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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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217/404

面街、第一面マスク——面は器、器は座

荷車から臨時の黒板をおろし、面台・配役柱・台本棚・控え幕がびっしり並ぶ面街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

面は器。

器は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、節度は稽古中。


セレスが氷地図に面印を落とす。

「面街。各面台の面口が面歌と直結、『役を付けよ=台本に従え』で役札を人と場に貼り付け、ふるまいを役へ縛る。主宰——第一面マスク。面=役の押し付けで拍を奪う。面口蝶番と梁を座へ戻せば、“命じる面”は“置く器(座面)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防眩ブルーシート)/斜光帆(反射落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/載せ面タンポ(〈面〉〈役〉〈名〉)/返面鍵/返役鍵/幕ロープ/段取り木(段差養生)/梳き面刷毛(化粧文ほぐし)/偏り止め楔(視線固定止め)/面取り板(面台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/綴じ戻し櫛(台本返し)/沈黙箱(細・中:役鬼・台本鴉用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——焼きそばパン、けんちん汁、きびだんご、麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目のきびだんごに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、面の喉(面口蝶番・梁・面枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え+枡枕)。

二、面歌鎖と役札鎖の直結をほどほどに解き、“貼られた役のまま”を“二拍→合わせ→置く(役は借り物)(座面)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)配役門——「女は看護、男は警邏、子は合唱」の札


通りの中央、配役門。

額の札には**「女は看護、男は警邏、子は合唱」。

産着を抱えた若い母**、煤で黒い炉職、木箱を背負う小商人が列に並ぶ。

係が役札束をしゃらり。

「看護面・警邏面・合唱面、規定の振る舞いで通行」


若い母が一歩前へ。

「……ミサって呼んでください。今日の役は母です」


「風幕一段」

よっしーの防眩シートが門の風上にぱさ、斜光帆が面のギラを落とし、フェルト幕が金具の甲高い鳴きを毛布に吸う。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の面口蝶番へ角点。

カチ。

押し付けのぴと音が湯気に変わり、一律役付けが半拍座った。


リリアーナが五鈴法・面版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——面(あーさんが器図を掲げる)、

四——口(ブラックが面口を撫でる)、

五——返面(置きどころは後で)。


ミサの頬に落ちかけた看護面の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一面マスク——束の肩、面舌めんじた


中央の面台から面の人が現れる。

肩は面束、胸は役盤、指は台本爪、喉に小さな面舌。

第一面マスク。

声は配役句で話す——先に役が落ち、のちに語が従う。

「名は欄。面が主。

役で縛り、型で通せ——配役は秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

面は器。

器は座。

「器は置くもの。被せて奪うものではありません」


面舌がぴとと鳴る。

「礼法は役付け式。素は非礼だ」



3)“面の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/配役合わせ台・返面棚・役見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が面口と面枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“押し付け口”が“置き口”へ、役固定の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梁を抱え、よっしーの枡枕が盤鳴きを丸める。

フェイが偏り止め楔で視線レールをすっと止め、チトセが面取り板で枠角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——配役合わせ台(二拍+名+要件→置く(役は借りる→返す))、返面棚(役札の返却)、役見席(役=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“固定役義務”の外し方——返役・返面、名呼び、通過札(役:当座)


係がミサへ看護面をぺたり。

よっしーが梳き面刷毛で角を一撫で、俺が載せ面タンポで**〈面〉印を〈役〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・役版を重ねる。

一——名、二——拍、三——役口(役見席に“座”)、四——返役。

ミサは胸骨の前で二拍**、疲れた目をまっすぐに。

「……ミサ。産院へ急ぎ、戻りは夕刻。当座の役は母。看護面は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

面は返面棚へさらりと落ち、通過札『往:産院/戻:夕刻/役:当座=母/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——固定役はほどけ、役=借り物が座った。


第一面マスクの面舌がぴくと震える。

「返せば秩序が崩れる」

「崩れるのは押し付け。置けば回る」あーさん。



5)鑑守改め面守と役鬼、台本鴉——非致死、“ほどほど”


台下から面守が四人、腰に台本束。

路地の陰から役鬼(何でも役を貼って回る小鬼)がぴとぴと、空から台本鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、面守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が面口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

面守は倒れず、座って縄籠へ。

役鬼はチトセの綴じ戻し櫛で台本を読み返す癖に直され、貼りは相談へ変わる。

台本鴉はよっしーの沈黙箱(細)+幕ロープでふわと包んで非致死捕縛/麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはきびだんご二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“面歌”——一括配役の節をほどく


第一面マスクが面舌をちりと鳴らし、面歌を落とす。

「女は看護・男は警邏・子は合唱——役が主」

歌に呼応して通りの面台がずらりと起き、人の肩や額に役影が勝手に貼り付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

面は器。

「橋で合図、座に置く。役は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返面」

俺は返面鍵を掌でとん、面口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

面歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→役=当座→置く→礼の座面が通りに広がる。

人々は自分の拍で借りる役と返す時を選び、ふるまいを置き直した。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“マスク・ショー”“役割保証”“統一役規格”“次は契”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、マスク・ショーを演出! ワンタッチ配役で街ぜんぶ一糸乱れず!”」

——面街は座面へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「役割保証契約に入れば、月次評価は上々。役札は遠隔更新、特典も——」

人々が返面棚に役札を返し、配役合わせ台で通過札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で面街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一役規格で歩幅・声量・所作秒を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“面が座にされた……次は契だ”」

(——第一契コントラクト、来る)



8)面蔵の奥——“最初の面(藁面・紙面・土面・掌)”と古い名の借り


面台の裏、面蔵。

段棚に藁面、紙面、土面、そして掌を写した古い木片が並ぶ。

それぞれに人のはじめての演じかたが薄く刻まれている。

第一面マスクの面舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万面の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・面版、四——口/五——返面。四鈴法・役版、四——返役」

俺は返面鍵と返役鍵を紙面の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“役を被せる”は押しを失い、役は借りて返す/器は座へ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で台本文の角を落とし、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

面蔵の硬響が湯気に変わった。


第一面マスクは面束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な面だ。だから交代できる」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——面街は“配役合わせの街”、面台は“礼の配役合わせ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。面街→配役合わせの街、中央面台→礼の配役合わせ台。返面鍵/返役鍵/配役合わせ台/返面棚/役見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で面口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

面台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→役=当座→置く→礼”の順で扱う配役合わせ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら麦茶をすすり、ぼそり。

「ワイのモテ面、どの役がええんや?」

「まず素顔、つぎ挨拶、役は最後」リナ。

バーグは素直に手拭いで額を一拭いし、きびだんごは二つで止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が焼きそばパンを配り、けんちん汁をよそい、きびだんごを並べる。

「甘いもんは二個まで! 麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「面街→配役合わせの街。面歌→座面。返面鍵/返役鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「劇座の面も、行商組合の当番も、祠の奉仕も、ぜんぶ座から。被せる面やなく置く器でやるんや」



11)小稽古——“素顔→二拍→借りる→勤める→返す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

素顔で合わせ、役を借り、勤め、返す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが梳き面刷毛を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、面学/役学の常設承認。返面鍵/返役鍵/配役合わせ台の規格化通過。

追記:北の契街に契務省の徴。第一契コントラクト(契=文の押し付け/縛れ=従属)の気配。契と文に注意、五鈴法・契版(名/拍/契/口/返契)と四鈴法・文版(名/拍/文口/返文)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に契印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し役の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し役(誰かの役札)がころり。

「ワイのモテ役どこいったんや!」バーグ。

「落し役書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず素顔、次に挨拶、役は最後」

合唱鍵がB0.6でちり。

札は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼にけんちん汁をよそい、きびだんごは二つで止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——劇座の面・組合の当番・祠の奉仕


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「劇座は本番前二拍で配役合わせ、組合は当番札を借りて返す、祠は夕刻だけ奉仕面。役を押し付けんと置くよう教えといた。

 ほな、次は契や」


若い母ミサが通過札を二拍で掲げる。

「借りるって言えると、息がしやすい」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

面は器。

器は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返面鍵・返役鍵・偏り止め楔・梳き面刷毛・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「器」の字を指でなぞり、木枡に麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィはきびだんごを二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“契街、第一契コントラクト——契は文、文は座”


星が近い。契街の契台で契歌が回り、契約札が人と場に条文を貼り付け、約束を一方にだけ縛ろうとする気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「契が押しになると、矢名は的より条文を見る」

セレスが氷地図に契印を重ねる。

「第一契コントラクト。契=文の押し付け/縛れ=従属。対処は——風幕で契歌を毛布に、舌凧で契口に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・契版(名/拍/契/口/返契)と四鈴法・文版(名/拍/文口/返文)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

契は文。

文は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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