」は秩序を乱すから。

「職人」が勝手に判断するのは、上からすれば一番都合が悪い。


でも――炉は止められない。

止めてしまえば、声も、歌も、記録も、全部、そこで腐る。


だから私は、怒られながら炉を回し、

怒られながら“家寄り”の調整を入れる。


そんな私に向かって、塔の一行は平然と言う。


「セラを迎えに行こう」

「耳舟と“唄う棹”を貸してくれ」


炉と段の板挟みになっているはずの私が、

気づけば、その提案に「乗り気」になっているのだから、ややこしい。


――今日の記録。

耳舟に乗る。唄う棹を預かる。

塩柱の中に閉じ込められた童を、名で迎えに行く。


職人としても、ひとりの人間としても、

これは、ちゃんと書き残しておきたい一日だ。



本文(前編)


(主人公・相良ユウキ=“綴”の視点)


塔の蔵に朝が差す。砂色の光は紙の端だけを温め、布の目はひとつずつ深くなる。

昨日、砂に書いた名――セラ、ウラ、ルゥ、ダン――は、塔の梁に結び直され、薄い札になって揺れていた。揺れは小さいが、確かだ。名があると、世界は揺れても倒れない。


「朝飯、いこか。動く前に腹ごしらえや」


よっしーが、いつもの調子で虚空庫に腕を突っ込んだ。

取り出されたのは、フライパンと缶詰と食パン――それと、見慣れない四角い箱。


「なんやそれ?」


クリフさんが眉を上げる。

銀と赤の派手なパッケージ。『コーンポタージュ・スープ(フリーズドライ)』と書いてある。


「昭和末期の定番やで~。お湯ぶっかけたら、ええ匂いするやつ」


よっしーが得意げに笑い、さらに虚空庫からアルミホイル包みを二つ。

ひとつはバターの塊、もうひとつは薄切りベーコン。

ついでに、謎の袋入りお菓子まで出てきた。『ポテコ(のりしお味)』。


「……それも、朝ごはん?」


エレオノーラが、半眼で袋を見つめる。


「これは“食後の訓練用”や。指先の油分をどう最小限に抑えるかっていうな」


「訓練と言い張るところが、あんたらしいな」


クリフさんが苦笑し、矢羽根を撫でる手を止めた。

よっしーがバターをフライパンに落とす。じゅ、と音がして、香りが広がった。


ブラックの耳がぴくりと立ち、ニーヤの尻尾がくいっと上がる。


「脂は鈴に跳ねるから遠慮するニャ……と言いたいところやけど、その匂いは反則ニャ……」


「ニーヤさま、よろしければ布をお貸しいたします。鈴を保護なさって、どうぞ」


あーさんが手拭いを差し出す。

ニーヤはたいへん真面目な顔をして鈴をぐるぐる巻きにし――

次の瞬間、ベーコン一枚を器用にぱくり。


「非致死・ほどほど・少し脂多めニャ」


「基準どこやそれ」


俺がつっこむと、よっしーが笑いながら食パンをオイルで焼き、

フリーズドライのコーンポタージュに湯を注いだ。

湯気と一緒に立ちのぼる甘い匂いに、キリアの表情がふっと緩む。


「炉の匂いとは、だいぶ違う」


「そらそうや。“焦げる前”の匂いや」


キリアは小さく笑ってから、真顔に戻った。


「炉は回ってる。段は怒ってる。けれど、回ってる」


そして、少しだけ躊躇してから、俺たちを見た。


「それと――ひとつ、頼みがあるの」


「なんや?」


よっしーがポテコを一粒つまみ、器用に口へ放り込む。


「“耳舟みみぶね”を借りたい。耳で漕ぐ舟。柱都の外縁でしか使えないけど、風のない谷を渡るには一番静かで早い。けど、舟大工は箱の民にされて、舟は段に没収されたまま」


「舟大工の名は?」


「カム。昔、“唄うさお”を作った人」


名が出た瞬間、旗の裾で布目が一つだけ震えた。

家の拍子が「行け」と言った気がした。


「セラ殿を、完全にお迎えするため……でございますね」


あーさんが静かに言う。

キリアは頷いた。


「塩柱から“外へ出した”だけじゃまだ足りない。塩の中に、声のかけらが置き去りにされてる。

唄う棹と耳舟があれば、谷の“向こう側”から声を拾える」


「ええやん。ほな、相棒と耳舟でツーマンセルやな」


よっしーが相棒のボンネットを軽く叩く。平成元年の鉄は、今日も機嫌が良さそうだ。



耳舟のむね


耳舟の棟は、核都の北西外れ、砂に半分埋もれていた。

屋根の梁は低く、壁には楽譜みたいな刻みがある。読むためではない。鳴らすための刻みだ。

風があれば、刻みは笛になり、舟を呼ぶ。けれど、ここはいつも風が薄い。だから、耳で漕ぐ。


棟の扉は祈り札で固められていた。

塔の粉を角にだけ置き、あーさんが水で“躊躇ためらい”をつくり、俺が布で黙詩を押し込む。

扉は戸惑い、そして開いた。


中は乾いていて、香りは良かった。

乾いた木、亜麻の繊維、にかわの甘い匂い。

奥に、細長い舟が三艘、横たわっている。舟の内側には耳石じせきが埋められ、縁には鈴の座が等間隔に並ぶ。耳で漕ぎ、鈴で舵を切る舟だ。


「……カム?」


キリアが呼ぶと、壁の陰から影が立った。

髭は白く、背は曲がっているのに、足はまだ舟の拍子で動ける足だ。喉には薄い紅の痕。

けれど、目は濁っていなかった。


「段の子が、また舟を要るのか」


声は乾いていたが、あざけりはない。職人が職人に向ける声。


「段の“子”ではない。炉の“職人”だよ」


キリアが短く言う。

カムは一瞬だけ笑った。目尻に皺が寄る。


「なら、聞こう。舟でどこへ?」


「風のない谷をひとつ越え、塩柱の“間”に囚われた童――セラを救い出す。……それと、もうひとつ。“唄う棹”を貸してほしい」


その言葉に、カムの瞳が静かに広がる。

彼は歩み寄り、相棒――ハチロク――の横を通るときにちらりと鉄に目をやり、

次の瞬間、舟の舳先を撫でた。


「耳舟は、風の代わりに“名”で進む。棹は“名”を水に書く道具だ。唄う棹は、名を歌にする。……名を書いたか」


「書いた」


俺は頷き、砂に書いた名を思い出した。

あーさんが掌に水を受け、ニーヤが鈴を指で押さえる。


カムは棚から布に包まれた細長いものを取り出し、そっと解いた。

棹は黒檀に似た黒い木で、握りのところに小さな鈴穴が開いている。

穴の縁には、細い糸のような銀が巻かれていた。


「棹は借り物じゃない。“預け物”だ。返す先は舟じゃない。“歌”だ」


「預かる」


俺が答えると、カムは頷き、舟の上に手を置いた。


「舟の名は“耳鳴り”。鈴は三つまで。一つは“行き”、一つは“戻り”、一つは“もしものため”。鈴を無駄に鳴らすな。鳴らないのが上手い舵だ」


「よっしゃ、任しとき」


よっしーが笑う。

平成元年の鉄の運転が上手い人間は、舟の舵も上手いのだろう。

ハンドルは曲がる前にまっすぐを知る。舵も同じだ。


「よっしーさん、船酔いというものは……?」


あーさんが少し不安そうに尋ねる。


「大丈夫や。酔いそうになったらポテコ配給する」


「それは……余計に揺れそうな気がいたします」


ニーヤが真顔でツッコんだ。



風のない谷


耳舟を棟から出す。相棒は外で待機。

よっしーは舟の後ろに座り、鈴の座に指をかける。

俺は唄う棹を立て、舟の前で半歩ずれて“家の拍子”を置く。


あーさんは舟の胴の内側に掌を添え、薄く水を渡す。

ニーヤは帽子の上にブラックを座らせ、鈴の音を半分、布で包む。

エレオノーラとクリフさんは左右の縁に座り、どちらにも傾かないように息を合わせる。

キリアは舟首で目を細め、耳で谷の形を読む。


「名で押す」


カムが短く言い、俺は棹の握りの鈴穴に指を通した。

唄う棹は、握ると微かに熱い。黒檀の奥に、昔の歌が眠っている。


俺は小さく息を吸い、棹の先で谷の床――見えない水の表面――に、名を一つ書いた。


――セラ。


舟は、するり、と前に出た。風はないのに、進んだ。

耳で漕ぐ、というのは、こういうことか。

名は水の形を変え、舟は音のない波に乗る。


「おお……エンジン無しでこの加速か」


クリフさんが低く漏らす。

よっしーが鈴を一度だけ鳴らし、舟の鼻先をわずかに左へ振った。


「ハンドル軽め、路面つるつる、ブレーキききすぎやな。これはこれでオモロい」


「今は“運転の研究”より“転覆の回避”を優先してくれ」


俺が言うと、舟の中に小さな笑いが生まれ、すぐに谷の壁に吸い込まれていった。


エレオノーラとクリフさんの呼吸が重なり、舟は傾かない。

あーさんの掌の水が舟の内側を滑り、ニーヤの耳が谷の“黙音もくおん”を縫う。


谷の壁は近く、天井は低い。

柱都ほど硬くはないが、風の道が細い。

声を出せば、自分の喉に返ってきて溺れる。黙って、詠む。黙って、舵を切る。


「前方に、耳の堰」


キリアが指で示す。薄い膜のような、音の壁。

段が流れを監視するために設けた耳の仕掛けだ。

声を出さず、拍子を狂わせず、半拍だけ“ためらい”を作る必要がある。


俺は棹の先で、水に小さな円を描いた。名ではない、形。

あーさんが掌の水で円を重ね、ニーヤが鈴を布越しに擦る。

よっしーは鈴の座に触れず、舟の重心を背で整えた。


……耳の堰が、わずかにためらい、開く。舟は抜ける。


「ええやん……!」


よっしーの小さな独り言。

彼の肩の力が、すこし抜けたのがわかった。

運転が上手い人間は、道がわかると笑う。



塩柱の


谷の最奥の間は、塩の匂いに満ちていた。

白い結晶が壁から生え、床は霜柱のようにざくざくしている。

中央に塩柱。昨日、名を書き、涙の筋を刻んだ童――セラ――が、また目を閉じていた。


喉は動いている。息はある。けれど、唇は乾いている。


「来たよ」


キリアが口の形だけで言い、あーさんが舟から降りて塩の“目”を避け、

掌の水を一滴、セラの舌に落とした。


ニーヤが風で黒い粉塵を払い、エレオノーラとクリフさんが周囲の“出入り口”を押さえる。

俺は棹を立て、名を、書いた。


――セラ。


塩の柱の中で、名が響き、涙の筋がひとつ、増える。

セラの唇が動く。音は出ない。けれど、形が見える。――“セ”。


昨日よりも、すこし柔らかい形だ。


「出入り口の上、黴のふさ


エレオノーラが顎で示す。

黒い房が塩の“目”にぶら下がり、湿りを待っている。

舟に積んだ水も、あーさんの掌の水も、全部“餌”になる。ここで長居はできない。


「綴って、切る」


俺は旗の裾を塩の“目”に当て、紙針の“背”で黒い房の“付け根”を撫でた。

直接刺さない。背でなぞる。結び目の“勘”だけをずらす。


あーさんが粉を付け根に薄く置き、ニーヤが風で房の“髭”をばらけさせる。

エレオノーラの矢が、房に触れる寸前、羽根だけで“息”を当て、

クリフさんの刃が、塩に触らず房の“根元”の空気を切った。


ほんの数本が、ぽとりと落ちる。

塩の床に落ちた房は、水を吸えず、そのまま乾いた。


「セラ、行こ」


キリアが口の形で言い、セラの目が開いた。

真っ暗な瞳に、ほんの小さな光。

セラは塩の隙間から腕を伸ばし、俺は布でその手首を包んだ。冷たい。けれど、脈はある。


あーさんが掌の水で手を温め、ニーヤが鈴を布越しに一度だけ鳴らす。

塩柱の“目”が、ほんの一瞬だけ丸くなる。――今だ。


セラを抱き上げる。軽い。驚くほど軽い。


「……よっしーさん、お願いできますか」


あーさんが視線で頼むと、よっしーは短く頷いた。


「任せぇ。大事な荷物は、振動少なめでな」


よっしーが舟の縁を押さえ、エレオノーラとクリフさんが塩の“目”の上を見張る。

キリアは舟首に戻り、耳で谷の“黙音”を読む。



耳舟、帰港


「戻る」


俺が棹を立て、名を書いた。――行きの名と同じ。セラ。

行きと帰りは、同じ名でいい。行きで開いた道を、帰りで閉じる。


舟は、するり、と後ろへ滑り、よっしーが鈴を一度だけ鳴らして鼻先を揃える。

あーさんはセラの背に掌を当て、呼吸の拍子を合わせる。

ニーヤは耳を伏せ、帽子の上でブラックが小さく鳴いた。

エレオノーラとクリフさんは、矢と刃を下げたまま、目だけで周囲を弾く。


――その時、谷の天井が、静かに“鳴らない”音で震えた。

黒い房が、まとめて“息を吸った”のだ。第三の糸が、風のない谷で、息を作ろうとしている。


「鈴はまだ鳴らすな」


よっしーの声が、耳の中で静かに通る。背は揺れない。

舟は、不意の流れに寄り添うように進む。


俺は棹の先で名をもう一度、丁寧に書いた。――セラ。

あーさんが掌の水を薄く伸ばし、セラの喉の上に“呼吸の道”を描く。

ニーヤが風で舟の背を押し、キリアが耳で谷の曲がり角を先に“見る”。


黒い房は、降りてこなかった。息を作るのに失敗したのだ。

風のない谷で息を作るのは、家の子でも難しい。まして、名を食べるだけの黴には、まだ無理だ。


棟に戻るまで、舟は一度も鈴を無駄に鳴らさなかった。

よっしーの背中は“等速”で、カムの言ったとおり、鳴らない舵は上手い舵だった。


俺は棹を抱え、舟から降りる。

カムが近づき、セラを見る。目が、すこし濡れた。


「名は、呼ばれたか」


「呼ばれた。セラだ」


俺が答えると、カムは舳先を撫で、唄う棹に指を置いた。


「棹は、歌に返しとけ」


「返す」


俺は棹の握りを“歌”へ向ける。

あーさんが掌に水を受け、ニーヤが鈴を布越しに一度だけ鳴らし、

エレオノーラとクリフさんが“間”を置く。

よっしーは相棒のボンネットに手を置き、キリアは目を閉じた。


唄う棹は、すっと軽くなり、黒檀の奥の熱が、少しだけ小さくなった。

歌が、棹へ戻ったのだ。


「ほな、相棒に乗り換えや。セラ連れて塔へ戻るで」


よっしーが笑い、平成元年の鉄がわずかにライトを瞬かせた気がした。

セラはあーさんの膝の上で目を閉じ、喉の紅の痕が薄くなる。名を呼ばれると、紅は薄くなるのだ。



反響――そして塔へ


塔へ向かう紙道は開いた。

けれど、入口の上に、昨日はなかった“継ぎ目”が一本、細く走っていた。黴ではない。

紙が紙を押し返した“ひずみ”。柱都で半拍ほどいた“返り”が、ここまで届いているのだ。


「結び目、二つ残して、一つほどく」


俺は旗の裾を結び目に当て、布の目で“躊躇”を作った。

あーさんが水で丸め、ニーヤが風で“返り”を逃がす。

エレオノーラが矢で“拍”を落とし、クリフさんが足で“戻る道”の重さを足す。

よっしーは相棒のエンジンを止め、紙の耳を静かにする。


……継ぎ目は眠り、紙道は口を開いた。


「ただいま」


塔の扉が開き、ルゥとダンが駆けてきた。

セラを見て、二人の目が丸くなり、次の瞬間、泣き笑いになった。

名で呼ぶ。“セラ”。呼び習いの声は、音にならなくても、目でわかる。


塔の梁の札が揺れ、家の拍子がひとつ増える。


その夜、火のそばでセラが小さな声を出した。

乾いて、けれど、確かな声だ。


「……セラ、です」


あーさんが掌を重ね、目を潤ませて笑った。


「はい。セラ殿」


よっしーは「やったなぁ」と笑い、ニーヤは尻尾を立てた。

エレオノーラとクリフさんは目を閉じて小さく頷き、

キリアは職人の目で“音程”を確かめるみたいにセラの声を聞いた。

カムは舟の棟で灯りを落とし、遠くの砂は今日も冷え始める。



《E・S:五頁》


夜更け。旗の裾がまた、するりと軽くなり、一枚の紙が落ちた。《E・S:五頁》。


“舟は名で進む。

名は呼ばれて進む。

呼ぶ者がいなければ、名は立ちすくむ。

立ちすくむ名に、橋を。

橋は重ねよ。細く、長く、低く。”


紙を読み上げると、あーさんが胸に手を置いた。


「橋は、低く」


「高い橋は見栄えがええけど、風に弱いわな」


よっしーが笑い、

ニーヤが「低い橋は、猫でも渡れるニャ」と誇らしげに言う。


エレオノーラは矢を一本だけ撫で、クリフさんは短く「心得た」と呟いた。

キリアは紙を見て、静かに頷く。


「炉に貼っておく。“高く組みたがる”人たちへの、ちょっとした嫌がらせに」


「それは良い“職人仕事”だな」


俺は笑い、旗の裾を握った。

布目は、今日も整っている。


――


(前編 了)



前編あとがき


耳舟と唄う棹で、

「名で舟を漕いで、塩柱からセラを連れ戻す」前編パートでした。

•よっしーアイテムBOXから昭和末期の朝食(コーンポタージュ+ポテコ)

•耳で漕ぐ舟と、声を出さない“黙詩”の操船

•風のない谷での、声を封じたやり取り

•塩柱の中からセラを抱き上げる瞬間

•そして《五頁》の「橋は低く」の一文


戦い自体は派手ではなく、

「名を呼び続ける」ことそのものが戦い、という回になっています。


後編では、この流れから

•カム自身の奪還

•影の教会、記録庫

•砂舟+相棒の追走


へと広がっていきます。



用語ミニ辞典(前編)


耳舟みみぶね

風の代わりに「名と鈴」で進む特製の舟。

•舟の内側に耳石が埋め込まれており

•名を“水に書く”ことで、その名の方角へすべるように進む

•鈴座で舵を細かく調整する


音を立てにくいので、風のない谷や監視の厳しい区画での移動に向いている。



◆唄ううたうさお

耳舟専用の棹。

•黒檀のような黒い木で作られ

•握りに小さな鈴穴+銀線の巻き


棹の先で「名」をなぞると、その名が一時的に“歌”として水に刻まれ、舟を押す力になる。

使い終えると、「歌を棹に返す」儀式で熱を落ち着かせる必要がある。



◆風のない谷

柱都の外縁に広がる、

•風がほとんど通らない

•声を出すと自分の喉に跳ね返ってくる

特殊な地形。


ここでは

•声ではなく「黙詩」

•足の重さ・鈴・水の拍子

でやり取りする必要がある。



◆耳のみみのせき※再登場

音と詩をせき止める“音のダム”。

•通過する音を耳石に貯め込み

•写音炉や記録庫へ送る役割


今回は、

耳舟で近づき、「名ではない小さな円」と水・鈴で“ためらい”を作り、

その隙を通り抜けている。



◆塩柱の間 & 乾きかわきかび※再登場

塩柱:

•水分がほとんどなく

•代わりに「水を求めて」歪んでいる柱


乾き黴:

•水を見つけると一気に広がる

•塩の“目”を伝って、中へ潜ろうとする


今回は、

•名を呼ぶための“最低限の水”

•粉で結び目を守る

•黙って綴じて、背でなでる

という“ギリギリの綱渡り”で、セラの身体と声を引き離している。



◆《E・S:五頁》「橋は低く」

E・Sから届いた五枚目の指針。


「立ちすくむ名に橋を。橋は重ねよ。細く、長く、低く。」


という一文は、

•派手な“高架橋”ではなく

•猫でも、子どもでも渡れる“低い橋”を重ねていくこと


こそが、今回の「名を救う戦い」の基本方針だと示している。


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