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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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山奥の野湯再び!


まだ朝靄の残る学園の石畳に、一行が集まっていた。

 昨日の地底探検から戻った後、BARで飲みすぎたのか、よっしーが頭を押さえて呻く。

「うぅ……二日酔いや……ダーリンは休肝日が必要やな……」


「自分で言うんですニャ」ニーヤが耳をぴくぴく動かして笑う。


 ノクティアは涼しい顔で槍を支えていた。

「夜明けは清浄です。飲み疲れた身には、これほどの癒しもありません」

その落ち着きぶりに、昨夜とのギャップで皆が感心する。



野湯の話題


「そういえば──」ニーヤが口を開いた。

「山奥に、前に寄った野湯があるですニャ。猫人族しか知らぬ隠れ湯ですけど……あれは良かったですニャ」


「野湯か!」クリフが大きく頷く。

「旅の疲れを癒すには最適だ。どうだ、皆で立ち寄らぬか」


「ええやん!」よっしーの目が一気に輝く。

「肩こりも治るやろ!」


ユウキも笑みを浮かべた。

「ああ、いいかもしれないな。……それに、その近くに“モンテーヌ”って町があったよな?」


 その名を出すと、一行に少しだけ緊張が走る。

あまり良い雰囲気ではなかった街。門番が平然と賄賂を求めてきた、あの場所だ。


クリフは腕を組み、真剣な顔になる。

「ライラ……あの娘はどうしているかな」


 山道を分け入ることしばし、木々の合間から白い湯気が立ちのぼっていた。

 静かなせせらぎと鳥の声に混じって、岩肌から湧き出す温泉の音が耳に届く。


「おぉ〜! ここやここ!」

よっしーがタオルを肩にかけ、湯船を見つけて大声をあげる。

「野湯っちゅうのはな、最高やねん! ……肩こりも腰痛もまとめて流れるんや!」


「……よっしー殿、年寄り臭いですニャ」

ニーヤが尻尾を揺らしてクスクス笑う。


「わたくしは……これは“あいすくりん”より不思議でございます」

あーさんはそっと湯に指を浸し、その温かさに目を見開く。

「自然が、かような御馳走を生むなど……」



入浴シーン(ほどほど)


「はぁ〜〜……生き返るわぁ!」

よっしーが首まで浸かり、肩まで湯に沈んでうっとりしている。


「うむ、これは良い。疲れが溶けていくようだ」クリフも満足げに湯に身を沈める。


「キュイ!」リンクは岩場からぴょんと飛び込み、バシャッと水しぶきを上げた。


「おわっ!? 冷たい水かけんなや!」よっしーが大慌てで湯をかき回す。


ノクティアは湯気の中で穏やかに微笑んでいた。

「……かつてのわたしには考えられぬ。陽を避け、影に潜むばかりだったのに……いまは、温もりに身を委ねられる」


「よう似合ってるで、ノクティ」よっしーが照れ笑いを返す。



小ギャグ


「……しかし、湯ってのは熱いのが当然なんですかニャ?」

ニーヤが耳を伏せて首を傾げる。


「そうだな。猫には少し暑すぎるかもしれん」クリフが笑いかけると──


「にゃ、にゃんのこれしきですニャ……!」

顔を真っ赤にして無理に湯に浸かろうとするニーヤ。


よっしーがニヤリと笑ってポケットからまた何かを取り出す。

「ほな、風呂上がりはコレや! 鉄骨飲料とチェルシー! ヘッヘッヘ!」


「また妙なモノを……」ノクティアが呆れながらも、受け取って舐める。

「……あまい。湯のあとに、これは……不思議な心地です」


「ユウキ! お前の世界、まだまだネタの宝庫やんけ!」よっしーが豪快に笑った。



こうして一行は束の間、山奥の野湯で心身を癒やした。

だが湯気の向こう、ユウキの脳裏には次の目的地の名が浮かんでいた。


「──モンテーヌ」


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