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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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215/404

歌街、第一歌コーラス——歌は合図、合図は座

荷車から臨時の黒板をおろし、歌台・合唱塔・拍子柱・譜面棚がびっしり並ぶ歌街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

歌は合図。

合図は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、節度は稽古中。


セレスが氷地図に歌印を落とす。

「歌街。各歌台の歌口が歌歌と直結、『唱和せよ=揃えよ=黙るな』で合唱札を人と場に貼り付け、平声を禁じる。主宰——第一歌コーラス。歌=合図の過剰化で拍を奪う。歌口蝶番と梁を座へ戻せば、“命じる歌”は“置く合図(座歌)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/斜光帆(照り落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/載せ歌タンポ(〈歌〉〈合〉〈名〉)/返歌鍵/返合鍵/休符札/小節枕/拍止め栓/面取り板(歌台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/綴じ戻し櫛(歌詞ほどき)/沈黙箱(細・中:輪唱鬼・拍取り鴉用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——塩むすび、鶏だんごの澄まし、芋ようかん、ほうじ茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三切目の芋ようかんに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、歌の喉(歌口蝶番・梁・歌枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え+枡枕)。

二、歌歌鎖と合唱札鎖の直結をほどほどに解き、“常時唱和”を“二拍→合わせ→知らせる(座歌)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)合唱門——「一人は罪、四声で通れ」の札


通りの中央、合唱門。

額の札には**「一人は罪、四声で通れ」。

畑の荷車を押す老女**、喉を痛めた娘、仕事帰りの石工が列に並ぶ。

係が合唱札束をゆすって棒読み。

「女声二・男声二、和音揃い、声量はこの笛に合わせろ」


娘が一歩前へ。

「……ナエって呼んでください。今日は声が出にくいの」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが門の風上にぱさ、斜光帆が札の照りを落とし、フェルト幕が金具の甲高い鳴きを毛布に吸う。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の歌口蝶番へ角点。

カチ。

喉押しのぴと音が湯気に変わり、強制声量が半拍座った。


リリアーナが五鈴法・歌版を開く。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——歌(あーさんが歌図を掲げる)、

四——口(ブラックが歌口を撫でる)、

五——返歌(置きどころは後で)。


ナエの喉元に落ちかけた合唱札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一歌コーラス——束の肩、歌舌うたじた


中央の歌台から歌の人が現れる。

肩は歌束、胸は譜面盤、指は指揮棒、喉に小さな歌舌。

第一歌コーラス。

声は主音句で話す——先に主音が落ち、のちに語が従う。

「名は歌詞欄。歌が主。

和で縛り、合で統べる——唱和は秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

歌は合図。

合図は座。

「座は置くもの。誰かの声で他人の拍を奪うためではありません」


歌舌がぴとと鳴る。

「礼法は合唱式。黙は罪だ」



3)“歌の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/チューニング台・返歌棚・休符席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が歌口と歌枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“押し付け口”が“置き口”へ、強制の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が梁を抱え、よっしーの枡枕が盤鳴きを丸める。

フェイが拍止め栓で無限カウントをすっと止め、チトセが面取り板で台角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——チューニング台(二拍+名+要件→置く(歌う前に合わせる))、返歌棚(合唱札・指定旋律札の返却)、休符席(黙る=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“常時唱和”の外し方——返合・返歌、名呼び、休符札と道標笛札


係がナエへ合唱札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が載せ歌タンポで**〈歌〉印を〈合〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・合図版を重ねる。

一——名、二——拍、三——合口(休符席に“座”)、四——返合。

ナエは胸骨の前で二拍**、小さく頷く。

「……ナエ。今日は休符。角で笛一吹、人を見て拍手二つ。歌はおやすみ」

合唱鍵がB0.6でちり。

合唱札は返歌棚へさらりと落ち、休符札+道標笛札が掌にすっと。

——黙る権利が座り、合図=置きものが息をした。


第一歌コーラスの歌舌がぴくと震える。

「黙は罪だ」

「黙は座だ。礼のあとに置く」あーさん。



5)鍵守改め歌守と輪唱鬼、拍取り鴉——非致死、“ほどほど”


台下から歌守が四人、腰に拍子木。

路地の陰から輪唱鬼(何でも輪唱に変える小鬼)がくるくる、空から拍取り鴉がコロリン。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、歌守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が歌口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

歌守は倒れず、座って縄籠へ。

輪唱鬼はチトセの綴じ戻し櫛で歌詞の角を落とされ、回しが呼びかけに変わる。

拍取り鴉はよっしーの沈黙箱(細)+小節枕でふわと包んで非致死捕縛/ほうじ茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは芋ようかん二切で止め、三切目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“歌歌”——一括唱和の節をほどく


第一歌コーラスが歌舌をちりと鳴らし、歌歌を落とす。

「唱えよ・揃えよ・黙るな——主音が主」

歌に呼応して通りの歌台がずらりと起き、人の喉や耳に旋律影が勝手に貼り付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

歌は合図。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返歌」

俺は返歌鍵を掌でとん、歌口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

歌歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→一吹/一拍手→置く→礼の座歌が通りに広がる。

人々は自分の拍で笛と拍手を選び、歌う/黙るを置き直した。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“コーラス・ショー”“声帯保証”“統一テンポ規格”“次は鏡”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、コーラス・ショーを演出! ワンタッチ合唱で街ぜんぶ統一テンポ!”」

——歌街は座歌へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「声帯保証契約に入れば、歌いすぎの痛みも補償。合唱札は自動更新、特典も——」

人々が返歌棚に合唱札を返し、チューニング台で休符札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で歌街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一テンポ規格で拍数・休符長・声量を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“歌が座にされた……次は鏡だ”」

(——第一鏡ミラー、来る)



8)歌蔵の奥——“最初の歌(子守唄・掛け声・舟歌・拍手二つ)”と古い名の借り


歌台の裏、歌蔵。

段棚に子守唄の札、掛け声の板、舟歌の舵柄、そして小さな木片に刻まれた拍手二つが並ぶ。

それぞれに人の最初の知らせが薄く刻まれている。

第一歌コーラスの歌舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万歌の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・歌版、四——口/五——返歌。四鈴法・合図版、四——返合」

俺は返歌鍵と返合鍵を子守唄の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“黙は罪”は押しを失い、黙は休符/休符は座へ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で言葉の角を落とし、ツグリが縦抱えで梁を抱える。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

歌蔵の硬響が湯気に変わった。


第一歌コーラスは歌束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な歌だ。だから日が回る」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——歌街は“座歌の街”、歌台は“礼のチューニング台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。歌街→座歌の街、中央歌台→礼のチューニング台。返歌鍵/返合鍵/チューニング台/返歌棚/休符席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で歌口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

歌台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→一吹/一拍手→置く→礼”の順で扱うチューニング台として座った。


バーグ兵士長はむくれながらほうじ茶をすすり、ぼそり。

「ワイのモテ歌、どのサビがええんや?」

「挨拶二拍がサビや」リナ。

バーグは素直に**「こんにちは」の二拍練習を続け、芋ようかんは二切**で止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が塩むすびを配り、鶏だんごの澄ましをよそい、芋ようかんを並べる。

「甘いもんは二個まで! ほうじ茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三切目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「歌街→座歌の街。歌歌→座歌。返歌鍵/返合鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「産院のあやし歌は小声で、工房の掛け声は一拍手、祠は夕刻の輪。押す歌やなく置く合図でいこか」



11)小稽古——“見る→二拍→一吹→一拍手→渡す→戻す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

見て、二拍、笛一吹、拍手一つ、渡し、戻す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが綴じ戻し櫛を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、歌学/休符学の常設承認。返歌鍵/返合鍵/チューニング台の規格化通過。

追記:北の鏡街に鑑務省の徴。第一鏡ミラー(鏡=面の押し付け/映せ=服従)の気配。鏡と面に注意、五鈴法・鏡版(名/拍/鏡/口/返鏡)と四鈴法・面版(名/拍/面口/返面)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に鏡印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し歌の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し歌(誰かの持ち歌札)がころり。

「ワイのモテ歌どこいったんや!」バーグ。

「落し歌書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず挨拶、次に合図、歌うのは最後」

合唱鍵がB0.6でちり。

札は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に澄ましをよそい、芋ようかんは二切で止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——産院のあやし歌・工房の掛け声・祠の輪


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「産院は母の拍で、工房は作業の拍で、祠は夕刻だけ。黙も礼や、胸骨の二拍で通すよう教えといた。

 ほな、次は鏡や」


喉を休めたナエが休符札を二拍で掲げる。

「黙っても、届くね」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

歌は合図。

合図は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返歌鍵・返合鍵・拍止め栓・綴じ戻し櫛・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「歌」の字を指でなぞり、木枡にほうじ茶を注ぎながら笑う。

ルフィは芋ようかんを二切で止め、三切目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“鏡街、第一鏡ミラー——鏡は面、面は器”


星が近い。鏡街の鏡台で鏡歌が回り、見張札が人と場に視線の向きを貼り付け、映し方を一方に集める気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「鏡が押しになると、矢名は的ではなく自分を見てしまう」

セレスが氷地図に鏡印を重ねる。

「第一鏡ミラー。鏡=面の押し付け/映せ=服従。対処は——風幕で鏡歌を毛布に、舌凧で鏡口に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・鏡版(名/拍/鏡/口/返鏡)と四鈴法・面版(名/拍/面口/返面)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

鏡は面。

面は器。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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