歓迎会
ユウキがフォークを置き、場を見渡した。
「うむ、せっかくここまで来たんだ。ノクティ──いや、“ノクティ”の歓迎会なんてどうだろ?」
「ノクティ……?」
思わぬ呼び名に、ノクティアは目を瞬かせたが、次の瞬間ふっと肩の力が抜けた。
「……ああ。そんなふうに呼ばれるのは、悪くありませんね」
「ほんなら決まりや!」よっしーが立ち上がる。
「飲み屋はこの学園にもあるんやろ、ミカ?」
「はい、地下のBARラウンジを開けておきました」
ミカの指先が光を描くと、通路の奥へ誘うように扉が開く。
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学園BARラウンジ
そこは、木目調のカウンターと柔らかな灯りが満ちる空間だった。
樽から注がれるエールに、香ばしいつまみの皿。奥の棚には、未来じみたグラスや瓶も並んでいる。
「おぉー! ここええやん!」
「これは……まことに洒落ておりますな」
あーさんが小鈴を鳴らして席をすすめると、次々にジョッキが運ばれてくる。
「ノクティ、かんぱーい!」
「……かんぱい、という儀式……面白いですね」
ぎこちなくジョッキを掲げる吸血僧侶。その姿に皆が笑い、場は一気に和む。
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しれっと乱入組
そのとき、奥の扉が開いた。
「ちぃーっす、なんか面白そうなことしてんな」
坊主頭のサジが肩をすくめて入り、後ろからおかっぱ頭のカエナが顔を出す。
「おいおい、勝手に入ってきたな!」クリフが眉をひそめる。
「いいじゃんいいじゃん。飲み会だろ? あたしらも混ぜろっての」
「……めんどくせーな」サジが低くぼやく。
だが次の瞬間、よっしーが空気を変えた。
「まーまー! 座れ座れ! おもろい連中は大歓迎や!」
ジョッキがぶつかり合い、泡が飛び散るそのとき──。
突然、天井に魔力の揺らぎが走った。
「よぉ、ダーリン!!」
場を割るような声が響き渡る。
「ルフィ…ええとこ来たの、今歓迎会の最中や」
「コレは私のための食事会か!! 食いまくってやるぞ!!」
空間から姿を現したのは、金色の髪を揺らす無邪気な少女──ルフィだった。
腕を組み、大声で笑いながら、当然のように空いた席へと腰を下ろす。
「ま、待てルフィ!? これはノクティの歓迎会で──」
ユウキが慌てて制止しようとするが、彼女は豪快に手を振った。
「がーはっはっは! 細けぇことはどうでもいい! 飯は皆で食えばもっと美味いんだろ!? ゴボウ男はチンケなやつだなぁ!」
ルフィはユウキの肩をばんばん叩きながら、豪快に笑った。
「だ、誰がゴボウ男だ!」
顔を真っ赤にして叫ぶユウキ。
「チッ……馬顔呼ばわりは我慢ならんぞ!」クリフも立ち上がるが、ルフィは気にも留めない。
「馬顔男! お前は飲み物でも運んでこい!」
「誰が馬顔だ!!!」
「……ニャァ、まったく騒がしいですニャ」ニーヤが耳を伏せて呆れた声をあげる。
リンクは「キュイ!」と楽しそうに跳ね、ブラックは無言のまま翼をぱたぱた震わせて不快を表した。
一方で、よっしーはにやりと笑い、ポケットから何やら怪しい袋を取り出す。
「まぁまぁ、こんなときはコレや! ねるねるねるね──いや違う、今日はこっちや!」
ぱっと出したのは、駄菓子の小袋。
「うわっ……また妙なモノを」
ノクティアは目を瞬かせる。
「……だが、甘い匂いだな」
「ほれ、食うてみぃ! 未来も過去も関係あらへん。みんなで食うたら美味いんや!」
こうして、学園の夜はさらに賑やかになっていった──。




