地底探検の章:石喰らいの間
通路を抜けた一行の目に飛び込んできたのは、広間だった。
天井から垂れる鍾乳石、床には水の溜まり。
だがその静けさは──一瞬で破られる。
「おーい! そっち大丈夫かー!」
無遠慮に響く声。
ユウキたちが目を向けると、岩陰からひょっこり顔を出したのは 竹槍を背負ったおかっぱ頭の少女・カエナ。
その背中から遅れて、木刀を肩に担いだ 坊主頭の少年・サジ も現れた。
「……なんでお前らがここに!?」
ユウキが目を剥く。
サジは気だるげに鼻を鳴らす。
「ったく、オレらだって頼まれたんだよ。『お館さま』の命令だ、しゃーねえだろ」
カエナはケラケラ笑いながら槍を振り回した。
「そうそう! あたしたちが加われば百人力だよ! ……たぶん!」
その瞬間、足元の水溜まりが不気味に波立った。
石壁がきしみ、闇の中からうねる巨大な影──
バジリスク の鱗が光を反射する。
「げっ、マジで出やがった!」
サジが木刀を握り直す。
「カエナ、行くぞ!」
「おー! あたしたちの見せ場だね!」
ふたりが飛び出すその姿に、ユウキたちは思わず顔を見合わせた。
──確かに頼りない。しかし、ジギーの門徒として鍛えられた技は、決して見せかけではない。
地底探検の章:石喰らいの間(続)
サジが木刀を構え、カエナが撒菱の袋を放り投げた。
「よしっ、これで足場を固めるぞ!」
ジャララララ──鍾乳石の床に散らばる鋭い鉄片。
バジリスクはうなり声を上げて踏み込んだ瞬間、その巨体がバランスを崩す。
「いまだ! リンク、魔法を!」
ユウキの声に応じ、黒鳥ブラックの風刃が飛ぶ。
ニーヤの火弾が爆ぜ、鱗の隙間を焼いた。
「さすがに効いてるな……」
クリフが剣を構えて前に出た、その刹那。
「うわわっ!」
カエナが竹槍に足を引っ掛けて派手に転んだ。
だが、その槍の穂先は偶然にもバジリスクの片目に突き刺さる。
「ぎゃアアアアアッ!」
怪物は絶叫し、巨体をのたうたせた。
「お、おれの撒菱が効いたんだな!」とサジが強がる。
「いや、カエナの“転び芸”だろ……」
よっしーが呆れ顔をする。
「な、なんだとー!? これは作戦通りだし!」
真っ赤になって怒鳴るカエナ。
クリフが深呼吸して頷いた。
「……ふむ、結果的にだが見事な連携だった。これで仕留められる!」
その言葉に呼応するように仲間が一斉に攻め込み、ついにバジリスクは崩れ落ちる。




