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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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-地底探検の章- 第二十章 続編「水路と蛇影」

前書き(カエナ視点)


 うむ、サジは口ばっかりでドジばっかり。

 でも、なんやかんやでちょっと頼りになっちゃうのが腹立つんだよな。

 アタシ? カエナ。忍びの里出身の竹槍ガール!


 じめじめした地下水路に入った時は、さすがに気が滅入りそうになった。だってさ、暗いし臭いし、足場はぐちょぐちょだし。

 でも仲間がいると……なんだろ、ワクワクすんだよね。サジが木刀を振り回して「俺が守る!」とか言ってるのを見てるとさ、こっちも「負けてらんねー」って思っちゃう。


 さっきもあの人、見事に蛇を叩き落としてた。偶然だろうけど、仲間が「やるじゃん!」って褒めてて、アタシまでなんだか嬉しくなったりして。

 でも負けねーぞ。今度はアタシがカッコよく決めてやるんだから!







本編


 水音が反響する。地下の石造りの通路は迷宮のように伸び、苔むした壁から滴が落ちていた。


 その奥で――「ゴゥゥゥ……」と低い唸り声が響く。

 次の瞬間、闇を裂いて巨大な影が飛び出した。


「……バジリスク、か!」クリフが低く唸る。


 鱗に覆われた巨体が水路を塞ぎ、黄色い双眸がこちらを睨む。

 その背後からは、影のような小型蛇が次々と這い出してきた。まるでモンスターハウス。


「サジ、罠は!?」「とっくに仕掛けてある!」


 次の瞬間、巨蛇が踏み込んだ床石が沈み――ガシャリと落とし格子が降りた。

 小蛇たちの動きが一瞬止まり、仲間がそこへ一斉に斬り込む。


「うぉらぁぁっ!」

 サジが木刀を振り回し、小蛇の一匹を壁に叩きつける。偶然なのに、妙に決まって見える。


「サジ、やるじゃん!」カエナが叫んだ。

「へっ、俺を誰だと思ってんだ!」


 その言葉に勢いを得て、カエナも竹槍を構えて突撃する。

 ――だが足元の水苔に滑った。


「うわっ――!」


 槍がすっぽ抜ける。

 だが、その軌道は奇跡的に巨蛇の片目を正確に突き刺していた。


「グギャアアアアア!!!」


 巨蛇がのたうち、影の小蛇が一斉に霧散する。


「……お前、狙ってやったのか?」ユウキが唖然とする。

「ま、まあな!」カエナは必死に胸を張った。


 ニーヤが小さくため息をつく。「ドジでも結果オーライですニャ……」

 よっしーは爆笑しながら、1989年アイテムの紙コースターで汗を拭った。


 最後はクリフの矢が巨蛇の喉を貫き、ブラックの風魔法がとどめを刺した。

 巨体は水路に崩れ落ち、静寂が戻る。


―――――――――――――――――――


宝箱と戦利品


 水路の奥、祭壇の前に置かれた古びた宝箱。

 ユウキがそっと開けると――

•《蛇影の短剣》:影歩きの効果を持つ。忍び向き。

•《蛇避けの環》:毒耐性を強めるリング。

•《黒糸の核》:禍々しい珠。微かに脈打ち、深層への道を示す。


「よし、当たりやな!」よっしーが歓声をあげる。

「お、短剣はアタシに似合うんじゃね?」カエナがにやにや笑う。

「いや、俺だろ!」サジがすかさず食ってかかる。


 二人の小競り合いに、仲間たちは苦笑する。

 ユウキは静かにその黒い珠を見つめながら、胸の奥でつぶやいた。


 ――やっぱり、仲間がいるって、いいもんだな。


 そして珠が脈打つたび、さらに深き地下への気配が漂っていた。


―――――――――――――――――――



あとがき


 サジとカエナのドタバタで笑いを取りつつも、蛇影の巨蛇は討伐完了。

 だが祭壇の「黒糸の核」が示すのは、より深い階層――次なる黒糸の門である。


 次章:黒糸の門──いよいよ地下世界編の核心へ。

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