第4話 初めての眷属(そして始まる俺たちの戦い)
(主人公・相良ユウキの視点)
国境を越え、俺たちはモンテーヌという町を目指し、再び山道を歩き始めた。手枷は外され、クリフさんも傷が癒えて、足取りはしっかりしていた。だが、心の中の不安は消えない。俺たちがこれからどうやって生きていけばいいのか、この世界で何ができるのか、まるで光が見えないトンネルの中を歩いているようだった。
そんな俺たちの後ろを、一羽のカラスがずっとついてきていた。
「マジで何なんだよ、あのカラス?」
俺は、頭上の枝に止まっているカラスを見上げて呟いた。
「うむ、先程からずっとついてきている気がするのだが」
あーさんも首を傾げ、クリフさんも、訝しげな表情でカラスを見つめている。
「おう、一体何をバタバタさせとるんやろか?」
よっしーも、首を傾げている。
俺は、ポケットに忍ばせていた干し肉を思い出した。旅の商人から分けてもらったものだ。試しに、その干し肉を少しだけカラスに差し出してみた。
すると、俺の目の前に、またもやゲームのような表示が現れた。
『山カラスを眷属化しますか? YES/NO』
「おおっ、もしかして、こんな感じで魔物を仲間にできるのか!?」
俺は、この能力に驚きを隠せない。テイマーとしてのスキルが、こんな形で発動するとは。
「おい、ユウキ! なんやその表示は!」
よっしーが、俺の背中から身を乗り出して、画面を覗き込む。
俺は、迷わず「YES」を選択した。すると、すぐに次の表示が現れた。
『山カラスの眷属化に成功しました。続いて、名前を付けてください』
「名前か……」
俺は、カラスの真っ黒な羽を見て考えた。
「よし、お前は……黒。ブラックだ」
俺がそう告げた瞬間、カラスは眩い光を放ち始めた。
「な……なんだこれ!?」
光は徐々に強くなり、俺の視界は真っ白になった。
「おいっ、ユウキ! 大丈夫か!?」
耳元で、よっしーの声が聞こえる。
「なん……だよ、一体どうしたんだ?」
俺は、ゆっくりと目を開けた。目の前には、心配そうな顔をしたよっしーと、驚いた表情のクリフさん、そして怯えているあーさんがいた。
「おお、目覚めたか。どうやら君、ユウキ君は、あの魔物を使役する代わりにSPを消費するようだな」
クリフさんが、冷静な口調で分析する。
「まさか、魔物を仲間にできるんか? そりゃとんでもないワザやで! ほんならドラゴン狩りに行こうやーっ! ワイ、一度ドラゴンに乗ってみたいわ」
よっしーが興奮した様子で叫ぶ。
「えっ、ドラゴンって……」
俺は、よっしーの言葉に呆気にとられる。そんな簡単にドラゴンに会えるわけないだろう。
その時、目の前の枝に止まっているカラスが、俺に向かって、口から淡い光の玉を吐き出した。光の玉は、俺の体に触れると、じんわりと温かくなり、疲労が回復していくのを感じた。
「おい、まさか……今のは回復魔法か!?」
俺は、驚きを隠せない。カラスが魔法を使うなんて、聞いたことがない。
「ユウキさん、あのカラス、色が……」
あーさんの声に、俺は改めてカラスを見た。
さっきまで真っ黒だったカラスは、真っ白な羽に変わっていた。目が赤と緑のオッドアイになっていて、どこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
これは、俺のスキル**「進化促進」**が発動したのか?
俺は、すぐにブラックのステータスを確認した。
ブラック
* 種族:白鴉
* レベル:1
* HP:28
* MP:32
* SP:0
* 攻撃:15
* 守り:18
* 速さ:21
* スキル:風魔法、水魔法
* 進化:条件を満たしていません
* 加護:なし
「やっぱり進化してる……!」
山カラスから**「白鴉」**へと進化していた。しかも、魔法が使えるようになっている。これは、マジでとんでもないスキルだ。
俺は、ブラックの身体を撫で回した。ブラックは、俺に懐いてくれたのか、俺の手に身を寄せてきてくれた。
「よし、ブラック! これから、俺たちの仲間として、一緒に戦ってくれ!」
ブラックは、「クァッ!」と鳴き、俺の肩に止まった。
- 初めての戦いと、男たちの妄想 -
俺たちは、ブラックという新たな仲間を加え、再び歩き始めた。
道中、山ネズミやスライム、ツノ兎といった低級魔物が、俺たちに襲いかかってきた。しかし、俺たちはもう、ただ怯えているだけではなかった。
「クリフさん、お願いします!」
俺の合図に、クリフさんが素早く剣を抜く。彼の剣は、鋭く、正確で、魔物を次々と斬り伏せていく。
「ブラック! 水魔法だ!」
俺が叫ぶと、ブラックは口から水の弾丸を吐き出した。水の弾丸は、スライムに直撃し、スライムは悲鳴を上げて溶けていった。
「ユウキさん! 私も!」
あーさんも、ブラックの魔法に触発されたのか、水の魔法を使って、魔物を撃退し始めた。
「やるやんけ、みんな!」
よっしーは、その様子を見て、嬉しそうに笑った。彼の**「虚空庫」**には、討伐した魔物から剥ぎ取った素材や、使えそうな武器などがどんどん収納されていく。
俺たちは、初めての戦いを、なんとか乗り越えることができた。
「ユウキ君の能力、本当にすごいな!」
クリフさんが、俺の肩を叩いて言った。
「そうやなぁ! それやったら、エロいお姉ちゃんの魔物ゲットしまくったらどないや? そしたら、お前ウハウハやないか!!……ふひひひ」
よっしーが、ニヤニヤしながら俺に耳打ちする。
「おいおい、そんな魔物、いるのかよ?」
俺がそう返すと、クリフさんが親指を顎に当てて、真面目な顔で言った。
「うむ、…例えばサキュバスとか、マーメイドとだな」
「おう、そうなったらユウキの異世界バコバコ生活の始まりやんけ!」
「よし、ユウキ君はそれを目標に……」
「しねーよ!」
俺は、男二人のしょうもない妄想にツッコミを入れた。
あーさんは、そんな俺たちのやり取りを見て、少し顔を赤らめて微笑んでいた。
「テイマー」としての覚醒
俺たちは、その後も順調に魔物を討伐しながら、モンテーヌを目指していた。
その夜、俺はブラックを撫でながら、自分の能力について考えていた。
「テイマー」というクラス。これは、この世界では珍しいものなのだろうか? 俺が持っている**「眷属化」や「進化促進」**といったスキルは、この世界でも貴重なものなのだろう。
もし、この能力をうまく使えば、俺たちはこの黄昏の異世界で、生き抜くことができるかもしれない。
「よし、もっと強くなるぞ!」
俺は、心の中でそう誓った。
翌日、俺は再びスキルを使って、森の中にいる魔物を探した。
【探索】
すると、マップ上に、何匹もの魔物の反応が表示された。
「よし、行くぞ!」
俺は、皆にそう告げ、魔物のいる方へと向かった。
俺たちは、クリフさんの剣と、ブラックの魔法、そして俺たちの連携で、次々と魔物を倒していった。俺も、少しずつこの世界での戦い方に慣れてきた。
「ピコーン!」
その時、俺のステータスに変化が現れた。
『レベルが上がりました。ユウキのレベルが2になりました』
俺は、初めてのレベルアップに、喜びを隠せない。
「やったぜ!」
俺が叫ぶと、皆が俺の元に駆け寄ってきて、俺のレベルアップを喜んでくれた。
「よかったな、ユウキ!」
「おう! この調子でどんどん強くなっていこうぜ!」
俺たちは、モンテーヌの町を目指し、再び歩き始めた。
この黄昏の異世界で、俺たちは、ようやく希望の光を見つけ始めたのかもしれない。
後書き
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ユウキたちは、無事にモンテーヌの町にたどり着けるのでしょうか? そして、彼らを待ち受ける運命とは……?