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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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223/404

鏡街、第一鏡ミラー——鏡は面、面は器

荷車から臨時の黒板をおろし、鏡台・映柱・同形塔・面棚がびっしり並ぶ鏡街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

鏡は面。

面は器。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は快調、節度は稽古中。


セレスが氷地図に鏡印を落とす。

「鏡街。各鏡台の鏡口が鏡歌と直結、『映せ=同じにせよ=外れは罰』で映し札を人と場に貼り付け、顔・声・仕草を一つの型に揃える。主宰——第一鏡ミラー。鏡=面の押し付けで拍を奪う。鏡口蝶番と梁を座へ戻せば、“命じる鏡”は“置く面(座面)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防眩ブルーシート)/斜光帆(反射落とし)/フェルト幕(消音)/曇り粉(反射低減)/擦りガラス紙/載せ鏡タンポ(〈鏡〉〈面〉〈名〉)/返鏡鍵/返面鍵/面取り板(鏡台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/綴じ戻し櫛(物言い直し)/沈黙箱(細・中:映し鬼・面取り鴉用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——梅おにぎり、豆腐と若布のみそ汁、フルーツ寒天、煎茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三切目の寒天に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、鏡の喉(鏡口蝶番・梁・鏡枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え+枡枕)。

二、鏡歌鎖と映し札鎖の直結をほどほどに解き、“映った型から外れるな”を“二拍→合わせ→映す(任意)→置く(座面)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)同形門——「映せ、揃えろ、外れるな」の札


通りの中央、同形門。

額の札には**「映せ、揃えろ、外れるな」。

左頬にやけのあるパン職**、色付き手袋の染め屋、眉の薄い童子が列に並ぶ。

係が映し札束をしゃらり、棒読み。

「異形は修正、発声は鏡声、歩幅は統一」


パン職が一歩前へ。

「……ミズホ。焼き窯は私の手の癖で温度が決まるんだ」


「風幕一段」

よっしーの防眩が門の風上にぱさ、斜光帆が札のギラを落とし、フェルトが金具の甲高い鳴きを毛布に吸う。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の鏡口蝶番へ角点。

カチ。

同形押しのぴと音が湯気に変わり、映しの半拍が座へ落ちた。


リリアーナが五鈴法・鏡版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——鏡(あーさんが面図を掲げる)、

四——口(ブラックが鏡口を撫でる)、

五——返鏡。

ミズホの頬に貼られかけた修正札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一鏡ミラー——束の肩、鏡舌きょうじた


中央の鏡台から鏡の人が現れる。

肩は鏡束、胸は面盤、指は磨爪、喉に小さな鏡舌。

第一鏡ミラー。

声は映文句で話す——先に映が落ち、のちに語が従う。

「名は欄。鏡が主。

映して整え、揃えて秩序——差は乱」


あーさんが板を軽く立て、短く。

鏡は面。

面は器。

「器は盛るもの。押して同じ形に流し込む型枠じゃありません」


鏡舌がぴとと鳴る。

「礼法は同形式。外れは非礼だ」



3)“鏡の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/面合わせ台・返鏡棚・顔見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が鏡口と鏡枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“押し付け口”が“置き口”へ、同形の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梁を抱え、よっしーの枡枕が盤鳴きを丸める。

フェイが曇り粉で反射をやわらげ、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——面合わせ台(二拍+名+要件→置く(鏡を見る/見ない→映す/映さない))、返鏡棚(映し札の返却)、顔見席(顔=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“同形義務”の外し方——返面・返鏡、名呼び、当座面札(映す/映さない任意・擦りガラス可)


係がミズホへ映し札をぺたり。

よっしーが擦りガラス紙を一撫で、俺が載せ鏡タンポで**〈鏡〉印を〈面〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・面版を重ねる。

一——名、二——拍、三——面口(顔見席に“座”)、四——返面。

ミズホは胸骨の前で二拍**、指で小麦粉を払うしぐさをして短く。

「……ミズホ。朝は窯の面を見る、昼はパンの顔を見る。映すのは任意」

合唱鍵がB0.6でちり。

映し札は返鏡棚へさらりと落ち、当座面札『映:任意/曇:可/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——同形強制はほどけ、面=器が座った。


第一鏡ミラーの鏡舌がぴくと震える。

「差が割れる」

「器は違うから盛れる」あーさん。



5)鏡守と映し鬼、面取り鴉——非致死、“ほどほど”


台下から鏡守が四人、腰に磨棒。

路地の陰から映し鬼(勝手に真似の面を貼って回る小鬼)がぴとぴと、空から面取り鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、鏡守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が鏡口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

鏡守は倒れず、座って縄籠へ。

映し鬼はチトセの綴じ戻し櫛で物言いを言い直しされ、「同じにしな」が「よかったら見本どう?」に変わる。

面取り鴉はよっしーの沈黙箱(細)+曇り粉でふわと包んで非致死捕縛/煎茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは寒天二切で止め、三切目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“鏡歌”——一括同形の節をほどく


第一鏡ミラーが鏡舌をちりと鳴らし、鏡歌を落とす。

「映せ・揃えろ・外れるな——映が主」

歌に呼応して通りの鏡台がずらりと起き、店の看板、人の眉、声の抑揚に型影が勝手に貼り付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

鏡は面。

「橋で合図、面に置く。映すのは礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返鏡」

俺は返鏡鍵を掌でとん、鏡口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

鏡歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→映す/映さない(任意)→置く→礼の座面が通りに広がる。

人々は自分の拍で見る/見ないを選び、自分の顔と相手の顔を置き直した。



7)“合わせ鏡回廊”の暴走——無限同形を“ほどほど”へ


通りの先、合わせ鏡回廊が勝手に起ち、映像が無限反復を始めた。

「おいおい、屋台の梅おにぎりが無限列やないか!」よっしー。

リンクが梁から二段で回廊継目をちょん、ちょん。

俺は返面鍵で回廊口に点、ニーヤの風幕が反響を毛布に、ブラックの羽衣が眩を温に散らす。

カチ、カチ、カチ。

ツグリの縦抱えが枡枕を要所に入れ、フェイが曇り粉を星のように散らす。

映像は試食見本板の大きさに座り、面合わせ台の横に一枚だけ残った。

「非致死、ほどほど」ガロット。

人の呼吸が拍に戻る。


クリフさんが弓を軽く引き、とん。

「鏡が押しになると、矢名は的より自分の姿勢を見る。的は向こうにあるのに、だ」

あーさんが頷き、板に一行。

面は器。器は向こう側を運ぶ。



8)勇者(選ばれた側)の横顔——“ミラー・ショー”“美貌保証”“統一顔規格”“次は契”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ミラー・ショーを演出! 街ぜんぶハンサム&ビューティ!”」

——鏡街は座面へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「美貌保証契約に入れば、外れ顔は月次補正。映し札は自動更新、特典も——」

人々が返鏡棚に映し札を返し、面合わせ台で当座面札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で鏡街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一顔規格で眉角度・発声高・歩幅を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“鏡が座にされた……次は契だ”」

(——第一契コントラクト、来る)



9)鏡蔵の奥——“最初の面(手水・手鏡・水鏡・拍手二つ)”と古い名の借り


鏡台の裏、鏡蔵。

段棚に手水、手鏡、水鏡、そして小さな板に刻まれた拍手二つが並ぶ。

それぞれに人のはじめての映しかたが薄く刻まれている。

第一鏡ミラーの鏡舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万鏡の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・鏡版、四——口/五——返鏡。四鈴法・面版、四——返面」

俺は返鏡鍵と返面鍵を手鏡の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“外れは罰”は押しを失い、映す/映さないへ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で物言いの角を落とし、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

鏡蔵の硬響が湯気に変わった。


第一鏡ミラーは鏡束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な面だ。だから盛れる」

余韻に薄れた。



10)落としどころ——鏡街は“面合わせの街”、鏡台は“礼の面合わせ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。鏡街→面合わせの街、中央鏡台→礼の面合わせ台。返鏡鍵/返面鍵/面合わせ台/返鏡棚/顔見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で鏡口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

鏡台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→映す/映さない(任意)→置く→礼”の順で扱う面合わせ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら煎茶をすすり、ぼそり。

「ワイのモテ顔、どんなヘアにしたらええんや?」

「まず挨拶、次に寝癖、ヘアは最後」リナ。

バーグは素直に櫛で髪を整え、フルーツ寒天は二切で止めた(ルール順守)。



11)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が梅おにぎりを配り、みそ汁をよそい、フルーツ寒天を並べる。

「甘いもんは二個まで! 煎茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三切目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「鏡街→面合わせの街。鏡歌→座面。返鏡鍵/返面鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「里の染屋には曇り粉、市の化粧台は顔見席、祠は夕景だけ水鏡。押し鏡やなく置く面でいこか」



12)小稽古——“見る→二拍→顔を洗う→映す/映さない→置く→礼”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

顔を洗う、映す/映さないを選び、置く、礼。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが綴じ戻し櫛を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、鏡学/面学の常設承認。返鏡鍵/返面鍵/面合わせ台の規格化通過。

追記:北の契街に契務省の徴。第一契コントラクト(契=文の押し付け/守れ=呪縛)の気配。契と文に注意、五鈴法・契版(名/拍/契/口/返契)と四鈴法・文版(名/拍/文口/返文)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に契印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義、鏡拭きも正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



13)落し面の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し面(誰かの映し札)がころり。

「ワイのモテ顔どこいったんや!」バーグ。

「落し面書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず挨拶、次に歯磨き、鏡は最後」

合唱鍵がB0.6でちり。

札は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼にみそ汁をよそい、寒天は二切で止めた(今日もルール順守)。



14)外縁連絡——市の化粧台・里の染屋・祠の水鏡


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「化粧台は面合わせ二拍、染屋は曇り粉で色を生かす、祠は夕景だけ水鏡。押し付け写しやなく置く面で教えといた。

 ほな、次は契や」


ミズホが当座面札を二拍で掲げる。

「窯の顔は日で違う。それでいい」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



15)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

布は——毛布。

そして今日の二行。

鏡は面。

面は器。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返鏡鍵・返面鍵・曇り粉・擦りガラス紙・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「器」の字を指でなぞり、木枡に煎茶を注ぎながら笑う。

ルフィは寒天を二切で止め、三切目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



屋上の夜——次の扉、“契街、第一契コントラクト——契は文、文は座”


星が近い。契街の契台で契歌が回り、約定札が人と場に**「守れ」を貼り付け**、手と言を呪縛しようとする気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「契が押しになると、矢名は的より文字を見る」

セレスが氷地図に契印を重ねる。

「第一契コントラクト。契=文の押し付け/守れ=呪縛。対処は——風幕で契歌を毛布に、舌凧で契口に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・契版(名/拍/契/口/返契)と四鈴法・文版(名/拍/文口/返文)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

契は文。

文は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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