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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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221/404

箱街、第一箱ストレージ——箱は蔵、蔵は座

荷車から臨時の黒板をおろし、箱台・格納柱・封緘塔・仕分棚がびっしり並ぶ箱街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

箱は蔵。

蔵は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は快調、節度は稽古中。


セレスが氷地図に箱印を落とす。

「箱街。各箱台の箱口が箱歌と直結、『仕舞え=封じよ=黙せ』で収納札を人と場に貼り付け、声や物や動線を隔離する。主宰——第一箱ストレージ。箱=蔵の押し付けで拍を奪う。箱口蝶番と梁を座へ戻せば、“命じる箱”は“置く蔵(座蔵)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防眩ブルーシート)/斜光帆(反射落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/載せ箱タンポ(〈箱〉〈蔵〉〈名〉)/返箱鍵/返蔵鍵/蓋留め楔/通気札(吸う・吐く)/封緘切(封蝋セーフカッター)/面取り板(箱台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/綴じ戻し櫛(棚割り文ほぐし)/沈黙箱(細・中:封印鬼・封札鴉用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——ツナマヨおにぎり、野菜スープ、カステラ、麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三切目のカステラに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、箱の喉(箱口蝶番・梁・箱枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え+枡枕)。

二、箱歌鎖と収納札鎖の直結をほどほどに解き、“入ったら最後”を“二拍→合わせ→出し入れ(任意)→置く(座蔵)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)収納門——「仕舞え、封をせよ、黙れ」の札


通りの中央、収納門。

額の札には**「仕舞え、封をせよ、黙れ」。

濡れた前掛けの魚売り**、背籠の木の実採り、赤ん坊を抱いた母が列に並ぶ。

係が収納札束をしゃらり、棒読み。

「声の保管も可。泣き声は沈黙箱へ」


赤ん坊がふにゃ。母が一歩前へ。

「……ノノって呼んでください。泣くのは生きてるからです」


「風幕一段」

よっしーの防眩が門の風上にぱさ、斜光帆が札のギラを落とし、フェルト幕が金具の甲高い鳴きを毛布に吸う。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の箱口蝶番へ角点。

カチ。

沈黙押しのぴと音が湯気に変わり、封の半拍が座へ落ちた。


リリアーナが五鈴法・箱版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——箱(あーさんが蔵図を掲げる)、

四——口(ブラックが箱口を撫でる)、

五——返箱(置きどころは後で)。


ノノの唇に落ちかけた沈黙札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一箱ストレージ——束の肩、箱舌はこじた


中央の箱台から箱の人が現れる。

肩は箱束、胸は仕分盤、指は封蝋爪、喉に小さな箱舌。

第一箱ストレージ。

声は倉語で話す——先に収が落ち、のちに語が従う。

「名は欄。箱が主。

仕舞って整え、閉じて秩序——封は礼」


あーさんが板を軽く立て、短く。

箱は蔵。

蔵は座。

「座は置くための間。押して黙らせる箱ではありません」


箱舌がぴとと鳴る。

「礼法は封緘式。開けるは非礼だ」



3)“箱の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/取り出し台・返箱棚・蔵見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が箱口と箱枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“押し付け口”が“置き口”へ、封押しの張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梁を抱え、よっしーの枡枕が盤鳴きを丸める。

フェイが蓋留め楔で暴発封緘をすっと止め、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——取り出し台(二拍+名+要件→置く(出す→入れる→戻す))、返箱棚(収納札・沈黙札の返却)、蔵見席(蔵=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“沈黙義務”の外し方——返蔵・返箱、名呼び、当座札(出し入れは任意/通気を確保)


係がノノへ沈黙札をぺたり。

よっしーが通気札(吸う)を一撫で、俺が載せ箱タンポで**〈箱〉印を〈蔵〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・蔵版を重ねる。

一——名、二——拍、三——蔵口(蔵見席に“座”)、四——返蔵。

ノノは胸骨の前で二拍**、赤ん坊の背をとん・とん。

「……ノノ。泣いたら出して、吸って吐く。沈黙札は返す。通気は確保」

合唱鍵がB0.6でちり。

沈黙札は返箱棚へさらりと落ち、当座札『出:自由/入:自由/通気:確保/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——沈黙強制はほどけ、蔵=座が座った。


第一箱ストレージの箱舌がぴくと震える。

「開ければ乱れる」

「置けば回る」あーさん。



5)契吏改め箱守と封印鬼、封札鴉——非致死、“ほどほど”


台下から箱守が四人、腰に封蝋槌。

路地の陰から封印鬼(なんでも箱に入れて回る小鬼)がぴとぴと、空から封札鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、箱守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が箱口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

箱守は倒れず、座って縄籠へ。

封印鬼はチトセの綴じ戻し櫛で棚割り文をほどき、没収は預かり→返すに変わる。

封札鴉はよっしーの沈黙箱(細)+通気札(吐く)でふわと包んで非致死捕縛/麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはカステラ二切で止め、三切目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“箱歌”——一括封緘の節をほどく


第一箱ストレージが箱舌をちりと鳴らし、箱歌を落とす。

「仕舞え・封をせよ・黙れ——収が主」

歌に呼応して通りの箱台がずらりと起き、人の声や視線に蓋影が勝手に貼り付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

箱は蔵。

「橋で合図、蔵に置く。封は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返箱」

俺は返箱鍵を掌でとん、箱口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

箱歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→出す/入れる(任意)→置く→礼の座蔵が通りに広がる。

人々は自分の拍で出し入れを選び、黙/語を置き直した。



7)搬送帯の暴走——「箱流し」を“ほどほど”へ


通りの先で搬送帯が勝手に動き出し、空箱が人をさらうように乗せては封を印しはじめた。

「おいおい、人間は荷ちゃうぞ!」よっしー。

リンクが梁から二段で封蝋爪をちょん、ちょん。

俺は返蔵鍵で搬送の口に点、ニーヤの風幕がベルト音を毛布に、ブラックの羽衣が封紋熱を拡散。

カチ、カチ、カチ。

ツグリの縦抱えが枡枕を要所に入れ、フェイが通気札(吸う・吐く)を貼る。

搬送は出す→入れる→戻すの手順に座り、人は二拍→降りるで解放。

「非致死、ほどほど」ガロット。

ざわめきが拍と笑に戻る。



8)勇者(選ばれた側)の横顔——“ストレージ・ショー”“保管保証”“統一箱規格”“次は蓋”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ストレージ・ショーを演出! 街ぜんぶ静かに仕舞おう!”」

——箱街は座蔵へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「保管保証契約に入れば、破損は月次補填。収納札は自動更新、特典も——」

人々が返箱棚に沈黙札を返し、取り出し台で当座札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で箱街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一箱規格で箱寸法・通気孔径・封緘力を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“箱が座にされた……次は蓋だ”」

(——第一蓋カバー、来る)



9)箱蔵の奥——“最初の蔵(籠・布袋・壺・掌)”と古い名の借り


箱台の裏、箱蔵。

段棚に籠、布袋、壺、そして小さな板に刻まれた掌が並ぶ。

それぞれに人のはじめての仕舞いかたが薄く刻まれている。

第一箱ストレージの箱舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万箱の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・箱版、四——口/五——返箱。四鈴法・蔵版、四——返蔵」

俺は返箱鍵と返蔵鍵を布袋の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“閉じたら終わり”は押しを失い、出す→入れる→戻すへ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で棚割り文の角を落とし、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

箱蔵の硬響が湯気に変わった。


第一箱ストレージは箱束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な蔵だ。だから出し入れできる」

余韻に薄れた。



10)落としどころ——箱街は“取り出しの街”、箱台は“礼の取り出し台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。箱街→取り出しの街、中央箱台→礼の取り出し台。返箱鍵/返蔵鍵/取り出し台/返箱棚/蔵見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で箱口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

箱台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→出す/入れる(任意)→置く→礼”の順で扱う取り出し台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら麦茶をすすり、ぼそり。

「ワイのモテ収納、どの並べがええんや?」

「まず挨拶、次に清掃、並べは最後」リナ。

バーグは素直に手拭いで台を一拭いし、カステラは二切で止めた(ルール順守)。



11)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台がツナマヨおにぎりを配り、野菜スープをよそい、カステラを並べる。

「甘いもんは二個まで! 麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三切目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「箱街→取り出しの街。箱歌→座蔵。返箱鍵/返蔵鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「市の倉は出し入れ二拍、屋台は昼だけ仮蔵、祠は夕刻だけ奉納箱。黙らす箱やなく置く蔵で」



12)小稽古——“見る→二拍→出す→入れる→戻す→礼”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

見る、出す、入れる、戻す、礼。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが封緘切を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、箱学/蔵学の常設承認。返箱鍵/返蔵鍵/取り出し台の規格化通過。

追記:北の蓋街に蓋務省の徴。第一蓋カバー(蓋=覆いの押し付け/隠せ=遮断)の気配。蓋と布に注意、五鈴法・蓋版(名/拍/蓋/口/返蓋)と四鈴法・布版(名/拍/布口/返布)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に蓋印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



13)落し箱の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し箱(誰かの収納札)がころり。

「ワイのモテ収納どこいったんや!」バーグ。

「落し箱書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず挨拶、次に通気、蓋は最後」

合唱鍵がB0.6でちり。

札は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼にスープをよそい、カステラは二切で止めた(今日もルール順守)。



14)外縁連絡——市の倉・屋台の仮蔵・祠の奉納箱


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「倉は名札→二拍→出入、屋台は昼だけ仮蔵、祠は夕刻だけ奉納箱。押し封やなく置く蔵で教えといた。

 ほな、次は蓋や」


ノノが当座札を二拍で掲げる。

「吸って吐くと、胸が楽です」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



15)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

布は——毛布。

そして今日の二行。

箱は蔵。

蔵は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返箱鍵・返蔵鍵・蓋留め楔・通気札・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「蔵」の字を指でなぞり、木枡に麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィはカステラを二切で止め、三切目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



屋上の夜——次の扉、“蓋街、第一蓋カバー——蓋は布、布は毛布”


星が近い。蓋街の蓋台で蓋歌が回り、覆い札が人と場に**「隠せ」を貼り付け**、光と風と拍を遮断しようとする気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「蓋が押しになると、矢名は的より暗がりを見る」

セレスが氷地図に蓋印を重ねる。

「第一蓋カバー。蓋=覆いの押し付け/隠せ=遮断。対処は——風幕で蓋歌を毛布に、舌凧で蓋口に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・蓋版(名/拍/蓋/口/返蓋)と四鈴法・布版(名/拍/布口/返布)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

蓋は布。

布は毛布。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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