286/404
地底探検の章:冷気の通路
地底探検の章:冷気の通路
石の階段を一段下りるごとに、湿り気を帯びた冷気が肺を刺す。
ユウキは、喉の奥で言葉を飲み込んだ。暗く、重く、息が詰まる──。
「……また、オレの苦手な空気だ」
胸の奥で小さく呟いたその声を、クリフは聞き逃さなかった。
「ふむ。だが心配はいらぬ。我らが背を並べておる」
真っ直ぐに響く言葉。
ユウキは前を見据えようとしたが、なお躊躇う。
そのとき背後から、あーさんの澄んだ声が重なった。
「ユウキ様。鐘を鳴らさずとも蝶番は外せましょう。ためらうより、一歩をお運びなさいませ」
その礼儀正しい断言に、背筋を押される感覚が走る。
さらに、よっしーがぼそっと付け足す。
「グズグズしとったら、オレらまで足止め食らうんや。行けや、ゴボウ」
「だ、誰がゴボウだ!」と返しつつも、ユウキは思わず笑っていた。
仲間の声が、冷たい闇を少しだけ和らげる。
「……そうだな。オレは一人じゃない。行くか」
湿った石壁に掌を当て、ユウキはゆっくりと通路へと踏み出した。




