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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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ジャングル編 第一章・後半



1. 戦闘の余韻


 湿地の戦闘が終わり、あたりに静けさが戻った。

 泥と草にまみれたよっしーが、ぜいぜいと肩で息をしている。

「……おい、オレばっか狙われすぎやろ……」

 リーゼントは完全にぺしゃんこ、顔も泥まみれで原型を留めていなかった。


「ほら動かないでくださいニャ」

 ニーヤが毒抜きの魔法陣を展開し、よっしーの足を淡い光で包む。

「毒は浅いですニャ。すぐに治りますニャ」

「助かるわ……。昭和のDIYやなくて、お前の魔法の方が頼りになるな……」


「あら、ユウキ様も」

 あーさんが二鈴を軽く鳴らし、礼を込めて仲間を見渡した。

「ご無事でなによりにございます。──皆さまのお働き、誠に見事でした」


 クリフは剣を拭き取り、短く答えた。

「まだ始まったばかりだ。気を抜くな」



2. 先住民との邂逅


 そのときだった。

 茂みの奥から、ざわざわと葉擦れの音。

 影が揺れ、数人の人影が姿を現した。


 褐色の肌、木の葉や獣皮を纏った姿。

 槍を手にした男たちが、鋭い目でこちらを見据えている。


「……!」

 ユウキが剣の柄に手をかけた瞬間、ひとりの少女が人垣を抜けて飛び出した。


「タノシイ! ツヨイ!」

 甲高い声。

 年の頃は十一ほど、小柄な体に木の実の飾りを下げている。

 彼女は大きな瞳を輝かせ、仲間たちを指さして叫んだ。


「ガガ、ミタ! アナタタチ、ツヨイ!」


 武装した男たちが慌てて手を伸ばしたが、ガガは振り切り、ずかずかと近づいてきた。



3. 言葉の壁


「オマエタチ、ナカマ? ガガモ、ナカマ?」

 にこにこと笑う少女。


「な、なんやこの子……?」

 よっしーがぽかんと口を開ける。

「オレよりノーテンキやんけ……」


「失礼なことを申さぬよう」

 あーさんが前へ進み、深く一礼した。

「われらは旅の者にございます。突然お声がけいたし、驚かせてしまいましたな」


 だが少女は言葉を首を傾げて受け止めきれず、笑顔のまま「ワカラナイ!」と返す。

 代わりに槍を持った男が低く唸った。

「……カタコト、スコシ」


 彼らの言葉は片言の共通語と、独特の響きの混じったものだった。



4. 距離を縮める


「なるほど……言葉が通じぬのですニャ」

 ニーヤが小声で呟く。


 そこでガガが、よっしーの泥まみれの足を指差した。

「イタイ? イタイ?」

「え、ああ……まぁ、ちょっとな」

「コレ!」

 ガガは腰の袋から薬草の束を取り出し、泥ごとよっしーの足にべったり塗りつけた。


「ぎゃああああ冷たいぃ!!」

「アハハ! ダイジョブ!」

 無邪気な笑いに、緊張が少し和らいだ。



5. 村への案内


 槍を構えていた男が、やがて槍を下ろした。

「……キテ」

 短く言い、森の奥を指す。


「ご案内くださるようです」

 あーさんが小さく頷く。


「しゃーないな……。行くしかないか」

 よっしーが泥のついた顔を拭いながら立ち上がる。


 ガガが先頭に立ち、楽しげに跳ねながら進む。

「コッチ! コッチ!」


 一行は互いに目を合わせ、頷き合った。

 ──ジャングルの奥、先住民の村へ。



(つづく → 第二章「水と石の村」)


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