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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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-地底探検の章- 蛇影と眼光(後編)



 地響きとともに、バジリスクが頭をもたげた。黄金の眼が怪しく光る。


「目を合わせるな!」

 あーさんが鈴を震わせ、仲間に警告を飛ばす。


 クリフが弓を引き絞り、矢を放つ。だが鱗に弾かれ、火花が散った。

「くそっ、堅い!」


「任せるですニャ!」

 ニーヤの火弾が轟き、バジリスクの首元を灼いた。しかし巨体は怯むどころか、さらに勢いを増して突進してくる。


 ユウキは剣を構えた。

「お、オレだって……!」


 次の瞬間、彼の足が床の石に引っかかり、盛大にすっ転んだ。


「ユウキ!」

 仲間たちが声を上げる。


 その勢いでユウキの剣が手から離れ、宙を舞った。

 刃はくるくると回転しながら、まるで導かれるようにバジリスクの片目へと突き刺さった。


 ――ズブッ!


 黄金の眼が砕け、バジリスクが絶叫する。


「な、なんや……会心の一撃やんけ!?」

 よっしーが目を丸くした。


「偶然にしては……やるですニャ」

 ニーヤが呆れ顔をしながらも尻尾を揺らす。


 クリフが大きく頷いた。

「見ろ、ユウキ。おまえの一振りが仲間を救ったんだ。狙ってなくとも、それが今の答えだ」


 ユウキは尻もちをついたまま、目を見開いた。

 ――オレは、不器用で、失敗ばかりだ。

 でも……仲間がいる。支えてくれる声がある。

 その中で、偶然でも一撃を入れられたなら、それはきっと意味がある。


「……よし! もう一度立ち上がる!」

 ユウキは剣を握り直し、立ち上がった。


 バジリスクは怒り狂い、石を砕いて暴れ回る。

 だが片目を失った巨体は、もはや脅威ではなかった。


 リンクが宙から疾風の脚で蹴りを叩き込み、ブラックの水刃が首筋を裂く。

 そして最後にクリフの矢が喉元を貫き、バジリスクは地に沈んだ。


 静寂が戻る。


「……やったのか?」

 ユウキが呟く。


 あーさんが二鈴をそっと鳴らし、頷いた。

「鐘は鳴らさせませぬ。……蝶番は、外せました」


 仲間たちは顔を見合わせ、そして一斉に笑った。


 ユウキも、ようやく照れ臭そうに笑みを浮かべる。

 不器用でも、仲間となら。前へ進める――そう思えた。

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