-地底探検の章- 第二十三章「蛇影の討伐」
バジリスクの眼光が再び光を放つ。
だが今度は、二鈴の撓めが響き渡り、その直線は仲間を外れた。
「……今だ!!」
ユウキが剣を振りかざし突撃する。
クリフがその背を守るように盾を構え、矢を番えて連射。
ニーヤの火弾が連鎖して爆ぜ、リンクが疾風脚で顎を蹴り上げた。
石床を揺らす巨体がたじろぐ。
「押し込めるニャ! もっといける!」
「了解だ!」
ユウキが剣を突き出す瞬間、巨蛇の尾が振り下ろされた。
死角から迫る大質量。
「やばっ!」
その尾を竹槍で逸らしたのはカエナ。
「へへ、見たかよサジ!」
「お、おう! お前が突っ込むから俺が撒菱で援護だ!」
足元では、サジの仕掛けた罠が蛇の鱗を削り、動きを止めていた。
「お二人とも……頼もしき限り」
アーサンが静かに礼を告げる。
ノクティアは詠唱を終え、光の槍を掲げた。
「堕ちよ、暗き蛇影――《聖浄槍ルーメン》!」
放たれた光が蛇のもう一つの眼を貫き、視線の呪縛が途切れる。
「今だ、総攻撃!!」
ユウキの叫びに、仲間全員が一斉に飛び込む。
クリフの刃が鱗を割り、リンクの連撃が首筋を揺らし、ニーヤの火弾が口腔へ叩き込まれる。
よっしーの89アイテムボックスから取り出されたのは――工事用のチョークライン。
「おらっ! マーキングや!」
蛇の喉元に赤い線が走り、狙いが定まる。
最後に、ユウキが跳び上がり、仲間の声を背に剣を突き立てた。
「……これで、終わりだぁぁぁっ!!」
鋼鉄のような鱗を破り、刃が深々と突き刺さる。
バジリスクの絶叫が地底を震わせ、巨体はのたうち、やがて石床に沈んだ。
長き一瞬の静寂。
やがて、誰からともなく歓声が漏れた。
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◆戦利品
倒れたバジリスクの奥に、石棺のような宝箱が現れる。
鍵穴はなく、蝶番をなだめるようにアーサンが二鈴を揺らすと、静かに開いた。
「……おおっ!」
よっしーの目が輝く。
中にあったのは――
•《軌跡の槍》(装備者の突進に光の残影を与える神槍)
•《魔破の剣》(魔力障壁を切り裂く青き刃)
•《颯のリング》(素早さ+回避性能を飛躍的に高める指輪)
「すごい……これは本物の財宝だ!」
ユウキが声を震わせる。
「おいおい、誰がどれ使うんだ?」とクリフ。
「わたしは槍がよいかと」とノクティアが手を伸ばすと、みんなも頷いた。
ニーヤが指輪を羨ましそうに見ていると、よっしーが懐から小袋を取り出した。
「ほな、ニーヤにはコレや。……ねるねるねるね、へっへっへ」
「なんですかニャこれ!? でも甘い……おいしいニャ!!」
笑い声が石窟に響き、戦いの緊張がほどけていった。
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→ 次回、
「第二十四章/黒糸の扉」
いよいよこの地下迷宮の核心へ――。




