-地底探検の章- 「仲間と水路へ」
地下階段を下りる前、短い休憩の時間があった。
そこへやって来たのは、ジギーの門徒から預かった二人──坊主頭のサジと、おかっぱ頭のカエナである。
「……なんかよ、めんどくせーんだよな、こういうの」
背中に木刀を背負ったサジが、あからさまに渋い顔をした。
「いいじゃんサジ。アタシらも一回くらいは潜ってみてーし!」
竹槍を肩に担ぐカエナは、悪戯っぽく笑う。
ユウキは苦笑しながら「お前ら、ホントに大丈夫か?」とだけ言った。
その横で、クリフが腕を組み、ふむと短く息を吐いた。
「若さは時に力となる。……だが無謀では困るぞ」
「へーい、親方」
「俺は親方じゃない」
二人のやり取りに、よっしーが「おぉ、漫才コンビみたいやな!」と笑いを取る。
さらに、ゆったりと僧衣を整えながら歩み寄ったのは、元吸血僧侶ノクティア。
「改めまして……僧籍にあった身ですが、今は皆さまと歩みを同じくする者。どうか力を尽くさせていただきます」
深々と礼をする彼女の姿に、あーさんが二鈴を軽やかに鳴らして応えた。
その空気をさらに乱すように、二人の影が現れる。
「……危険は承知の上だ。だが記録と検証のため、同行させてもらう」
硬い口調の青年、セドリック。
「ふん、だれがあんたなんかと組むか!」
すかさず隣の少女、イルマが反発する。
「また始まったでぇ」
よっしーが頭を抱え、「こりゃ凸凹コンビやな!」とぼやいた。
ユウキは思わず吹き出しそうになりながらも、心の奥では安堵を覚えていた。
──不器用なオレだが、これだけの仲間がいる。
「主人、胸を張るのですニャ!」
ニーヤが鋭い声で喝を入れる。
「……ああ、わかってる」
ユウキは頷き、たいまつを掲げた。
冷気が流れる石段を、全員が一列になって下り始める。
ぽたり、ぽたりと滴る雫の音が闇に響き、たいまつの炎が頼りなく揺れた。
ノクティアが光魔法を紡ぎ、足元を優しく照らす。
セドリックは手帳を広げ「構造は……人為的だ」と書き込み、イルマは「くだらない観察してないで前見ろ!」と突っ込む。
その光景を見守りながら、クリフが一歩前に出た。
「行くぞ、皆」
ユウキは胸の奥に熱を抱え、静かに頷いた。
(俺はもう、一人じゃない。仲間と一緒に──どこまでも進める)
闇の底から吹き上がる湿気が、次なる試練を告げていた。
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→ 次回、「蛇影と眼光(前編)」へ。




