表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

212/404

印街、第一印スタンプ——印は合図、合図は座

荷車から臨時の黒板をおろし、印台・捺台・信号柱・号笛棚がびっしり並ぶ印街の大路——風の上手に立てた。

あーさん(相沢千鶴)が白墨で三行に今日の二行を添える。


名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

印は合図。

合図は座。


胸骨の前で二拍。

とん・とん——B0.6。

静けさは扉。


「短く点呼」

「ユウキ」

「よっしーや」

「クリフさん」

「ニーヤですニャ」

「リンク」——「キュイ」

「あーさん、相沢千鶴にござります」

「……カァ(ブラック)」

《蒼角》ロウル/ツグリ、《炎狐》フェイ/チトセ。

後詰「ガロット」「セレス」。外縁「ジギー」「サジ」「カエナ」「ゴブリン若者隊**」。

特記:リリアーナ(台帳・呼び戻し札・受付筆リモート)。バーグ兵士長(捕虜札「非致死捕虜/雑炊済」)は本日も口は元気、節度は鍛錬中。


セレスが氷地図に印印を落とす。

「印街。各印台の印口が印歌と直結、『押せ=止まれ=従え』で号令札を人と場に縫い付け、動きを固着させる。主宰——第一印スタンプ。印=合図の押し付けで拍を奪う。印口蝶番と綴じ梁を座に戻せば、“命じる印”は“置く合図(座合)へ」


よっしーの虚空庫アイテムボックスがぼん。

風幕(防鳴ブルーシート)/斜光帆(朱の照り返し落とし)/フェルト幕(厚)/消音布/押し戻しタンポ(〈印〉〈合〉〈名〉)/返印鍵/返合鍵/笛止め栓/旗留め楔/面取り板(印台角落とし)/縦抱え帆柱/枡枕/朱砂ふき/綴じ戻し櫛/沈黙箱(細・中:合図鬼・号鴉用)/角布・拭い布/鎖輪。

腹は——鯖サンド、キャベツと豆のポトフ、三色だんご、番茶。

黒板の端にリナが小さく**「おやつは二個まで」。ルフィは三本目のだんごに手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい**)。


ガロットが槍尻でとん・とん。

「目的は三つ。

一、印の喉(印口蝶番・綴じ梁・印枠)を倒さず座らせる(舌凧×2+風幕重ね+縦抱え帆柱+枡枕)。

二、印歌鎖と号令札鎖の直結をほどほどに解き、“押せば停止”を“置いて知らせる(座合)”へ戻す。

三、人は返す。非致死、ほどほど」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。出立。



1)号令門——「印のない者、動くべからず」の札


通りの中央、号令門。

額の札には**「印のない者、動くべからず」。

荷車を押す露店の若者が列に並び、係が丸印を掲げた。

「足印を手首へ、動作のたびに押印せよ。未押印の動作は違反**」


若者の隣で、背負子を担いだ郵便娘が不安げに、背の古い笛紐を握りしめている。


娘が一歩前へ。

「……コトハって呼んでください。『違反者』じゃなくて名で」


「風幕一段」

よっしーの防鳴シートが門の風上にぱさ、斜光帆が朱のギラを落とし、フェルト幕が金具の甲高い鳴きを毛布に吸う。

俺は扉縫合(Lv.2)で門頭の印口蝶番に角点。

カチ。

印盤のぴと音が湯気に変わり、押し付けの半拍が座へ落ちた。


リリアーナが五鈴法・印版をひらく。

一——名(B0.6でちり)、

二——ロウルがとん・とん

三——印(あーさんが合図図を掲げる)、

四——口(ブラックが印口を撫でる)、

五——返印(置きどころは後で)。


コトハの手首に落ちかけた足印札の影がきゅっと外へ抜け、返し棚の高さに逃げができた。



2)第一印スタンプ——印束の肩、印舌いんじた


中央の印台から印の人が現れる。

肩は印束、胸は号盤、指は印把、喉に小さな印舌。

第一印スタンプ。

声は停止句で話す——先に止が落ち、のちに語が従う。

「名は欄。印が主。

押して止め、待て。号が秩序」


あーさんが板を軽く立て、短く。

印は合図。

合図は座。

「座は置くもの。人の拍を止めっぱなしにするためじゃありません」


印舌がぴとと鳴る。

「礼法は押印式。止が法だ」



3)“印の喉”を座へ——舌凧×縦抱え×枡枕/合図合わせ台・返印棚・合見席


「揚げる」

俺とニーヤの舌凧が印口と印枠へふわ。

あーさんの似せ印を浅く、扉縫合で角に点。

ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

“押し付け口”が“置き口”へ、停止の張りが座に落ちる。


ツグリの縦抱え帆柱が綴じ梁を抱え、よっしーの枡枕が盤鳴きを丸める。

フェイが旗留め楔で号旗の煽りをすっととめ、チトセが面取り板で印台の角をさっと落とす。

白墨で白の口を三つ——合図合わせ台(二拍+名+要件→置く(押す前に合わせる))、返印棚(号令札・足印札の返却)、合見席(合図=置きどころの席)。

「あわてず二拍。名→要件→置く」あーさん。



4)“足印義務”の外し方——返合・返印、名呼び、道標笛札


係がコトハへ足印札をぺたり。

よっしーが朱砂ふきで角を一撫で、俺が押し戻しタンポで**〈印〉印を〈合〉へ差し替え。

カチ。

リリアーナが四鈴法・合図版を重ねる。

一——名、二——拍、三——合口(合見席に“座”)、四——返合。

コトハは胸骨の前で二拍**、はっきり言う。

「……コトハ。今日は配達、角で笛を一吹、人を見て旗。足印は返す」

合唱鍵がB0.6でちり。

足印札は返印棚へさらりと落ち、道標笛札『角:一吹/混:旗/礼:二拍のあと』が掌にすっと。

——停止の押し付けはほどけ、合図=置きものが座った。


第一印スタンプの印舌がぴくと震える。

「返せば停止秩序が崩れる」

「崩れるのは止めっぱなし。合図は置くために」あーさん。



5)印守と合図鬼、号鴉——非致死、“ほどほど”


台下から印守が四人、腰に号笛。

路地の陰から合図鬼(何でも止まれに変える小鬼)がちょこまか、空から号鴉がカァ。

サジとカエナが屋根から滑り、藁布ふわり→痺れ粉を“薄く”。

「効きすぎはナシ」

リンクが梁上から二段、印守の継手へちょん、ちょん。

俺の扉縫合が印口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ。

印守は倒れず、座って縄籠へ。

合図鬼はチトセの綴じ戻し櫛で余白を与えられ、全部止まれが止まってよいか?に変わる。

号鴉はよっしーの沈黙箱(細)+斜光帆の切れ端でふわと包んで非致死捕縛/番茶済。

「……温いのは正義」

「節度や」よっしー。

ルフィが籠を覗き、「アタシがやっつけたって言ってよい?」

「非致死でほどほどに、ね」リナ。

ルフィは三色だんご二本で止め、三本目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日もほんとうにえらい)。



6)“印歌”——一括停止の節をほどく


第一印スタンプが印舌をちりと鳴らし、印歌を落とす。

「押せ・止まれ・従え——止が主」

歌に呼応して通りの印台がずらりと起き、人の手首や扉や荷車に停止影が勝手に貼り付こうとする。


あーさんが板を立て、短く。

声は橋。

合図は座。

「橋で合図、座に置く。歌は礼のあと」

リリアーナが耳鈴をB0.6でちり。

「五の鈴——返印」

俺は返印鍵を掌でとん、印口の角に点。

ブラックの羽衣が高域を熱へ、ニーヤの薄膜が喉に温。

カチ。

印歌の押しは湯気にほどけ、二拍+名+要件→合わせ→知らせる/待つ→置く→礼の座合が通りに広がる。

人々は自分の拍で笛と旗を選び、止まると進むを置き直した。



7)勇者(選ばれた側)の横顔——“スタンプ・ショー”“安全保証”“統一合図規格”“次は門”


白天幕の上、勇者レンは自動記録器に笑顔。

「“レン、スタンプ・ショーを演出! ワンタッチで街ぜんぶ一斉停止!”」

——印街は合図の街へ。映えは座に溶ける。


仮設窓口の勇者サリアは金の細紐を指に絡め、柔らかに囁く。

「安全保証契約に入れば、事故率はゼロ。印は遠隔自動更新、特典も——」

人々が返印棚に足印札を返し、合図合わせ台で道標笛札を選び始めると、紐は縁へ戻り、サリアは微笑みながら舌打ち。


見晴台の勇者シュウは規律眼鏡で印街を見下ろし、図面に赤×。

「非効率。統一合図規格で笛長・旗角度・停止秒を一本化」

図面の角にあーさんの一筆——秩序は座。

眼鏡は曇ったまま。


砂走りの狭間で勇者トウマは黒い栞を押さえ、短く記す。

「“印が座にされた……次は門だ”」

(——第一門ヒンジ、来る)



8)印蔵の奥——“最初の合図(のぼり旗・拍手二つ・灯り)”と古い名の借り


印台の裏、印蔵。

段棚にのぼり旗、拍子木、油皿、そして小さな「拍手二つの札」。

それぞれに人の最初の知らせが薄く刻まれている。

第一印スタンプの印舌が俺を指した。

「君の古い名を借りよう。万印の基準に」

——胸骨の裏でとん。イシュタム。

(貸さない。返すために置く)

あーさんの指が袖で二拍。とん・とん。


リリアーナが静かに合図。

「五鈴法・印版、四——口/五——返印。四鈴法・合図版、四——返合」

俺は返印鍵と返合鍵を拍子木の口の角に点、ブラックの羽衣、ニーヤの薄膜。

カチ、カチ。

封じられていた“押せば止まる”は押しを失い、置けば知らせ/二拍のあとへ戻る。

チトセが綴じ戻し櫛で逃げを作り、ツグリが縦抱えで梁を抱え直す。

ロウルの拍が座に落ち、合唱鍵がB0.6でちり。

印蔵の硬響が湯気に変わった。


第一印スタンプは印束の肩を少し下げ、一礼。

「退屈な印だ。だから行き交える」

余韻に薄れた。



9)落としどころ——印街は“合図の街”、印台は“礼の合図合わせ台”


セレスの声が低く速い。

「白を三口。市口・学童前・祠。印街→合図の街、中央印台→礼の合図合わせ台。返印鍵/返合鍵/合図合わせ台/返印棚/合見席を常設。非致死、ほどほど」


ツグリの帆柱が梁を抱え直し、よっしーが枡枕を角に置く。

俺は扉縫合で印口蝶番の角に点、ブラックの羽衣が最後のキンを熱へ、ニーヤの薄膜が喉を温め切る。

カチ、カチ、カチ。

印台は倒れず、“二拍→名→要件→合わせ→知らせる/待つ→置く→礼”の順で扱う合図合わせ台として座った。


バーグ兵士長はむくれながら番茶をすすり、ぼそり。

「ワイのモテ印、どこ押したらええ?」

「まず挨拶、つぎ合図、最後に礼」リナ。

バーグは素直に会釈札を胸に差し、三色だんごは二本で止めた(ルール順守)。



10)学園式の昼餉——“二拍→合わせ→いただきます”


「ほな、飯や」

よっしーの屋台が鯖サンドを配り、キャベツと豆のポトフをよそい、三色だんごを並べる。

「甘いもんは二本まで! 番茶はおかわり一回!」

「アタシここ一生いたい」

「出るために食べるのよ」あーさん。

ルフィは三本目に手を伸ばしかけてそっと戻した(今日も最後までほんとうにえらい)。


リリアーナが受け札を張り替える。

「印街→合図の街。印歌→座合。返印鍵/返合鍵常設、返口は常時一口」


ジギーは骨騎士に合図し、外縁に針入れを埋める。

「交差は旗、市場は笛と札、祠は灯。止めるためやなく行き交うための置きやで」



11)小稽古——“見る→合図→待つ→渡す→戻す”


白が三口、学園広場へ。

「今日の名」が順に呼ばれ、子ども達は胸骨二拍——とん・とん、

見て、合図し、待ち、渡し、戻す。

ロウルの拍が座り、合唱鍵がB0.6でちり。

チトセが旗を持って、刺さる言い方の角を落とす言い直しをゆっくり。

笑いが橋になった。


耳飾りがちり。

『王都学院評議より、印学/合図学の常設承認。返印鍵/返合鍵/合図合わせ台の規格化通過。

追記:北の門街に門務省の徴。第一門ヒンジ(門=通す/閉ざすの押し付け)の気配。門と蝶番に注意、五鈴法・門版(名/拍/門/口/返門)と四鈴法・蝶番版(名/拍/蝶口/返蝶)を準備』ミカエラ。

セレスが氷地図に門印を落とす。


よっしーがブルーシートを肩に担ぎ直す。

「毛布は正義、白も正義。湯屋は……」

「節度」全員。

「はい」



12)落し印の小騒動——“ほどほど”の実演


広場の端で、落し印(誰かの私印)がころり。

「ワイのモテ印どこいったんや!」バーグ。

「落し印札書いて、二拍や」よっしー。

バーグは渋々、胸骨の前でとん・とん。

「バーグ。まず名前、次に合図、押すのは最後」

合唱鍵がB0.6でちり。

印は屋台の幕からぴょいと顔を出す(※実際はゴブリン若者の気働き)。

バーグは礼にポトフをよそい、三色だんごは二本で止めた(今日もルール順守)。



13)外縁連絡——交差の旗・市場の笛・祠の灯


外縁でジギーが骨騎士の肩をとん。

「交差の旗は二拍のあと、市場の笛は混み具合を見て、祠の灯は夜半だけ。止めるんやなく、行き交うための座合を教えといた。

 ほな、次は門や」


郵便娘のコトハが道標笛札を二拍で掲げる。

「角で吹くと、道がひらく」

胸骨の内側が、静かにとんと鳴った。



14)終礼——黒板の二行


夕刻の終礼。

あーさんが黒板に三行+二十行を書き連ね、今日の二行を添えた。

名は輪郭。

輪郭は境界。

境界は——蝶番。

道筋は地図。

重みは枡。

車輪は縁。

橋は手。

流れは拍。

舟は器。

港は掌。

門は蝶番。

鍵は歌。

歌は合図。

広場は皿。

交差は合拍。

刃は道具。

鞘は布。

重さは値。

秤は器。

街は器。

恐れは影。

塔は柱。

声は橋。

鏡は面。

面は器。

箱は蔵。

蔵は座。

蓋は布。

印は紐。

紐は縁。

契は文。

文は座。

そして今日の二行。

印は合図。

合図は座。


子どもたちがB0.6でそれぞれの名を呼び、道具(返印鍵・返合鍵・旗留め楔・笛止め栓・角布・拭い布・沈黙箱・風幕・枡枕)を撫でる。

黒板の「今日の名」に新しい丸が増え、リナが丁寧に色を変えて丸を付けた。

ガンツは「合」の字を指でなぞり、木枡に番茶を注ぎながら笑う。

ルフィは三色だんごを二本で止め、三本目をそっと戻した(今日も最後までほんとにえらい)。



15)屋上の夜——次の扉、“門街、第一門ヒンジ——門は蝶番、蝶番は座”


星が近い。門街の門台で門歌が回り、入門札が人と道に通過許可を貼り付け、閉ざす権が一方に集まる気配。

クリフさんが弓弦をとんと鳴らす。

「門に押されると、矢名は風を選べなくなる」

セレスが氷地図に門印を重ねる。

「第一門ヒンジ。門=通す/閉ざすの押し付け。対処は——風幕で門歌を毛布に、舌凧で蝶番口に点、縦抱えで梁を抱える。

五鈴法・門版(名/拍/門/口/返門)と四鈴法・蝶番版(名/拍/蝶口/返蝶)の準備」


あーさんが板を抱え、静かに微笑む。

「講話は短く。

門は蝶番。

蝶番は座。

——明日の黒板に、きれいに書こう」


胸骨の前で二拍。

とん・とん。

静けさは扉。


稽古は続く。

開ける。置く。結ぶ。閉じる。そして、返す。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ