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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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213/404

門街、第一門ヒンジ——門は蝶番、蝶番は座

荷車から臨時の黒板をおろし、関枠・戸枠・見張台・さばき棚がびっしり並ぶ門街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

門は蝶番。

蝶番は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は今日も口は元気、節度は訓練中。


セレスが氷地図に門印を落とす。

「門街。各関枠の蝶口が門歌と直結、『通るな=払え=下を向け』で入門札を人・荷に貼り付け、通行の裁量を一方に寄せる。主宰——第一門ヒンジ。門=通す/閉ざすの押し付けで拍を奪う。蝶口蝶番と棟梁を座へ戻せば、“命じる門”は“置く蝶番(座番)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/斜光帆(札の照り返し落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/舌凧(小×2)(〈門〉〈蝶〉〈名〉)/返門鍵/返蝶鍵/差止め楔(支点暴走止め)/棟あて木/面取り板(関枠角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/綴じ戻し櫛(札捌き)/沈黙箱(細・中:門鬼・札鴉用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——焼きおにぎり(味噌)、豚汁、きなこ餅、麦茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三つ目のきなこ餅に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、門の喉(蝶口蝶番・棟梁・関枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、門歌鎖と入門札鎖の直結をほどほどに解き、“札あれば通す/なければ塞ぐ”を“二拍→合わせ→開ける/閉じる(座番)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)関門——「首を下げ、札を差し出せ」の札


通りの中央、関門。

額の札には**「首を下げ、札を差し出せ」。

産着を抱えた若い父母**、薬箱を背負う旅医師、手押し車の行商が列に並ぶ。

係は入門札束をゆすり、棒読み。

「外者札(高)・雇用主同行札(中)・奉仕札(低)——下を向き、片膝」


産着の父が一歩前へ。

「……サネって呼んでください。『外者』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが門の風上にぱさ、斜光帆が札の照りをやわらげ、フェルト幕が金具の甲高い鳴きを毛布に落とす。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の蝶口蝶番に角点。

カチ。

支点のぴと音が湯気に変わり、伏せろ圧が半拍座った。


リリアーナが五鈴法・門版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——門(あーさんが蝶図を掲げる)、

四——口(ブラックが蝶口を撫でる)、

五——返門(置きどころは後で)。


サネの肩に落ちかけた外者札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一門ヒンジ——枠の肩、門舌もんじた


中央の関枠から門の人が現れる。

肩は枠束、胸は蝶盤、指はかんぬき、喉に小さな門舌。

第一門ヒンジ。

声は遮断句で話す——先に閉が落ち、のちに語が従う。

「名は許可欄。門が主。

閉じて選別、開きは恩寵——関は秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

門は蝶番。

蝶番は座。

「座は置くもの。上下を作る器じゃありません」


門舌がぴとと鳴る。

「礼法は屈膝式。伏が法だ」



3)“門の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/見通し窓・返門棚・通り合い席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が蝶口と関枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“選別口”が“置き口”へ、閉じ付けの張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が棟梁を抱え、よっしーの枡枕が枠鳴きを丸める。

フェイが差止め楔で閂の過剰落としをすっと止め、チトセが面取り板で枠角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——見通し窓(二拍+名+要件→置く(開閉前に合わせる))、返門棚(入門札・外者札の返却)、通り合い席(通す=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“外者札”の外し方——返蝶・返門、名呼び、通過札


係が産着の父へ外者札をぺたり。

よっしーが拭い布で角を一撫で、俺が舌凧の尾で**〈門〉印を〈蝶〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・蝶番版を重ねる。

一——名、二——拍、三——蝶口(通り合い席に“座”)、四——返蝶。

サネは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……サネ。産院まで急ぎ、戻りは夕刻。荷は布と湯。外者札は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

外者札は返門棚へさらりと落ち、通過札『往:産院/戻:夕刻/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——上下圧はほどけ、蝶番=置くが座った。


第一門ヒンジの門舌がぴくと震える。

「返せば権限が崩れる」

「崩れるのは踏ませる上下。門は蝶番として置くために」あーさん。



5)門番と門鬼、札鴉——非致死、“ほどほど”


台下から門番が四人、腰に策杖。

関枠の影から門鬼(なんでも列にして待たせ続ける小鬼)がもそもそ、空から札鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、門番の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が蝶口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

門番は倒れず、座って縄籠へ。

門鬼はチトセの綴じ戻し櫛で余白を与えられ、列が順番札に変わる。

札鴉はよっしーの沈黙箱(細)+斜光帆切れ端でふわと包んで非致死捕縛/麦茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィはきなこ餅二つで止め、三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“門歌”——一括屈膝の節をほどく


第一門ヒンジが門舌をちりと鳴らし、門歌を落とす。

「伏せよ・差し出せ・待て——閉が主」

歌に呼応して通りの関枠がずらりと高くなり、人の顎や肩に低くせ影が勝手に落ち始める。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

蝶番は座。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返門」

俺は返門鍵を掌でとん、蝶口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

門歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→開ける/閉じる→置く→礼の座番が通りに広がる。

人々は自分の拍で開けると閉じるを選び、肩の高さで目を合わせはじめた。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“ゲート・ショー”“通行保証”“統一ゲート規格”“次は鍵”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、ゲート・ショーを演出! ワンタッチで街まるごと行列!”」

——門街は行き交いの街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「通行保証契約に入れば、別列で最短。入門札は自動更新、特典も——」

人々が返門棚に外者札を返し、見通し窓で通過札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で門街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一ゲート規格で戸幅・開閉角・滞留秒数を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“門が座にされた……次は鍵だ”」

(——第一鍵キー、来る)



8)門蔵の奥——“最初の蝶番(戸口・箱蓋・膝)”と古い名の借り


関枠の裏、門蔵。

段棚に小さな蝶番、箱の蓋、古い戸口の木片、そして膝当てが並ぶ。

それぞれに人の最初の開け閉めが薄く刻まれている。

第一門ヒンジの門舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万門の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・門版、四——口/五——返門。四鈴法・蝶番版、四——返蝶」

俺は返門鍵と返蝶鍵を戸口の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“伏して通る”は押しを失い、立って合わせ/開けて礼へ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で逃げを作り、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

門蔵の硬響が湯気に変わった。


第一門ヒンジは枠束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な門だ。だから行き来できる」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——門街は“行き交いの街”、関枠は“礼の見通し窓”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。門街→行き交いの街、中央関枠→礼の見通し窓。返門鍵/返蝶鍵/見通し窓/返門棚/通り合い席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で蝶口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

関枠は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→開ける/閉じる→置く→礼”の順で扱う見通し窓として座った。


バーグ兵士長はむくれながら麦茶をすすり、ぼそり。

「ワイのVIP通行札、モテにも効くんやろ?」

「順番が座。節度や」リナ。

バーグは素直に順番札を胸に差し、きなこ餅は二つで止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が焼きおにぎり(味噌)を配り、豚汁をよそい、きなこ餅を並べる。

「甘いもんは二個まで! 麦茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三つ目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「門街→行き交いの街。門歌→座番。返門鍵/返蝶鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「産院の出入り、荷捌き場の渡し、城壁の見張り、全部座から。押す門やなく置く蝶番でいこか」



11)小稽古——“目を合わせ→二拍→開ける→通す→閉じる”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

目を合わせ、二拍、開け、通し、閉じる。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが面取り板を見せ、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、門学/蝶番学の常設承認。返門鍵/返蝶鍵/見通し窓の規格化通過。

追記:北の鍵街に鍵務省の徴。第一鍵キー(鍵=歌の押し付け/開閉の独占)の気配。鍵と歌に注意、五鈴法・鍵版(名/拍/鍵/口/返鍵)と四鈴法・歌版(名/拍/歌口/返歌)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に鍵印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し札の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し札(誰かの通行札)がころり。

「ワイのモテ通行どこいったんや!」バーグ。

「落し札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず目線、次に挨拶、開けるのはそのあと」

合唱鍵がB0.6でちり。

札は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼に豚汁をよそい、きなこ餅は二つで止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——産院の門・荷捌きの渡し・城壁の見張り


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「産院は一人ずつ二拍で開け、荷捌きは返門棚に渡し札、城壁は交代二拍。膝をつくんやなく胸骨で合うよう教えた。

 ほな、次は鍵や」


産着の父サネが通過札を二拍で掲げる。

「開けてもらえたら、戻るときも目を合わせたくなる」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

門は蝶番。

蝶番は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返門鍵・返蝶鍵・差止め楔・面取り板・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「門」の字を指でなぞり、木枡に麦茶を注ぎながら笑う。

ルフィはきなこ餅を二つで止め、三つ目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“鍵街、第一鍵キー——鍵は歌、歌は合図”


星が近い。鍵街の鍵台で鍵歌が回り、施錠札が人と場に歌の旋律を貼り付け、開閉権を歌う者だけに集める気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「鍵に押されると、矢名は歌に遅れる」

セレスが氷地図に鍵印を重ねる。

「第一鍵キー。鍵=歌の押し付け/開閉の独占。対処は——風幕で鍵歌を毛布に、舌凧で鍵口に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・鍵版(名/拍/鍵/口/返鍵)と四鈴法・歌版(名/拍/歌口/返歌)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

鍵は歌。

歌は合図。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


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